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政治学・政治理論・政治哲学・政治思想

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2018年9月の記事一覧

『政治と複数性 民主的な公共性に向けて』/齋藤純一

主題…昨今の社会の分断や特定の個人に対する劣等者の刻印は、デモクラシーの前提を切り崩し、一部の人々を「見棄てられた境遇」に陥れている。見棄てられた境遇にある人々の声を聴き取り、「複数性」に基づいた政治を確立されなければならない。民主的な公共性を復権するための理論を模索する。

1章では政治における「複数性」の観点から「ラディカル・デモクラシー」の概念について論じられている。
第一に「ラデ

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『デモクラシー』/千葉眞

主題…「デモクラシー」は政治における理念の一つとして尊重されている。しかしその「デモクラシー」のあり方は画一的なものではなく、時代の要請に応えながら変容を遂げてきた。現代においては更なる変容の傾向が確認されている。「デモクラシー」を徹底し、深化させるためにはいかなる視点が重要なのか考察する。

第1部では古代ギリシャのデモクラシーと西欧近代のデモクラシーの相違や特徴について取り上げられている。

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『人間の条件』/ハンナ・アレント(志水速雄訳)

主題…アレントによれば人間は「労働」「仕事」「活動」により条件づけられている。アレントはこの3つのうち「活動」こそが人間を人間たらしめると考えたが、近代以降、「活動」は軽視され「労働」の価値が追求されてきた。人間の「複数性」に目を向け、その「現れ」を問う。

1章では人間を条件づける3つの行動について、その歴史上での解釈などが論じられている。
人間はさまざまな条件によって規定されている。アレ

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『ハンナ・アレント』/川崎修

主題…20世紀を代表する政治哲学者ハンナ・アレント。彼女は「全体主義」という20世紀の破局的事態に正面から向き合い、それを記述した。「全体主義」を過去の事象と見做さない彼女の視点は、現代においてもまったく色あせていないことが分かる。著作や背景、政治に対する姿勢などから彼女の思想を読み解く。

プロローグでは、ハンナ・アレントの生涯、思想史上の位置付け、他の思想家との影響関係などの説明がなされて

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『ミシェル・フーコー 近代を裏から読む』 /重田園江

主題…「近代」における権力の本質を暴いたミシェル・フーコー。フーコーは「監獄」「規律権力」「知」などあらゆる概念を用いて、社会で当たり前と思われている価値の全く異なる姿を露わにしてきた。現代においても色褪せないフーコーの思想にアプローチする。

1章では残酷な身体刑の場面から始まる『監獄の誕生』に触れ、フーコーの哲学実践のスタイルについて説明されている。
重田氏によれば、フーコーの著作は、社

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『変貌する民主主義』/森政稔

主題…「民主主義」は理想的な政治体制の代表とされてきた。「民主主義」は画一的な理念として尊重されてきたわけではなく、社会の変動に伴い、異なる意味付けがなされてきた。とりわけ「現代」における「民主主義」は、私たちを取り囲む社会と直結した関係にある。「民主主義」が社会の諸事実とどのように関係し、変貌を遂げてきたか、検討を深める。

序章では、本書の軸となる「現代」の捉え方について論じられている。森

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