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《Q&A》その他の質問

《1》いつからコントラバスを弾いていますか?また、どうしてコントラバスを弾きたいと思ったのですか?

 《回答》コントラバスを始めたのは高校2年生からです。最初に通った高校を退学になって、「吹奏楽部に入る」という条件で転校した先が当時の吹奏楽名門校。学校に行ったら「これが余ってるから」と与えられたのがコントラバスでした。最初は嫌々でしたし、へ音記号も読めませんでしたが、練習して弾けるようになるにつれ楽しくなって音大受験を目指すようになりました。

《2》これまでどんな先生に教わりましたか?

 《回答》最初は高校の吹奏楽部で、先に楽器を始めていた同級生に基本を教わりました。この時期、ヴァイオリニストだった祖父・鷲見四郎にも自宅で練習方法などを教えて貰いながら、部活に外部講師としていらっしゃっていた景山貴之先生に月1度程度レッスンを受けました。
 高校3年になって音大を受験する事に決めてから大学を卒業するまでは永島義男先生に師事。大学在学中、ウィーンフィルのギュルトラー先生が何度か来日された際に、数回レッスンを受けました。
 大学を卒業してからはドイツ・ベルリンに留学し、元ベルリンフィル首席のツェパリッツ先生に毎週レッスンを受けました。
帰国後はNHK交響楽団の吉田秀先生にも何度かレッスンを受けて現在に至ります。    

《3》吹奏楽でコントラバスは聞こえないと言われますが、どう思いますか?

 《回答》何とも思いません。そもそも、吹奏楽ではコントラバスに音量を求めていないはずです。大きい低音が欲しいならテューバを増やせばよいのですから。コントラバスが吹奏楽に入っているのは「弦楽器特有の響き、倍音」を補強するためです。ですから、私は力を抜いて柔らかい音で弾く事を意識しています。
 また、吹奏楽で強奏時にコントラバスが聴こえないのは当たり前ですが、ちゃんと楽器を鳴らすことが出来ていれば、響きは客席に伝わります。特に、中低音楽器のピッチが揃っていて、コントラバスが正しい音程できちんと弦を振動させていれば、はっきりと存在感が現れます。一部の吹奏楽指導者や管楽器奏者で「コントラバスが聞こえない」という人は、管楽器の響きに慣れすぎて「弦楽器特有の響き」を聴き取れていないだけではないかと思います。実際私は吹奏楽コンクールを聴きに行って、「コントラバスが聴こえない」と思った事はほとんどありません。もちろん、バンド全体が強奏している時は別ですが。
 それから、客席に届かなくても、周囲の低音木管などには音が届いていますから、一つのピッチ、音程の基準となる事が出来ます。「聞こえているかどうか」という議論自体、意味がないですね。

《4》管弦楽と吹奏楽で奏法を変えていますか?

 《回答》使う技術は同じですが、考え方を多少変えている部分があります。例えばオーケストラでダイナミクスは強弱指定通り演奏しますが、吹奏楽ではほとんどがフォルテのつもりで演奏し、指揮者に「大きすぎる」と言われた時のみ小さくするよう心がけています。
 また、プロでも管楽器のピッチはどんどん高くなるので、例えば激しい曲の後半部分や、管楽器がバテてくる演奏会後半、それからホールが暑い時などは音程を高めに取るようにしていますし、コントラバスがよく聞こえる場面ではあえて低めに取ることで、管楽器にピッチが上がっていることを気づかせるようにもしています。どうしてもピッチが寄らなければ開放弦を使わないようにしたりもしています。ちなみに、プロのハープ奏者は吹奏楽で演奏する場合443Hzでチューニングする人が多いようです。
 管楽器が中心の吹奏楽で、視覚的にテンポを計ることが出来るのは打楽器のバチとコントラバスの弓だけですから、テンポが乱れがちな時は弓をより大きく使ったり身体のアクションで周囲にテンポを伝える役割もある、と思っています。「コントラバスとティンパニに耳を傾ける」というのはオーケストラでは常識ですが、吹奏楽ではなかなかコントラバスに注意してくれる奏者が少ないので、普段から会話の中で意識を向けさせるように努力もしています。
 テューバやティンパニと同じタイミングでピチカートをする事も多いので、そんな時は右手のアクションでタイミングを伝えるようにしています。これまた見てくれる事が前提になりますので、普段から信頼関係を築いておくと良いでしょう。

《5》ポップスの曲で、エレキベースではなくコントラバス指定なんですが、ピチカートで演奏するべきですか?

