ある考古学者の顛末

本当に最後というので見届けてきた。それも2回も。
感想としては…色々突っ込みどころはあるものの、ギリギリ「インディ・ジョーンズ」ではあったかな、というところ。
ただ、わりとギリギリ。

まずは公式で熟知せよ。…余計な情報が多すぎる!

■あらすじ

1945年。我らがインディアナ・ジョーンズは仲間とともに、ナチスの手から聖槍ロンギヌスを奪取するために装甲列車に忍び込む。しかしそこにあったのは真っ赤な偽物。その代わり、同じ装甲列車に積み込まれていた「アンティキティラ島の機械」は本物だ…という情報をナチの科学者が喚いていたのを聞きつけたので強奪した。そうこうしているうちに米軍の爆撃が開始され、インディとお仲間の学者は線路下の川に飛び込むことで難を逃れたのだった。
時は流れて1969年。アポロ11号が月に行って帰ってきた頃合い。インディは息子を戦争で亡くし、さらには奥さんと離婚して一人暮らし。勤めていた大学を退職し、さあどうするかというところで出会ったのがかつてのアンティキティラを巡る冒険で一緒だった学者…の娘ヘレナ。アンティキティラについて熱意たっぷりに尋ねてくるので、インディはアンティキティラの保管場所…かつての勤務場所の大学に案内する。しかしその頃、アンティキティラの手がかりを求めてヘレナを追っていたナチの残党もまた、大学に侵入してくるのだった!ヘレナはどさくさに紛れてアンティキティラをかすめ取り逃げ出す。それを追うインディとナチ残党。三つ巴のチェイスが始まった…!


■ここが良い

・すくなくとも「インディ・ジョーンズ」ではある

最低限インディジョーンズ・シリーズの末席に連なるだけの要素はある。
・世界を股にかけた大冒険!今回はアメリカ→モロッコ→ギリシャ!
・大学で教えてたことが実はものすごい伏線になってた!
・悪の組織とのお宝の奪い合い!今回はナチの残党だ!
・宝のありかは例によってダンジョンだ!(虫が)ポロリもあるよ!
・クライマックスで垣間見える、常識を超えた驚異との邂逅!今回は時空を超える!

・クライマックスは個人的に良し

インディの辿った結末に賛否あるとは思う。
インディと仲間たちは冒険の末、時空の裂け目を通り(通らされ)、シラクサ防衛戦の只中に乱入するわけだが…そこで彼自身実在を疑っていた、アルキメデスの発明の数々(ソーラレイもどきとか、船をぶち壊す大クレーンとか)を目の当たりにする。さらにはアルキメデスその人と邂逅するにいたり、時空の裂け目が閉じる寸前になっても「私はここに残る」と言い張る…。そりゃそうだ。現代に帰っても、息子は戦争(まあベトナム戦争だろう)で死に、奥さんの悲しみをどうすることもできず離婚するしかなく、そして職業はない。しかして、たどり着いた古代ギリシャには知りたかった全てがある、となれば…。とはいえ、是が非でも現代に帰りたいヘレナにパンチされて無理やり連れ戻されるんだけど。
映画のストーリーとしては、このあと目覚めたインディは連れ戻してくれたヘレナや、かつての仲間サラー、そして別れたはずの奥さんと再開することで、現代にもまだ残る価値はある、と悟るわけだが。
実際、インディが残るエンドも、残らないエンドもどちらでもアリだとは思う。
「インディアナ・ジョーンズはとうとう過去にたどり着き、歴史の真実をこの目で見ることができたのです」みたいなナレーションとともに、紀元前200年頃のヨーロッパの様々な場所で活躍する、現代風の帽子にムチを持った男の画像が映し出されるとか。…ただしそうするとヤング・インディジョーンズの老インディが語るパートに繋がらないんだけど。

■ここが微妙

・チェイスが長すぎ

列車の上チェイス、カーチェイスがとにかく長い!なのでちょっとこの辺りでダレる!3D上映してるわけでもなし、だいぶ冗長だった気がする。

・ヒロインがあまり魅力的ではない

今回のヒロイン、ヘレナの行動がブレブレすぎ。ストーリー開始前の時点でわりと悪女なうえ、前半部分ではアンティキティラを明白に売り払おうとする金の権化っぷりを見せている。そうかと思えばインディとチームを組んだあたりではお父さんの研究メモを暗記していたエピソードを話すなどアンティキティラに対する熱意を急に出してきたりしている。…正直、最後の最後で裏切ってナチに協力するか、さもなくば第三勢力になったあげくにアンティキティラの機能を悪用して、結果として最後の聖戦のヒロインよろしくどこかから落ちて死んで因果応報、とばかり思ってたよ?

・謎のCIA職員がわりとノイズ

序盤に出てくる、ヘレナを監視する&ナチとの連絡役してるCIAの黒人ねえちゃんがすごい違和感。いや人種差別云々ではなく…。よくよく考えたら、1969年当時、アメリカは公民権運動の真っ只中のはず。女性や黒人が米国内の社会的地位を本格的に獲得する、その過渡期のはずで、そんな時期に、「黒人の」「女性の」CIA捜査官というのが存在し得たのだろうか?(いや、普通に存在していましたよ?というのであればこれは当方の勉強不足なのだけど)違和感バリバリだったので、90年代以降からそれこそアンティキティラの力でタイムトラベルしてきた未来人かとおもってたのだけど、実際には大したこともせずにナチに射殺されてしまうわけで…。むしろ、ストーリーにほぼ絡ませないことで「ほら、黒人の女性を出しましたよ、ポリコレ的にはオールオッケーですね?」という強烈な皮肉なのかと感じてしまった。

エンドクレジットが…

その。ジョン・ウィリアムズの音楽の仕事には基本的に文句はないんだけど、一点だけ。…なぜエンドクレジットの最後のシメをなんだか物悲しく終わらせるのか…?シリーズ全体のシメでもあるし、そこはレイダース・マーチをもう一度流してキメるべきではなかったのか!?

■総評

シリーズのシメとしてはこんなものではないかなと…。とはいえ最後の聖戦はちょっと超えられていない感。
インディの人生に対する述懐(学生が考古学の授業に興味を持ってくれないとか、昔はこんな冒険したのにもう体が動かないとか)や、インディを空港から送り出すときのサラーのセリフ「砂漠が恋しい。若い頃は、次はどんな冒険に出るのだろうと毎日胸踊らせていた(意訳)」が、80年代頃のハリウッド映画たち(インディジョーンズに限らず。それこそスター・ウォーズとか)の嘆きのようにも聞こえてならない。
この映画、ある意味インディジョーンズ・シリーズや、ハリウッド黄金期の映画への鎮魂歌なのかもしれない。



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