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【使ってみた】点字器

書いた。点字で、文字を。

※本稿は筆者の昔語りの物語を多分に含みます。


※打つというのは正しくない言い方がしたが、本稿に限り墨字にて文章を書くことと区別し、場合によっては点字でなんらかの文章を書くことを「打つ」と表現する。点字は日本語の50音などを示す点字のことをいう。

これまでの筆者と点字

そこまで、点字には詳しくなく、イベント的に関わってきた。

筆者が最初に点字と遭遇したのは小学3,4年生の頃、総合の授業だったと思う。どういった点字器で、どんな内容を打ったのか全く覚えていないが、何か打った。当時総合のノートは、厚紙になにがしか記載しそれを貼り付けていくことで学期末には厚紙の束のノートができるようなものだった。(その時は先生の言ったことを記録するというよりは何らか書く、あるいは己のアイデアをそこにまとめるような、ワークシートのような役割をしていたのではないか、記憶にないが)後年片付けをしているときに、取っておいていた、そのまっさらな点字のページを見つけ、筆者は次のように思った。「ここは読めないし、解読する手間がかかる、であれば他の墨字で思い出せる範囲の思い出で十分であるのでこのページは捨てかなぁ。」

点字の思い出といえば、もうひとつ。新幹線の中の点字案内板を穴のあくほど見つめたこと。
まだ筆者が携帯を持っていない頃、確かスキーの帰りに新幹線に乗ったらとても混んでいてデッキで立つことになった。(ふと思うに「デッキ」は人口に膾炙した単語であろうか。新幹線や特急の、ホームから電車へ乗り込むドアから、進んで曲がって、座る席の空間に入るドアまでの間の空間のことである。)何度かデッキで立ったことはあるが、筆者人生の中で数本の指に入る混雑でとにかく暇だった。偶然筆者の目の前に新幹線の中の空間を説明する点字の平面図があった。そこでトイレとか、電話とか、点字の形をじーっと見ていた。
前述の経験や、他に忘れている経験も含めて経て筆者の点字の認識は次のようなものである。

  • だいたいの50音は子音と母音の組み合わせ、ラ行あたりから独自路線。

  • 「い」と「う」は墨字と転置。すなわち、母音の「い」は墨字だと縦線が横並びで2本あるような感じ、「う」は墨字だと横線が上下にあるような感じであるが、点字はそれの転置?で、「い」は縦並び、「う」は横並びの2点で示す。

  • 「し」はなんかななめ。(たしか、筆者と縁の深い自治体に「し」が複数含まれているがゆえに、認知したような……)

  • 「め」は6点全部打つ!

  • 数符(数字を示すもの)がある。エレベータにある

なお(書く必要もないことであるが)、目の見えなさも個人差があり、視覚障害者全員が点字の読み書きをするわけではないことも、知っている。

視覚障害者と言っても、その「見えにくさ」の度合いはさまざまです。
「見えない」と言っても、明暗の区別がつく状態や目の前の手の動きが分かる状態などが含まれます。「見えにくい」という状態は、もっと複雑です。100人いれば、100人とも状態が違うと言っても過言ではありません。単純に視力が弱い(ぼやけている、コントラストが低下している等)だけでなく、見える範囲(視野)が狭い、視野の一部が欠けている、暗いところで見えにくい、まぶしい、視界がゆがんで見える、眼振(眼球振盪)や立体視が困難(両眼視がうまくできない)ことにより見えにくいなど、病気の種類や状況によってさまざまです。

https://www.jarvi.org/about_visually_impaired/(視覚障害リハビリテーション協会)

動機


さて、本題。
昨年12月の早い頃に、友人たちから、彼らの結婚式の招待状が届いた。

FTWと略されるらしい某テーマパーク公式?の、凸凹加工もされている素敵な招待状がきた。

ふと点字でも「おめでとう」と伝えたくなった。

招待元のふたりの友人の一方は全盲である。筆者は招待状を見たとき咄嗟に、「あいつは、(他方の)弱視の友人にすべての返事の集約をやらせようとしているんか?合意のもとなんだろうな?」と気になってしまった。同時に、数年の付き合いの中で垣間見させていただいた素敵なこのふたりの関係を鑑み、また筆者が尊敬している友人は、きっとちゃんといろいろと判断して送ってきたのだろうと思った。だから、この段落は余談である。

