UMATAKAデザイナーズノート(その1)

こんにちは。銅鐸舎代表のナポポラです。
UMATAKAのメインゲームデザイナーである無界さんに、このゲームの作成の経緯やルールの意図などをまとめたデザイナーズノートを書いてもらったので公開します。(急に6000字も送ってきてびっくり…)

ルールがわからないゲームのデザイナーズノートを見てもなにがなにやら、な部分も多いと思います。
先に以下のレビューと動画を見ていただけると、UMATAKAのルールが把握できますのでぜひチェックしてください。

■レビュー記事

■紹介動画


【注意事項】
・ボードゲームの専門用語が多用されているので、ボードゲームをある程度遊んでいないと理解しづらい文章かもしれません。ご了承ください。
・登場するゲーム内用語がUMATAKA説明書のものと違う部分があります。ご了承ください。
・文中の引用文はナポポラによる補足事項です。

UMATAKAデザイナーズノート@無界

■自己紹介

初めまして、新潟にてボードゲーム制作を行っている無界です。普段はボードゲームをしたり、ソフトバレーをしたりと毎日を忙しく生きてます。好きなボドゲはテラミスティカ、ガイアプロジェクト、アグリコラなどなど。
そして今回は新潟の火焔土器をテーマとしたボードゲームを作りました!!
みなさん火焔土器は知っていますか?
僕は去年の2月まで知りませんでした!!
火焔土器は新潟県長岡市にある馬高遺跡から出土した火を想像させるような土器です!!
僕も詳しくないので興味がある方は調べてみてください!!

初めてデザイナーズノートのようなものを書くので、どう書いていいかわかりませんが、とりあえず今回の作品「UMATAKA」についていろいろ書いてみようと思いますので、興味がある方は読んでみてください!!

★過去に作ったボードゲーム
・モンスターコロシアム(ラフゲームズ)
・アニマナイズ(アーチゲームズ)

★好きなゲーム
・テラミスティカ  ・ガイアプロジェクト
・アグリコラ    ・ブルゴーニュ
・エジツィア    ・マルコポーロ
・ハワイ      ・ストーンエイジ

■UMATAKAを作った経緯

このゲームを作ろうと思った経緯は、今回一緒にUMATAKAを製作しているナポポラさんにボードゲーム製作のお誘いをしたところからでした。以前からお誘いしていたんですが、なかなか首を縦に振ってくれなくて、いつも振られていました。
2022年2月、ある日のワカサギ釣りの帰りの車でゲーム製作の話を持ち掛けたときにナポポラさんの「作るなら新潟をテーマにしたゲームを作りたい」との発言を聞き、(これは!!)と思い、話を広げていきました。「新潟といえば火焔土器だよね」の話に僕の頭には「?」が浮かぶ。
「火焔土器ってなぁに?」の発言に呆れるナポポラさん。まぁ気にしてないんだけど。
テーマはここで決まりました。車内で土器から連想できるタイトル何かなぁ~と考えて出てきたのが「ドキドキ火焔土器」というパワーワード。
ちなみにしばらくの間、このゲームのタイトルは「ドキドキ火焔土器」でした。

ここから僕たちのボードゲーム製作はスタートしたのでした。

■ゲーム製作会議

2022年2月20日にナポポラさん宅で初のボードゲーム製作会議開催!!
実はこのころ、銅鐸舎はもう一人の友人がいて3人チームでした。途中でその友人が仕事などで色々と忙しくなり脱退しましたが、とても支えになってくれる友人でした。

ボリュームはどうする?内容物はどうする?ボードゲームならボードを使ったゲームがいいよね、ストーンエイジやフレスコみたいに60~90分くらいのゲームがいいよね、ボードゲームにはまりだした人が触れる中量級ゲームとして遊びやすい感じで作りたいね、などなどポンポン決まっていきました。たぶん3人とも好きなボードゲームのタイプが似ているんですね。

ゲーム製作の柱となる考え方

個人的に楽しいと思えるボードゲームにだいたいあると思っているものが、
① ゲームのテンポ
② 程よい悩ましさやジレンマ
③ 適度な運要素
④ 程よい他者とのインタラクション

