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誘戯➓

娘の口から妻にはもうバレていた。「最近会社の人と飲みに行く事多いのね…」「ゴメン。居酒屋で済ます事もあるけど、社長絡むとキャバクラになっちゃうんだ」うちの妻は必ず裏を取る。危ない…。明日、高野や支店長には口裏合わせをお願いしよう。

翌日、職場に着くと高野がいつものニコニコ顔で俺に話しかけてきた。「佐々岡ちゃーん、さっき奥さんから電話きてね、いつも何時頃帰ってるか聞かれたからタイムカード見て教えてあげたけど、まずかったかなぁ?一人で帰ってるかも聞かれてさぁ」と俺の肩を揉みながら言ってきた。裏を取るのが早すぎる…。完敗だった。だからといって美沙と別れるわけにもいかない。大江との付き合いも切るつもりはない…。その日は仕事が終わって自宅に直行した。妻には美沙との身体の関係以外の全てを打ち明けた。別れるなら別れるで構わない。そのうちきっと俺はとんでもない事件に巻き込まれる。妻は綺麗な女だ。娘も妻に似て良い女になるだろう。別れても新しい男なんかすぐに見つかる。俺とは今のうちに無関係になっておいた方が幸せだろう。

だが反応は俺の期待を大きく裏切った…。「私にも出来る?」妻をこんな事に巻き込む気はしない。妻としては若い時に遊ばず、毎日蕎麦屋で働き、家に帰れば夫にべったりな娘…。つまらない人生で何か刺激が欲しいのだろう。きっとそうだ。瞬時にそれを悟り「旅行でも行こうか?海外旅行にでも!」刺激が欲しいなら、ナイアガラの滝やグランドキャニオンでも観に行こうと誘った。「違う!そうじゃないの!私もテレビであなたがしてきたような場面よく観てた。あんな刺激が欲しいのよ!」まさかこんな言葉が出てくるとは思わなかった。

これで妻の気が晴れるならそれで構わないが、妻を共犯にして別れれば各方面にチクられる事も無い。一回だけならと思い後日美沙に相談した。

美沙は洗いざらい話してしまった事に呆れていたが、離婚には言葉を濁した。俺の事を好いてるからこその葛藤なのだろう。別れてくれれば美沙と俺が一緒になる目も出てくる反面、俺の幸せを考え妻とやり直してもらいたい気持ちもあるようだった。「一回だけだよ」渋々OKを貰い美沙と妻をひきあわせた。「女がてらに相棒をしてもらってる島村美沙さん」妻は深々と頭を下げて挨拶した。まさか、10歳近くも上の美沙と寝ているとは夢にも思っていないだろう。蕎麦屋は5日程休ませ美沙のフォローをするよう指示した。美沙は八王子を攻めたいと言っている。ついでに高尾山を一緒に登りましょうと和気あいあいなご様子だ。女同士気が合うのだろうか。できれば登山だけで済ませて欲しかった…。

下見も二人で済ませて、いよいよ決行日。妻がどうしても犯され役をと懇願したようだ。それは俺も反対ではない。実際にやってみてどれだけ怖いものかを実感してもらうためだ。もし、どうしてもというトラブルが発生した時のみ美沙に突入してもらうことにした。美沙が事務所の声に集中する。「私、万引きなんかしてません。お願いです。信じて下さい…」台本通り…。「何でもしますから!」上着を脱いでる所だろう…。そこからが計算外だったようだ。外まで響くかのような大絶叫!もちろんアヘ声の大絶叫だ。これでは脅しもへちまも無くなる。店長が腰を振るのを止めてしまうかに思えた。ところがこの店長、まぁ当たり前と言っちゃ当たり前だが、妻の口を手で押さえて事を続けた。出てきた妻は恍惚とした表情でもっとやりたいと言い出す始末。妻とは5年以上してなかったから当然と言えば当然だった…。

2人から報告を受けた俺は頭を抱えた。嫌になって辞めると言い出すと思っていたからだ。実際、美沙からよく聞く話、そういう状況下での男の食いつきは半端な勢いではないらしい。忘れていた…。妻は真性マゾだった…。

「あなた、お願いだからもう一件やらせて!」きたきた…。美沙が見かねて説得する。「奥さん、毎回成功するわけじゃないの。私も上手くいかなくて『奥さん、そんな事して許してもらおうとしてもダメですよ』って言われて恥ずかしい思いを何度もしてるの」ウソつけ…。百発百中の成功率だろうが…。「お願い!もう一回だけだから!」仕方なく聞いてやる事にした。勿論あの声のボリュームは注意した。そして2度目も当たり前に成功した。こうなるともう止まらない…。と言うより止められなかった。しばらくして、妻と美沙は高尾山に出かけた。まるで姉妹のようだ…。この年で新しい友達ができる事がお互い余程嬉しかったのだろう。俺もどことなく嬉しく思えた。

☆フィクションです

高尾山、今年こそは登ってみようかな…。


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