数日、点字を打つ道具をどう入手すべきか、Amazonや、代引での購入を悩んだ。
ただただ「おめでとう」を打ちたいだけである。コストパフォーマンスの点も含め購入を悩み、何度も点字図書館の用具、わくわくショップのページを開いた。
考えたというよりは時間を置いた結果、筆者の生活圏と点字図書館の距離は全然遠くないしと思い、購入するために点字図書館に行った。他に購入したものは前回の投稿を読んでもらえればと思う。

ワクワク用具ショップは、予約を、とあったのだがまぁ必要なものは点字器のみ、すぐ購入してすぐ退店できそうだし行ってみて予約オンリーなら帰ろうと思って予約せずに訪問してみた。他のお客さんで予約で来られてる方はわりと複数名いらっしゃった。気になる用具があり、相談しながら選びたい場合は予約がよさげである。

購入の際、お二人のショップの方と会話する機会を得た。
一人目の方には、点字の消しゴム「てんけし」、購入した、マスコットブレイルと小さな点字器の存在を教えていていただいた。
二人目の方に、筆者は「結婚式の招待状に、点字でも返したくて」、と言ってみた。その方が「ここは点字図書館ですから!書きたい内容を練習して、帰ったらいいですよ!」等と、点字で書く動機、書くことをなんだかすごく歓迎してくださった。ありがたいことだなぁ、と思った。
今にして思えば、その時に思う存分、長い文章や宛名の書き方、読みやすさと正しさにつながる点字特有のマスの空け方をもっと尋ねてもよさそうだったのだがうっかり失念してしまった。
以下のような文章を聞き打てばよかったのだが聞かなかった。
「〈友人ひとりめ&友人ふたりめの名前〉へ 慶んで出席します!結婚おめでとう! 〈筆者の名前〉より」
自分でちょろっとググっただけでは、連名あるいは、句点のあとのマスの要否がいまいち分からなかった。

その場ではおめでとう(おめでとーと打つ。)だけ練習してその方に確認させていただいて、購入して帰った。

大変なご厚意で、練習に使った透明なプラスチック系のシールになっている紙もいただいて帰った。

「おめでとー」のみでは味気ないな…とわずかにやる気を出した筆者は、その紙に独自にある程度打ち、それを贈ることにした。

(今調べたところ、その紙の名はタックペーパーかもしれない。サイズが点字器に合うサイズだったらしい。ぴったりサイズの可能性を思いつかず、筆者はタックペーパーをテキトーに点字器に突っ込んで打ち、そして打った文字のある部分を切り取ってハガキに貼った)

小型点字器(携帯用点字器?)は蝶番のようなもので板2枚が繋がり、間に紙が挟めるようになっている。1つ1つのマスに点筆でぽちぽちと打っていく。
たまに点字は2マスで1文字を示したりするので「マス」という単位があるのだなぁと思った。
思っていたよりも、上の板の各1マスの、6点の周りの水平方向の半円状のくぼみと、下の板の受け止める6箇所の鉛直方向の凹がしっかりしていた。1マスの6点のうちどの点に打つかはわかっていれば、どこに打つかは特に決めなくともこの点!と思えばその点に打てる。よい。
点筆(てんぴつ、打つ器具)で打つ。

ネットで自力で調べて打ったため、より間違えなさそうなものを選択し、打った文章が以下だ。(点字のルールにそっているはず。おめでとー以外は調べて書いただけなので注意)

「よろこんで いきます
おめでとー
〈筆者の名前〉」

以下に思いを記す

(招待状への点字メッセージ勝手に楽しみすぎ?思い込めすぎ?重くね?と我ながら思う)