 《回答》特にピチカートの指定が無ければ弓で弾きましょう。但し、指揮者・先生からの指示があればピチカートに変更する、アンプを繋ぐ、エレキベースにするなどの変更はアリだと思います。それから吹奏楽のポップスアレンジなどの場合、編曲者がピチカートの指示を書き忘れている事も非常に多いので、違和感を感じたら指揮者や先生に相談しましょう。

《6》エレキベースとピックアップ、どのように使い分けていますか?

 《回答》基本的にはコンサートマスター、指揮者と話し合って決定します。練習の場所に作曲家や編曲者がいれば意見を伺うこともあります。コントラバスとエレキベースは同じように簡単に演奏出来る楽器だと勘違いしている人も多いので、きちんと説明してあげましょう。   

《7》大学進学にあたり、吹奏楽でコントラバスを続けるかオーケストラに入るか悩んでいます。吹奏楽出身者がオーケストラに入るのはやはりとても大変なものなのでしょうか。 

 《回答》吹奏楽と管弦楽では楽しさの種類が全く違います。曲の難易度が一気に上がり技術的についていくのが大変だとは思いますが、何より上達出来ますし、個人的には、コントラバスを弾くならオーケストラの楽しさは知っておいて欲しいですね。入ってから頑張れるかどうかはあなたがコントラバスをどれくらい好きかにかかっていると思います。

《8》今はどんな楽器を使われているのですか?

 《回答》1800年代のドイツのオールドを使っています。

《9》インターネットではいろんな奏法の情報があって、どれが良いのか分かりません  

 《回答》インターネットから正しい情報を得るのは非常に難しいです。そもそも感覚が大きな割合を占める音楽において、文字で楽器の技術を学ぶ事には限界があります。ネットの情報では、特に匿名のものについては信頼性を疑うべきだと思います。名前を出していない時点でその人は責任を負っていません。後は名前を出している人が普段どのような活動をしているかを見て、自分が信頼できる奏者・情報かどうかを見極めましょう。忘れてはならないのは「タダほど怖いものはない」という事です。

《10》顧問の先生が演奏会に行く事を許可してくれません。

 《回答》部活動で楽器を弾く以上、顧問の先生のいう事は絶対でしょうから、許可して貰えなかったら仕方ないですね。ただ、もし私なら、本当に行きたい演奏会があって、部活がそれほど大切ではない練習内容なら、仮病を使ってでも演奏会に行きます。会場で生の音を耳にして、演奏している姿を見る事はとてつもない刺激、財産になります。私はよく生徒たちに「10回の合奏より1回のコンサート」と言いますが、それほどコンサート会場に行くことは重要だと思います。
 生徒さんが勝手に先生を怖れて言い出せないケースもあるようですが、一度きちんと先生に話してみてはどうでしょうか。ちゃんとした先生なら、演奏会を優先してくれるでしょうし、許可出来ないとしても納得できる理由を説明してくれるはずです。

《11》プロはどれくらいの練習で本番に臨むのですか?

 《回答》単純にオーケストラの定期演奏会の為の練習であれば、だいたい1日4コマ(1コマ1時間)の練習を3日間、それに当日のゲネプロを経て本番に臨みます。協奏曲などはオーケストラだけの練習はほぼ無くて、リハーサル最終日にソリストと一度合わせたら終わりというケースがほとんど。曲目によっては練習1日、またはゲネプロのみという演奏会も最近はかなり多く、ベートーヴェンの第九などはほとんど1日練習ですね。
 ドラマやCMで流れる挿入曲を録音するスタジオレコーディングでは、現場に行くまで何の曲か知らず、着いたらとりあえず通してすぐに録音という事もあります。こうした少ない練習で本番に対応出来るよう、日常から練習の積み重ねは欠かせません。

《12》吹奏楽、管弦楽、室内楽、ソロどれが一番楽しいですか?

 《回答》演奏で目立つ事が嫌いで、人を支える事が好きなので、ソロ以外はどれも楽しいです 笑 言葉にするのは難しいですが、それぞれに楽しさの質が違いますね。でも、最近はソロの練習をすることも大切だとは思うようになりました。

《13》オケとブラスのどちらが好きですか?

 《回答》演奏するのはどちらも好きですが、普段聴くのは管弦楽作品ばかりです。どちらも楽しいですが楽しさの質がそれぞれ違いますね。

《14》吹奏楽部でコントラバスを担当しています。全国常連校のコントラバスの人を参考にしていますが、他にどのようなところの演奏を見れば良いですか?