「程よい」と付けているのは幅広い層に面白いと思われているゲームは難しすぎず選択肢が多すぎない、他者とギスギスし過ぎないことがクリアされていると感じているからです。今回のUMATAKAも多くのプレイヤー層に遊んでもらいたいと思ったため、上記の4つを意識してゲーム製作に取り掛かりました。

ゲームの世界観について話し合い

ゲームの世界観は「縄文時代」、ゲーム内容はどうする?などの話から「縄文時代だからイメージしやすいのはストーンエイジ(石器時代をテーマとしたボードゲーム)だよね」との話になる。じゃあやっぱりプレイヤーは部族の長になって村人を色々な場所に働きに行かせて資源を集めるのかなと。
「縄文時代は犬と一緒に生活をしていたんだよ」とナポポラさんが強く推してくる。車の中でも推してたんだよなぁ。犬も村人と一緒に働く駒になりました。
後にUMATAKAのメインシステムとなる犬駒となるとはこの時は思ってもいませんでした。

まずは縄文時代から連想できるものを上げていきました。
・資源は木・土・石
・狩りをしていた
・土器を作っていた
・家があったり、道具を作っていた
・犬と一緒に住んでいた(ナポポラさんの意思が強い)

上記の連想から村人は素材を集めて、土器や家、道具を作って生活を豊かにする、時には狩りに出かけることなどをゲームの世界観としていきました。
そして、このゲームのメインテーマである「火焔土器」を作ることを中心としてゲームの構築をしていくことにしました。「プレイヤーはゲーム終了までにより良い火焔土器を作ること」を目的とすることによってゲームに勝つ方法が明確になり、ルール作成の指針となりました。

余談ですがこの時はまだこのゲームのタイトルが「ドキドキ火焔土器」…。ドキドキ感はどこで演出するかを考えていました。案として、作った土器には多面体のサイコロが描いてあり、ラウンド終了時に各プレイヤーはサイコロを振って、より高い目を出せた人に勝利点が入るなど考えていました。ドキドキする~。
ゲーム内容が固まっていくにつれて硬派になっていき、サイコロによる勝利点は不採用となり、最終的にドキドキ感が消えていきました。それに伴い、ゲームのタイトルから「ドキドキ」が消えました。

■ゲームシステムについて

ここでは細かいゲームシステムについて参考にしたものや完成までの経緯について説明していきます。

資源について

縄文時代の世界観から最初は木、土、石を資源として考えていました。資源の種類を多くしないことによって遊びやすさを重視したいという考えもありました。1回目のモックをナポポラさんが作ってくれたのですが、なんと驚き、資源が木、粘土、上質粘土になっていました!話を聞くと、3種類を平等に扱うよりも1種類上級な素材がある方が面白くなりそう、火焔土器などの得点が高い土器と得点が低い土器のすみわけをするためにとのこと。僕にはなかった発想で、ここにはただただ感心しました。

完成版では、資源は木材・粘土・霊感の3つとなりました。
当初の「上質粘土」という概念は、ゲーム的にわかりやすくはありましたが、縄文土器のデザインの独特さ・豊穣さは、よい素材を使えばよい土器が作れるという世界観とは相容れないものでした。
ではなにが必要か。直感、閃き、インスピレーション、霊感といった案を出し、最終的には炎の形をした「霊感」というあまり例のない資源となりました。
アミニズム的な世界観ともマッチしており、満足しています(テストプレイ中はみんな「火」とか「ファイヤー」とか呼んでしまってますが…)

犬駒

このゲームのメインシステムのひとつである犬駒の存在について。この部分はナポポラさんの熱い提案によって採用されました。当初は村人との住み分けをどうするか、うまく機能するのかなどを考えていましたが、1回目のテストプレイから最高に機能していました。
ちなみにアクションスペースにある白犬2匹と白犬3匹のスペースはロシアンレールロードの臨時ワーカーを参考にしています。個人的にロシアンレールロードの臨時ワーカーのアクションがとても好きです。1ワーカーが2ワーカーに増えるアクションなんですけど、1手番使ってまでする価値があるのか?とプレイヤーに問うようなアクションスペースで、僕の推しにより最初のバージョンから採用されていました。

