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日本のAI活用、支出は最大もシンガポールに後れ - インテルのAPAC AI成熟度調査から見える課題と展望

皆さま、こんにちは。AI(人工知能)の話題で持ちきりの昨今ですが、日本のAI活用状況は実際のところどうなのでしょうか? 今回は、インテルが実施したアジア太平洋地域のAI成熟度調査から、日本の現状と課題、そして未来の展望について探っていきましょう。


日本のAI活用の現状

最大の支出額を誇る日本のAI市場

まず、朗報から。日本のAI支出額は、調査対象8カ国/地域の中で最大だそうです。「えっ、本当に?」と驚かれた方も多いのではないでしょうか。

小売業と製造業がけん引する成長

この成長を牽引しているのが、小売業と製造業です。ネットショッピングの需要増加や、製造現場の効率化など、身近なところでAIの活用が進んでいるんですね。

2028年の支出予測と成長要因

さらに驚くべきことに、2028年には日本のAI支出が2兆5000億円を超えると予測されています。その成長要因として、IDC Japanの寄藤幸治氏は「これまでは社内向けのAI活用が主流でしたが、今後は新製品やサービスの開発など、外部向けの活用に移行することで、AI活用の幅が広がっていく」と説明しています。

アジア太平洋地域のAI成熟度比較

4段階評価による各国の位置づけ

さて、ここからが本題。インテルの調査では、各国のAI成熟度を4段階で評価しています。

シンガポールが唯一の「AIリーダー」

驚くべきことに、最高ランクの「AIリーダー」に選ばれたのは、シンガポールただ1国。日本は一歩及ばず、という結果になりました。

日本の位置づけと強み・課題

日本は「AIイノベーター」というランクに位置づけられました。韓国、オーストラリアと同じグループです。良い点は多々ありますが、シンガポールに後れを取った理由は何なのでしょうか。

日本のAI活用における強みと課題

組織的側面での評価

日本の強みは、製造業・非製造業を問わずAI活用や投資が行われていること。一方で、日本語モデル志向やレガシーシステムの温存が、AI適用の遅れにつながっているようです。

社会経済的側面での高評価

実は、社会経済的側面では日本は8カ国/地域中最高点でした。AIソフトウェアプラットフォームへの投資や、政府主導のAI社会実装の取り組みが高く評価されています。

政府政策面での取り組みと課題

政府の取り組みも評価されています。2023年の補正予算で半導体や生成AIの支援に2兆円を計上するなど、積極的な姿勢が見られます。ただし、AIに特化した規制がなく、個々の企業努力に委ねられている点は課題とされています。

エッジAIの台頭

データ処理の場所の変化

興味深いのは、AIの処理場所が変わりつつあるという点です。2025年には、データの75%がデータセンターやクラウド以外で生成されると予想されています。

エッジAI投資の増加予測

これに伴い、アジア太平洋地域の企業の75%がエッジAIへの投資を増加させ、50%の企業が全IT支出の16%をエッジAI投資に回すと予測されています。情報処理の遅延を減らすため、エッジでのAI処理が増えていくのですね。

今後の展望と課題

ハイブリッドAIの可能性

インテルの大野誠社長は「クラウドとエッジを合わせたハイブリッドAIがこれからの世界を創っていく」と予測しています。日本企業にとっても、この流れは見逃せないでしょう。

日本がAIイノベーションをリードする可能性

IDCの寄藤氏は「長期的なビジョンに基づいて、強固な経済的/社会的基盤の上でAIに対しての投資を行っていて、今後日本がAIイノベーションをリードする可能性もある」と語っています。

克服すべき課題

しかし、課題もあります。AI人材やスタートアップの不足、日本語モデル志向によるAI適用の遅れなど。これらをどう克服していくかが、日本のAI未来を左右するでしょう。

まとめ:日本企業はどうAIと向き合うべきか

日本のAI活用は、支出額では最大を誇るものの、成熟度ではシンガポールに一歩及ばずという結果になりました。しかし、社会経済的基盤の強さや政府の積極的な支援など、強みも多く持っています。

今後、エッジAIやハイブリッドAIの台頭が予想される中、日本企業はどのようにAIと向き合っていくべきでしょうか。レガシーシステムの刷新や、AI人材の育成、そして何より、AIを「コスト削減のツール」としてだけでなく、「新たな価値を生み出すパートナー」として捉える視点が重要になってくるのではないでしょうか。

皆さんの会社では、AIをどのように活用していますか? また、今後どのような活用を考えていますか? 日本がAIイノベーションをリードする日も、そう遠くないかもしれません。その日に向けて、私たち一人一人が、AIとの付き合い方を真剣に考える時が来ているのです。