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早紀14

翌日…。2人揃って仕事へ向かう。歩きながら詩月が家賃を入れるなどと言ってきたがそこは遠慮した。元から家賃を取るつもりは無かったし、食費と称してお釣りが出る程の結構な額を入れてくれるだけで十分だったからだ。

今日は私もカジノがしたくなった。スロットはやらない。詩月に触発されてやりたくなるかもしれなかったが、あの倍率を見るとどんな倍率が来ようが色あせるし、焼けた状態から始まりかねない。今日は大好きなソラが配信してるクラップスでもやってみるか…。

帰宅すると詩月が真っ青になっていた。風邪ではなさそうだ。「やられた!」私の顔を見るなり開口一番そう叫んだ。「カジノが下ろすの渋ってるの?」と返したが返事は意外なものだった。「お金が無い!」織田裕二じゃないんだからと思いながら詩月のPCを覗き見る。カジノにもエコペイズにも無い。勿論エコペイズの入出金履歴にもそれらしいものは無かった。「誰かに抜かれたね」と非情な言葉を吐きながら早紀の事が頭をよぎる…。「お姉ちゃん、私のパスワード知ってたんだ…」詩月は少し緩いところがあり、まぁそこに詩月らしい魅力があるとはいえ、パスワードまですぐに推察されるようなものだったとは…。

あの時の早紀のうたた寝は…。やはり私の予感は正しかった。あれは確実に起きていて寝耳を立てていた。いきなり早紀に電話をする勇気が無い。事が事なだけに了とマダラに連絡する。

マダラは実際に早紀を目の当たりにしてないだけに、了と比べて反応が軽い。了は及び腰だ。この前連れて行った時、いざという時使えない事は分かっていた。その点、マダラなら体も大きく早紀が暴力に走った時には簡単に抑えてくれそうだ。3人で早紀と対峙する事に決めた。場所は早紀の勤める職場のロビー。詩月のアパートだと何をするか分からないうえに、話にもならない可能性があるからだ。その点職場のロビーなら早紀もこちらに変に騒がれると困るだろう。

マダラの車で銀座へ向かう。銀座を走るにはある意味ファミリーカーは目立つ。少し恥ずかしい…。マダラはいい女を2人も乗せて鼻歌混じりだ。私達は俯き加減…。マダラは早紀を勘違いしている。頭がキレる上にぶっ飛んでる。そして早紀の美貌の前では誰もが平伏したくなる程だ。強敵だ。どういう切り口で攻めるか準備はしてきたが、取り戻すまでいける自信は皆無だった。

早紀の会社のロビーに入り受付嬢にコンタクトをお願いする。約束など無い。早紀には30分前に今から行く事をLINEで通知してあり、あとは受付に詩月の免許証を見せて親族だと証明させ、急用だと言えばそれで問題ない。早紀でなければ履けないであろう真っ赤なハイヒールでカツカツと音をたてながら出てきたその姿にマダラの開いた口が閉まらない…。私も脚が震えている。早紀が放つオーラだ。目の前に来るまでに抑えられそうにない。そんな中、詩月が大声で「お姉ちゃん!」と叫ぶものだからロビーに居合わせた人達の視線は詩月と早紀に集中した。早紀が一瞬嫌な顔をした。詩月が駆け寄り「全部返せとは言わない!20000ドルはお姉ちゃんにあげる!残りの18000ドルは返して!」と詰め寄る。さらに畳みかける。「この前の怪我、あれ診断書取ってあるんだよ。その上私から盗んだお金、身内といえどそれは許せない。あのお金はあの人から借りてるお金なの。お姉ちゃんに取り立てが行く事になるよ!」とマダラを指差す。全て私のシナリオ通りの台詞だ。マダラには説明してなかった。マダラはただ薄ら笑いを浮かべてるだけでいい。

早紀は拳を握りながら動けないでいた。私が一言「で、どうする?まだ騒がれたい?」と声をかけるだけでよかった。「わかったわよ。今、詩月のエコペイズに振り込むわ」と言うとスマホを取り出し詩月のエコペに18000ドル送金した。これで解決かと思いホッとしたのも束の間、早紀が面白い事を口にした。「美樹さん、了さんと詩月の3人で私のとこに遊びに来て。私がお詫びの印におもてなしするから」図々しい。詩月から奪った部屋に遊びに来いとは…。

私達は静かにその場を後にした。詩月は車の中で私の肩に寄り添い寝てしまった。マダラが後ろの私達をバックミラーで覗きこむ「その日は俺も行かせてもらうぞ」私は拒否しなかった。

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