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115/365 【流れに抗わない】 例えばキンギョハナダイのように

キンギョハナダイが好きだ。

まず、名前が可愛い。名前からまずその姿形を想像してみてほしい。

体長10センチくらい。茜色の体をしている。少し紫味を帯びていることもあれば、細ーく黄色い線が入っている子もいる。尾びれや背びれといった身体の先端は、藍色が混じった濃い色をしている。または、指先の傷に血が凝固した色。

群れを成していることが殆どで、一人ぼっちで泳いでいることは稀だ。

浅瀬でキンギョハナダイの群れに遭遇した場合、群れの少し下に位置どって見上げる。空の上の空から差し込む太陽の光を浴びて、群れがキラキラと輝く。

それが、桜吹雪のようなのだ。

ある時、伊豆の大瀬崎というダイビングポイントに行った。その日は少し流れが強くて、流れに負けないように負けないように、と必死に逆流に耐えながら海中を進んだ。

ふと、隣にキンギョハナダイの群れが現れた。正面からこちらにぐぉん、と押し寄せる強い流れに、彼らはそのまま流されていた。抗うでもなく、ただ、なされるがままに。

正面からの流れが弱くなったら、少し先に進む。また流れが来たら、そのまま後ろに流される。さっきと比べて進んでいるのかも知れない。進んでいないかも知れない。何れにしても、抗わない。

今は、そういう時なのかも知れない。

あれこれ如何ともしがたい状況だけれど、抗い続けても疲れるだけだ。朝起きて、ああ、なんだか今日は私の海はウネっているな、と思ったら、無理くり先に進もうとせずに、ただ流されてみよう。

この時間を有意義に過ごそうなんて、毎日思わなくてもいいんだ。ゆうらり、ゆらりと流されるのか、ぶぉおん、と物凄い流れで背後に吹っ飛ばされるのかは分からないけれど、取り敢えず、レギュレーターだけをくわえ、深呼吸して、脱力しきろう。

明日も良い日に。

写真は、数年前に行ったパラオの海底で、空を見上げていたハゼ。次はいつ海に行けるかな。



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