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解体新書

ここにお気に入りのトランジスタラジオがあったとする。

好きで好きでたまらなくて、一体どうしてここから音が出てくるんだろう、と不思議に思い、それを解体する。

一見、大小のノブがちょこちょことあるだけの黒い箱の中には、小さな線やら部品やらがいっぱい詰まっていて、それはそれはワクワクする。

次に、それらを一つ一つ取り出し、どれが何をするものなのか、どことどこがどう繋がって信号を送り合っているのかを検証し始めるだろう。

面白がって次々に取り出しているうちに、テーブルには空洞だらけの筐体と、そこから取り出されたあんなパーツやこんなパーツが、バラバラに散らばることとなる。

それらを再度正しく組み合わせることも大事。全てが筐体の中に収まることも大事。そうしなければ、再構築されたラジオは、たとえ見た目は同じでも、ただの音を立てぬ黒い箱に成り下がってしまう。

トランジスタラジオに興味がなければ、自分が好きでたまらない他の何かでもいい。(タマやポチではやるべからず。)

… 物語の翻訳って、こういうことなんだとしみじみと実感している。

そして今、わたしは、バラバラにしたパーツの名称の一切合切が分からなくって泣きそうな連休を過ごしている。いっそ全部、ネジ1、2、3だの、銀57、王さま34、お花さん89だのにしたいくらいになっている。

今日も夕陽は綺麗だ。お夕飯に取り掛かろう。


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