見出し画像

誘戯11

あれから妻とは円満だ。他の男に犯される事で円満になる夫婦も珍しい。その事で俺が不快になる事は無く、あれ以来妻は生き生きしている様にさえ見える。娘もいつもの娘に戻ったが、どうやら悪い虫がついたらしい…。その事で俺のイライラが治らない。大江に愚痴るくらいしか治め所が無かった。「今の若い子はゴムも無しにやっちゃいますからねー。どうします?『できちゃった!私、産みたい!』なんて言われたら」縁起でもない事を言いやがる。頭をパコーンと引っ叩く。「兄貴、大人が子供とやると捕まって、子供同士だと捕まらないってどう思いますか?おかしくないですか?」確かにそうだが、お互いに恋愛感情があったら違法ではないらしい。だが、ガキの恋愛などすぐ終わる。娘を使って相手の親から大きな金を巻き上げる事もいわゆる「とんち」を利かせれば出来なくもないが、それが原因となって娘がいじめの対象にでもなったら大変だ。

だが…これが他人の娘ならどうだろう…。脅しの材料はいくらでもあるのではないだろうか…。娘の事を大江に相談するのも悪くはなかった。それには一回ぽっきりしか使わない架空口座が必要だ。美沙と妻に一働きしてもらう。それぞれ5つの口座を用意させた。一つ15万で買い取る。150万の出費で俺はオケラだ。だがそれでいい。今、11個の架空口座を持っている。11人の親からそれぞれ50万ずつ脅し取る。予定では最低550万の売り上げになり、大江には100万流すつもりだ。差し引いて300万の利益なら文句は無い。少し時間はかかるが予定成功率は甘く見積もって100%だ。

休日、妻には「大江と釣り堀にいく」が副業に行くの隠語となった。娘は魚を持ち帰らない俺を不審に思っているようだが、妻が俺に対してあまりにも明るいので浮気を疑い騒ぎたてる事はなかった。遠出して三茶へ向かう。そこから大江とは二手に分かれてそれぞれ別のラブホに向かう。制服で入る女子高生はなかなかいないが、身なりでおおよその見当はついた。出てきた所を激写し家まで尾行する。世田谷辺りに行き着く事を期待した。後日「盗聴電波が出ているようなんですが」と上がり込み、盗聴器を仕掛け退散すれば成功。最悪これは仕掛けれなくても構わない。そして親の職場に写真入りの封筒を届けて取り引き開始だ。50万にするか、100万にするかは相手を見て決める。警察に届けてるとも限らない。引き出す時は同じくホームレスを使うか、適当に東南アジア系外国人を金で雇い「受け子」をさせた。

遠い昔、ブルセラショップなるものが都内だけで100店舗以上あったそうだ。絶滅した理由は未成年の裏ビデオ販売までしていたからだ。そのブルセラ全盛期には有名女子高の制服が10万前後で取り引きされていた。つまり、そういうお嬢様でも色に染まると言う事だ…。

今回は我が子を思う親心と世間体を気にする気持ちにつけこみ850万もの大金が入った。100万が7件、50万が3件。もう1件とも思ったが架空口座を1つくらいは残しておきたく10件で済ませた。実を言うと俺も大江も女子高生と思っていたのが、普通の一人暮らしの女子大生やOLだったというケースが多くなかなか捗らなかったし、脅しに屈しない親も何人かいて時間のかかる仕事だったが、受け子にそれぞれ10万、大江に150万を手渡してもかなりの額が手元に残った。今回は全く罪悪感無し。この事で女子高生達を更生させたのだから、感謝されたいくらいだ。

冬がもうすぐ終わる頃、会社の業績が傾き出した。激安塗装のチラシが毎日のように出された。うちで150万を他社が100万でやるなら塗料の質など客にとってどうでもいいのだろう。それに電話営業かける会社とチラシを出す会社とでは信用がまるで違う。この会社も潮時だ…。支店長の坂本が支店閉鎖及び解雇を言い渡してきた。高野はこの仕事を生き甲斐にしてきた男だ。肩を落として落ち込んでいる。他の社員もそうだ。平気な顔しているのは俺と大江くらいだった。俺は元々この仕事は辞めたいと思っていた。手元に金もしこたまある。大型の免許でも取ろうと思う。大江にも手元にある金で先の事を考えるよう諭した。「俺、一生兄貴について行きます!」正直嬉しかったが「社内でヤクザみたいな事言うんじゃねぇ!」と突き放す勢いで一喝した。それでも常に俺の側を離れようとしない。やっぱりこいつは俺の弟だ…。

翌日、事務所の整理をし、大江を連れて美沙の家へ向かった。今後の話し合いをする必要があった。俺はできる事なら家族と平穏な生活に戻りたいとも思っていた。が…状況が少し変わってきた。妻が美沙の妹分になっていやがる…。俺を取り巻く環境がこの半年で急激に変化した。解散を宣言すべきか続行か…。既に俺だけでは決められないところまできているようだ…。

☆フィクションです。

ブルセラ懐かしいですよねー。トゥナイト2で観ていた世代です…。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?