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誘戯❻

家に帰れば妻より娘が先に飛びついてくる。中学生で反抗期らしい反抗期もなく懐いてくれる娘を愛さずにはいられない。妻にも感謝してる。お互い好きで結婚したとはいえ籍を入れる前に子供ができてしったおかげで、普通の若者が楽しむ20代を俺が奪ってしまった罪悪感が残るから頭が上がらない。どうにかして金銭的な余裕を作ってあげたい。そんな焦りが今の俺を突き動かしてるのは確かだ。

二日目の盗聴の成果は無く、三日目の最終日に興味深い報告があった。あの不倫部屋に旦那がどこだかで騙されて買ってきた壺があるとの話だ。ただ、この手の物は売り先に困る。だが、もう一つタンス預金が200万程その部屋にある話も聞こえたらしい。やるならそこからだ。ちなみにこの200万は今回の塗装には使われない。島村邸も林邸もローンを組ませたからだ。島村和樹の不倫を先に攻めると盗聴器の存在がバレる。手順としては施工後にこの200万を頂き、その2ヶ月後あたりにでも島村を攻める。この手順がベスト。そして高望みはしないようにしたい。全ては「うまくいけば」の話だからだ。

島村邸の外壁はベージュで屋根は濃いオレンジに近いベージュ。林邸の外壁は白と濃紺のツートンで陸屋根に防水施工。ほぼ同時に終わった。うちの会社は施工後にも担当した営業が挨拶に伺う。が、島村の家は俺が行かなければ美沙が満足しない。林の家には大江を行かせた。俺には大事な仕事がある。そう、大江に手は汚させないと言ったうえに、大江に任せるとチョロまかす疑いが残るからだ。200万は俺が直接盗る…。大江がリビングで奥さんと話してる間に、網戸だけの寝室へ行く。音をたてず簡単に開いた。靴を脱ぎタンスを一つずつ確認するが見つからない。この間3分程使ってしまった。焦る必要は無くても焦ってしまう。クローゼットを開けてみた。プラスチックの三段ケースがあり、旦那の下着などが入っていた。安堵した。俺が金を隠すなら、泥棒が触りたくない男の下着だからだ。あった。分厚い封筒が2つ。中身を確認しなかったのは感触で十分分かったからだ。その奥にバイアグラが転がっていたが、それまで取ってしまうのは寝取られ亭主に申し訳ない。

用が済んだらさっさと退散だ。離れた所まで歩き、そろそろ盗聴器を回収して出るよう大江に電話を入れた。大江の今回の成功報酬は10万。大江は文句一つ言わなかった。36万も臨時収入が入ったのならまず文句は無いだろう。あったとしても、島村のゆすりがまだだ。今、文句を言って、その分を貰えなくなるのは得策じゃないと思っているのかもしれない。俺にもこれで会社から20万のボーナスと、大江の報酬等を差し引いた164万の大金が転がりこんできた。確かに嬉しかった。罪悪感が不思議と無かった…。

ただ、成功したから良いものの、やり方としては反省もあった。奥さんに見つかる危険を回避する策を取っていなかった事だ。テレホンセックスのボイスレコーダーを大江に持たせておいて、リビングやキッチン以外の所に行きそうになったらレイプとまでは言わないが、強引に抱けと指示しておくべきだった。この奥さん、あっちの方は嫌いでないはずだし、万が一抵抗すればボイスレコーダーで脅せばいい。それでも抵抗されれば大江は職を失うし、最悪捕まる可能性もある。そして島村和樹をゆするネタが無くなる。が、大江は女日照りだ。俺の期待は裏切らなかったろう。

それから2ヶ月間間を置いた。その間、俺と大江は二人で行動し、車での移動の中は大江には盗聴電波を拾わせた。盗聴の経験値を積ませる事が目的で大江には本業よりこっちが向いていたからだ。休みの日には美沙を抱く事も忘れなかった。美沙のセックスは段々濃くなっていき、喘ぎ声も初めてした時の倍以上大きくなっていた。俺の竿を自分の乳首に擦り付けるのがお気に入りで、まぁ俺も嫌いではないとはいえ、それだけで15分も遊ばれた事があった。美沙は上客だ。それくらいなら喜んでご奉仕だ。ただ問題もある。少しずつ美沙を好きになってしまってる事だ。10歳近くも離れてるのに…。美沙は気立てが良い。嫁とはそこが決定的に違っているからだろう。肌のくすみは感じるが、声が若いのが救いだ。

脅し方は簡単だった。公衆電話から島村邸に電話をかけ、何も言わず音源を聞かせるだけだ。毎日1時間おきに…。そして美沙が耐えかねて別れたいと言えば和樹はどう出るかだ…。だが、和樹の条件が太っ腹過ぎた事が誤算となった。金は預金500万のうち250万とローンが残ってる家を今後も和樹が払い続けるという条件で美沙に譲るというものだった。普通なら全部売るとこだろう。別れた男と繋がってる気がして普通の女なら断ると思っていたし、不倫相手がそばに住んでいるなら尚の事だ。それが美沙は違った。理由を問えば「林の家は直接ここから見えるわけではないし、普段あそこは通らない。家を俺の会社が塗り替えたばかりで嬉しいから」と言ってきた。俺は騙せない。まずたったの250万なら俺に謝礼を払うにしても50万が限度だろう。そして、家を売って金にするよりこのまま住み続けるために残す方が、俺に金を渡す必要も無く得策だからだ。でも、美沙から全てを奪う気にはなれなかった…。情のせいではない。取るにしても限度がある。馬鹿な夢を見て調子に乗ると、逆にこちらが痛い目に遭いかねない。50万で手を打つことにした。大江には悪いが大江の取り分も2万5000円では申し訳ない。10%にして5万を渡した。

林の家に空き巣が入った事は小さな町のニュースにはなったが、ギャンブルで負けた旦那の自作自演ではないかとの噂で警察もまともに相手にはしなかったそうだ…。

☆フィクションです。

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