「よろこんで」
招待状には出席/欠席の印字しかなくとも、一言二言を紙の余白に書き加えるのがマナーらしい。筆者は、理屈がわかりコストがそこまでかからないマナーには則るいきものなので、点字でも「よろこんで」は採用することにした。

「いきます」
墨字だと「出席(これは印刷済みの選択肢に丸をつける)させていただきます」と書くところ。「しゅっ」を点字で書ける気がせず、「出席」と「します」の間を1マスあけるのかあけないのか謎で、悩んで「行きます」を採用することにした。

「おめでとー」 
2文字目の「め」
いつか打ちたかった、読むことはできていた6点全部打つだけの点字を、ついに打った。
おめでとう、の濁音の「で」
既知の方が多いだろうが、濁音は点字では、濁点と濁る前の50音(清音)で濁音を示す。
※点字の世界では濁音用の点を濁点といわなそう、などという勝手なイメージを持っているが、簡単のため濁点と記述する。
目で見ると、濁点と清音は離れて打たれているように思っていた。いざ点字器で打つとなると、2列3行の6点の場所は既に決まっているのでほぼ2択であった。
筆者が、「濁音を示す点はどちらにつくんでしたっけ」と書きつつ話しかけたところ図書館の方が「字に近いほうですよ」とおっしゃった。なんか、すごくいいなと思った。「濁点はつけたい字に近いほうに書く。」覚えやすい、かわいい。

おめでとー、の最後の長音
『ありがとー封筒』(打ってあるもの)などが巷にはあるらしい。ありがとうの「う」が長音になるならば、おめでとうの「う」も長音だろうと推しはかった。図書館の方にそうですよーとおっしゃった(もはや手本を書いてくれた)。

点字で書いた物の写真。個人情報はモザイク済。

墨字のほう、間違えて句点をつけてしまった。撮り忘れていて、友人たちが撮って送ってくれた

シールはするどい角があると、角から剥がれそうだなと思い適当に角を丸く切って、右下に貼った。

なお自力で調べているなかで見た動画の一つが下のもの。わかりやすいとは思ったが、濁点とかがうーんと思った。でもこのように、文章を予め作成し、文章ひとまとまりとして点字に変えていくことが点訳なのか、効率が良い点訳なのかもしれないなと思った、単語の音ひとつ一つを頭から点字にしていくのではなく。


以下の動画も見た。 

宛名の打ち方、マスをあけるかどうか等を知りたくて「点字 手紙」などと検索していたらでてきた。
A4サイズの点字版、標準点字盤は、そんなに、「みなさんも書いてみませんか?」という柔らかな呼びかけでは買うものではないお値段と大きさなのですがという気持ちになった。
点字器の板と、紙の位置が決まっていれば、紙の両面に点字で書けるそうだ。両面に打つ考えがあまりなかったので勉強になった。点字のマスが決まってるのは、裏表で打てるようになのだろうか?と思ったりもした。

むすび

自分で点字を打ってみて、大学時代、筆者の友人の点訳された教科書が墨字のものと比べてすごい大量になっていたり、延々とプリンターから吐き出されていたりしたが、それはそうだなぁ(当然のことだなぁ)と思った。

なお、前回12月末にnoteに投稿したところ、招待元のふたりの友人がふたりともすぐさま反応してくれた。二人とも普段投稿とかいいねとかそんなしてないじゃん!

弱視の友人から、点字器という言い方はあまり使わず、てんじばん(漢字は不明、点字版?点字板?点字盤?)とよくいうことを教えてもらった。

思っていたよりも『点字器』への反応が良すぎて、彼らへサプライズにしようと思っていた自分は焦った。まず弱視の友人がXで言及してくれた。画像を貼ってしまったので、この友人で食い止めれば…!と思ったが、既に全盲の友人によってnoteのいいねが来ており、終わった。
まぁ、何かしらふたりに、喜んでもらえたと思いたい。

次の打つ内容、もしお勧めがあれば、どなたかお教えください。 

わが友人達よ、
結婚おめでとう!
筆者より

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