 《回答》正直なところ、全国常連校といっても、一部を除いてコントラバスのレベルはどこも大して変わらないと思います。参考にするならプロの演奏にしましょう。せっかくコントラバスを担当するならオーケストラのコントラバスを見て欲しいです。
 ちなみに、東京佼成ウインドオーケストラの前田芳彰さんはもともとウィーンで勉強されたオーケストラプレイヤーですから、吹奏楽におけるコントラバスの在り方という意味ではかなり参考になると思いますよ。

《15》幼い頃はどんな音楽を聴いていましたか?また、最近はどのような音楽を聴きますか?

 《回答》幼い頃は自宅で祖父や両親がヴァイオリン、ピアノやホルンのレッスンをしていたので、自然とそれらは耳に入っていたと思います。小学生くらいから親戚の影響でビリー・ジョエルにハマり、洋楽をよく聴いていました。リチャード・マークス、ブライアン・アダムス、ポリス、フィル・コリンズなどですね。 最近は耳を休ませたいと思う事が多く、仕事以外で音楽はあまり聴かなくなりました。キャンプやBBQでもジャズを流すことが多いです。

《16》生まれ変わったらどの楽器を演奏したいですか?

 《回答》ピアノはきちんとやっておけば良かったと思っています。弾けたらカッコいいだろうなと思うのはチェロ。もし生まれ変わってメンタルが強かったらホルンも吹いてみたいですね。

《17》吹奏楽の世界で、変だと感じるところはありますか?

 《回答》たくさんあります。こちらの投稿をお読みください。

《18》なぜ「弦バス」と呼ばれるのを嫌がるのですか?

 《回答》嫌う人にはいろいろな理由があると思いますが、僕は単純に「言葉を略す」行為が生理的に受け付けないから、というのが一番多いです。「コントラバス」って略さねばならないほど長い言葉でしょうか。「ショスタコーヴィッチの交響曲第5番」を「ショス5」とか「タコ5」とか略すのも僕は大嫌いです。
 友人なんかは「吹奏楽部時代にコントラバスは非常に肩身の狭い立場にあったので、「弦バス」という響きそのものが狭い世界を呼び起こして嫌だという人もいました。最近では「ストベー」「弦べ」さらには「弦」と呼ぶ事もあるようですね。もちろんどう呼ぼうと自由ですが、多くのプロ奏者はその呼び方を嫌っているということ、それだけは知っておくと良いと思います。予備知識として、日本のオーケストラでヴァイオリン奏者に「弦バス」と言ったらほとんど通じません。
 こうした背景も知らず「吹奏楽独特の呼び方があっても良いじゃないか」と絡んでくる人もいますが、別に僕は「弦バスという呼び方を止めろ」とは一言も言っていません。略語が嫌いなだけです。最近は面倒くさくなって「弦バス」と言われても「はーい」と返事をするようになりました。
 ちなみにオーケストラの指揮者は「コントラバス」「ベース」「ダブルベース」と呼ぶ事が多いです。
 
《19》楽器にシールを貼るポジションマークについてどう思いますか?

 《回答》別に構わないと思います。ガムテープを貼ったり、鉛筆で指板に書くよりも楽器には優しいです。僕も貼っていますし、プロでも最近は貼っている人が多いのですが、これはあくまでも「何かあった時の目印」に過ぎず、実際の演奏中にはほとんど見ません。吹奏楽部の人はシールを貼ったら楽譜を見ないでシールばかり見てしまう人が多いので、これが非常に問題だと思います。楽譜や指揮者、そして他の楽器とのコンタクトなど見なければいえない場所はたくさんあるので、シールはあくまでも目安にしましょう。
 それから、シールを貼っても調弦が狂えばピッチは合いません。最後は耳を使う、という事を忘れないようにしたいですね。

《20》どんな奏者の演奏を聴けば良いですか?

 《回答》やはり世界でも活躍しているプレイヤーの演奏を聴いて欲しいです。最近はCDを出している人も多いですし、Youtubeで世界のコントラバス奏者の演奏も聴くことが出来ます。
 ただ、ソロを演奏している動画が多いので、コントラバス本来の響きを聴きたければオーケストラや室内楽の演奏を聴くのが良いと思います。シューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」やロッシーニの「チェロとコントラバスの為のデュオ」ではコントラバスも活躍するので、楽しく聴く事が出来ると思います。
 それから、最近はスマホやパソコンで音楽を聴く人が多いと思いますが、それらのスピ―カーでコントラバス本来の音は綺麗に拾ってくれません。せめて低音がよく響くスピーカーに繋ぎましょう。Bluetoothのハンディスピーカーでも安くて低音をしっかり拾ってくれる商品が増えています。
 もちろん、コントラバスの響きはライヴで聴くのが一番ですから、一番良いのはコンサート会場に行くことです。

《21》最近吹奏楽のコンサートに出ていらっしゃらないようですが?