製作ボード

これは村を発展させてゲームを優位に進めることを目的にしたシステムになります。ワーカープレイスメントによくあるワーカーを増やすことがまず頭に浮かびました。このゲームには村人と犬という2種類のワーカーがいるので、この部分は別々に設け、ワーカーの増員を演出しました。ワーカーを増やすことがただただ強いアクションにならないようにゲームバランスを崩さないように調整することがとても難しかったです。
「開墾」という建物能力では自分だけのアクションスペースが使用可能になり、この部分は個人的に好きな部分です。ラウンドが進むにつれ、各プレイヤーのワーカーが増えていく可能性が高まります。そうするとメインボード上のアクションが飽和状態となり、置きたいスペースにワーカーを置くことができない状態に陥る可能性があります。その部分の解決策として他プレイヤーとは別の道を行く手段としての役割も担っています。面白いのは他のプレイヤーも同様に「開墾」のレベルを上げたり、他プレイヤーがワーカーをあまり増やさない展開の場合はこの開墾により増えたアクションスペースは思った以上には強くない可能性も秘めているという部分です。
ちなみにこの製作ボードの右に行くほどレベルが上がっていくシステムはツォルキンを参考にしました。

探索トラック

探索トラックもこのゲームのメインシステムですね。村人が村の周りを探索して資源を拾ってくる。テーマから考えたシステムですが、このシステムがとてもハマりました。元々ワーカーを1~4つアクションスペースに働きに行かせて、その数に応じて資源が貰えるシステムを考えていたのですが、そのままだとどこかにあるような単調な内容になってしまうなと考えていました。そこで、働きに行かせた駒の分だけ村の周りを探索して追加で資源を貰えることにしたらどうかという考えが出てきました。
ナポポラさんの初回モックを見たら、資源獲得のアクションスペースがワーカー数違うのに貰える資源が同じ場所がある!(1ワーカーでも2ワーカーでも2資源)となっていて、まぁワーカープレイスメントだから先取りが大事だし、多くワーカー使ってももらえる資源が増えないのは仕方がないかぁとか思っていたんですが、ここで思わぬ化学反応が起きました。
テストプレイをしたらなぜか貰える資源が同じなのに、ワーカーをより多く支払うアクションスペースを先に使用する場面が多々あったのです。理由は簡単でした。探索マスをより前に進むために、よりよい探索マスに止まるために、ということを考えてプレイヤーはアクションスペースを選んでいたのです。この感覚は実際にプレイしてみないと味わえないと思うので、ぜひ一度プレイしてもらえたらと思います。
ちなみに他プレイヤーと同じマスに止まることができない、すでに他プレイヤーがいるマスは歩数に数えず飛ばしていくといったシステムはオールザウェイホームを参考にしました。

土器の製作

土器を作るタイミングについてはしばらく話し合いがありました。個人的にはラウンド終了時に探索マスで一番進んでいる人からラウンド開始時にランダムで提示された土器を作る権利を得ることができる、という案を出していました。ナポポラさんからは、他プレイヤーに先に土器を取られることで、計画が崩壊することは避けた方がプレイヤーのストレスが軽減されるとの指摘がありました。また提案として探索マスの道中に製作アイコンを設け、越えることができたら製作アクションをすることができるといった提案があり、そのまま採用となっています。土器は6種類各5枚ずつ用意し、製作コストは変わらず点数のみ下がっていくことによって、各プレイヤーのプラン崩壊を防ぎ、ストレスが溜まらないような設計を意図しています。

ディスプレイに並んだ獲得資源が異なるカード・タイル類を取り合うルールのゲームは多いです。
狙いが他のプレイヤーと被ったときに、いかに相手のスキをついて先に動くかを考えることはボードゲームの醍醐味のひとつですが、負けた側のプレイヤーにネガティブな感情が生まれることは避けられません。
ワーカープレイスメント部分で十分にインタラクションがあるので、得点源の土器タイルについてはインタラクションは薄くてよいと考えました。

食料について

食料についてはストーンエイジを参考にして、ワーカー数に応じて支払うといったことも会議にて話し合いました。結果としてはワーカーに対しての食料の支払いはこのゲームを遊んでもらいたいプレイヤー層にとって複雑なルールであり、あまり採用するメリットもないことから不採用となりました。

