見出し画像

新しい洗濯機

「新しい洗濯機、大っきいよ!見にくる?」

「あー、いくいくー」

理由がないと寄り付かない娘と、理由を作らないと誘えない母の会話である。言い訳であるとお互い認識している。「パソコン助けて!」だの、「お蜜柑が山ほど届いたから、引き取りに来て!」だの、前はもう少し体裁を整えていたけれど、最近はそれもギリギリあるんだかないんだか。多少のこそばゆさを感じつつ、様式美な会話は進み、娘は母に会いに行く。

さて、件の洗濯機。(見に行きましたよ、ええ)確かにおっきい。先代の縦型7キロ(推定12歳)があった場所に、最新モデルのドラム型、11キロが収まっている。そこだけお洗濯屋さんみたいになっている。

「タオルが、ふわふわになるのよー!こっちがお洗濯だけにして、自然乾燥したもの。こっちが、乾燥までこの子に任せたもの。ね?違うでしょう?」

ABテストの結果を誇らしげに披露される。確かに違う。乾燥まで任せたタオル群は、ふわっふわに仕上がっている。

「確かに違うね。」

「でしょ?次に来る時は、タオルを持っておいで。うちでフワッフワにしてあげるから!」

「かさばるわー!!!」

タオルは現実的ではない。でも、シーツ類は良いかもしれない。梅雨時で干せないし。などと、母の放った次への言い訳ジャブに、どうやったらできる限り自然に乗っかれるか、を娘は考える。あたたかなこそばゆさを自覚しながら。


言葉は言霊!あなたのサポートのおかげで、明日もコトバを紡いでいけます!明日も良い日に。どうぞよしなに。