 《回答》思うところあってここ最近オーケストラからの依頼を優先的に請けるようにシフトチェンジしたのは確かですが、日程が合えば吹奏楽も請けています。

《22》出演される演奏会はどこで知れば良いですか?

 《回答》忙しくてスケジュールを随時更新するところまで手が回らないのですが、主にTwitterでお知らせしています。リハーサルをやってみて、「これは良い演奏会になりそうだ」と思った時にツイートしている事が多いので、直前にはなってしまいますが、チェックしてみて下さい。

《23》次回の「中学生・高校生のためのコントラバス・ソロコンテスト」はいつですか?

 《回答》公式サイトにも掲載しておりますが、2021年3月の予定です。

《24》これまでに演奏の仕事で遅刻したことはありますか?
 
 《回答》若い頃に2回だけあります。今思い出しても背筋が寒くなる経験でした。

《25》多くのオーケストラの演奏会に出演していらっしゃいますが、どこのオーケストラが一番演奏しやすいですか?

 《回答》どこも特色があって楽しいです。コントラバスセクションもオーケストラによってタイミング、音色が変わるので、そこに溶け込むことを意識して楽しむようにしています。

《26》記憶に残る演奏会はありますか?

 《回答》出演した演奏会の記憶についてはいくつもあるんですが、パッと思いつくのは阪神淡路大震災のチャリティーコンサートの際に小澤征爾さん/特別選抜オーケストラで演奏したバッハのG線上のアリア、チョン・ミュンフンさんが初来日されてNHK交響楽団で演奏したチャイコフスキー/交響曲第4番、父と初めて同じステージに立った日本フィルのR・シュトラウス/英雄の生涯(確か広上淳一さんの指揮でした)、マエストロ・インバルが最終楽章で涙を流しながら指揮していた東京都交響楽団のマーラー/交響曲第9番、ミューザ川崎シンフォニーホールのリニューアル記念にスダーン/東京交響楽団で演奏したブルックナー/交響曲第9番、ジャン・フルネ/東京都交響楽団によるデュカス/交響曲、ヤクブ・フルシャ指揮/東京都交響楽団のスーク/アスラエル交響曲、ハーディング/新日本フィルでのショスタコーヴィチ/交響曲第10番、ラザレフ/日本フィルのショスタコーヴィチ/交響曲第11番といったところでしょうか。
 ちなみにこれらの演奏会が必ずしも特別に凄かったという訳ではありませんが、個人的な思い出があるコンサート、という事です。思い出したら追加します。

《27》一緒に演奏して「凄い!」と思った指揮者を教えてください。

 インバル、ジャン・フルネ、ラザレフ、ハーディング、チョン・ミュンフン、ヤクブ・フルシャ、広上淳一さん、といったところでしょうか。

《28》これまでに影響された言葉などはありますか?

 サッカーの指導者資格を取得した際に講習会で言われた「平凡な教師は言って聞かせる。良い教師は説明する。優秀な教師はやってみせる。しかし、最高の教師は子供の心に火をつける」 という言葉です。

《29》演奏と指導はどちらが楽しいですか?

 楽しさの種類が違うのでどちらも楽しいです。ただ、どちらが好きかと言われたら、今のところはまだ演奏する事のほうが好きかもしれません。

《30》演奏会前にはどのように過ごしますか?決めている事はありますか?

 
本番前はだいたい軽く食事をして、楽屋で仲間とサッカーゲームなんかを楽しんでいますね。30分前に衣装に着替えます。
 本番前のチューニングのためにステージに出るのは開演15分前。ここで少し練習してからチューニングをすると開演5分前くらいになるので、舞台袖に戻って集中を高めます。
 ステージに出る順番も考えています。というのも、舞台が小さかったり出演者が多くて舞台上に隙間が無いとコントラバスが邪魔になったりするので、そんな時は早く出て楽器を立てて他の出演者のために道を空けます。特に早く出る必要がない時は、出来るだけ最後の方に舞台に出るように心がけています。意味はありませんが。
 

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