偉大なワーカープレイスメントのゲームの先輩であるストーンエイジやアグリコラには、ワーカーの数に応じた食料を払うルールがあります。
これは、ゲームのテーマに沿った自然なルールであり、かつワーカーを増やすという強い戦術へのブレーキとしての役割でもあります。
UAMTAKAも慣習にしたがって食料ルールを採用することも考えましたが、無界さんの書いた理由によりルールからは除外しました。

木の実について

木の実のルールは最初のバージョンではありませんでした。その後、博物館で取材した内容から、縄文時代は木の実を土器で煮て食べていたという話を聞き、ゲームに木の実を登場させることを考えました。食料にするかなどの話も出ましたが、前述のとおり食料ルールを採用するとゲームが複雑になる可能性が高いため、見送りました。
木の実は土器を使用して煮て食べるところから、木の実を土器に入れるという発想がでました。木の実を手に入れる方法については探索マスが最初に思い浮かび、そのままバランスを調整していきました。木の実の獲得の方法をうまく増やすことはできないかということで、各アクションスペースで一番下のスペースを使用したプレイヤーが獲得できるようにしました。これによって木の実が獲得できる頻度が上がっただけでなく、木の実を獲得するために下のアクションスペースを使用するというプレイヤーが考える要素が自然と増えることになりました。

テストプレイ中期に、ゲームの課題として「少しゲームが長い」「4ラウンド同じことの繰り返しに感じる」といったものがありました。
UMATAKAは言ってしまえば「ワーカーを置いて資源を取って土器を作る」ことの繰り返しです。同じことの繰り返しは飽きを助長します。
しかし、この課題に対して単純に「ラウンド数を減らす」ということはしたくありませんでした。テーマに合わせた春夏秋冬4ラウンドを変えたくなかったことと、序盤での投資(ワーカーの数を増やしたり)の結果を実感するためにはラウンド数が必要だったからです。
テーマに沿ったルールで、処理を大きく増やさずに、この課題を解決する…結構な期間を費やして議論し、今の木の実ルールが爆誕しました。ゲーム全体に小さな捻りが追加され、深みが増しました。
ルールと処理が増えているのにプレイ時間が短くなるという妙味をぜひ実際に遊んで感じてほしいです。

■おまけ:製作過程におけるナポポラさんとのやり取り

基本的にゲーム内容に関する提案は自分の方からナポポラさんへ投げています。テストプレイを行った後に出てきた課題やモヤっとした箇所を考え、とりあえず思いついた案はすぐにメモをして、まとめたらすぐにナポポラさんに投げます。投げまくります。とにかく投げまくります。8割くらいの確率であまり良い返答がきませんが…。が、たまに良い感触の返答があるんですね。そこから実際に試してみて課題を見つけて改善したり、ボツになったりを繰り返してました。

8割は言い過ぎだと思います。

ナポポラさんが強く意識していたこと

① 『例外ルールを安易に増やさないこと、プレイヤーが間違わないようなルール』
このゲームでは(A)アクションスペースに駒を配置したらスペースの効果を得て、(B)その後に探索マスを移動して探索マスの資源を獲得し、(C)最後に製作アイコンを超えていたら製作アクションを行う、という流れが全てに適応され、ゲーム中の処理が複雑にならないよう意識して作っています。

② 『要素を追加して面白くなったとしても、1追加して1しか面白くならないなら追加しない方がよい』
ゲームを複雑にすることによってプレイヤーの選択肢を増やし、面白そうに見せることは意外と簡単にできることだと思います。ただ、それが本当に面白いのか?プレイヤーがすべてを把握できていないことを面白く感じているだけではないか?ということをUMATAKA制作を通じて考えられるようになりました。複雑になればゲームが長引くし、プレイヤーの考える時間も長くなってしまう可能性が高くなります。必然的にゲームのテンポが失われるため、プレイヤーの満足度が下がります。

■最後に

読んでいただいた方にはぜひUMATAKAを遊んでいただければと思っております。そして一度UMATAKAを遊んでからもう一度この文章を読んでいただけたら、各システムの意図などを再認識してより楽しめると思っております。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
UMATAKAをよろしくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?