文字数の少ない世の中での、自分らしい文字数の話

ポッドキャスト番組『不要不急問答(https://www.tenbusu.ryukyu/podcast2)』にて、最近は映画評論を配信している。
別に映画をたくさん観てきたわけでも詳しいわけでもないのだが、どう感じたかを語るくらいは自由だと思っているので堂々と続けている。

評論する前提で映画を観ると、その映画が持つテーマ(だと僕が勝手に解釈しているもの)や、ひとつひとつの繊細な表現に、これまで以上に目が行くようになった。
アウトプットの必要性が高まるほどインプットの質も比例して高まるものだと思う。その実感があるのも楽しい。


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ところで、そのインプットとアウトプットを繰り返すうちに、ひとつ気づいたことがある。
映画評論をするにあたって、僕は毎回台本を作っているのだが、その台本の文字数がいつも6000字前後になるのだ。

配信に時間制限はない(評論自体は番組内で15分から20分というおおざっぱな指標はあるのだが、守れなくても特に問題ない)。ましてや文字数の制限もない。内容や構成も自由だ。
なのに、台本を書くと勝手に6000字程度になる。

どうやら僕は、あるテーマをのびのびと自由に語るとなると、おのずと6000字程度の語りになるようなのだ。

憶測だが、この「文字数的フィーリング」には個人差があるはずだ。10000字でも20000字でも満足いくまで語れる人もいるだろうし、1000字くらいがちょうどいい人もいるだろう。
真面目な話、50字とか100字くらいの人もたくさんいると思う。だからTwitterが発展したのではないだろうか。


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あくまで個人的な感覚だが、
状況によっての適正はあれど、僕は基本的には、あらゆる文字数は多ければ多いほど良いと思ってる。
同時に、世の中は短文を求めすぎてる傾向にあると思う。


例えば、話の上手いインフルエンサー達による、根拠の浅いアドバイス。Youtubeなどに腐るほど存在するそれらを見かけるたびに、その領域の専門研究者たちの血と汗と涙の努力が無下にされている気がするし、それを無下にしているのは誰よりもその視聴者であるとさえ思う。
彼らの長年の努力が、なぜその研究をしたこともない奴に5分程度の動画にまとめられ、しかもそれが一定の支持を得てしまうのだろう。

配信媒体で映画を観る際、早送りにしたりスキップしたりする人たちがいるとも聞いたことがあるが、似たような気持になる。
最近だと曲を聴く際にサビまで飛ばす人がいると聞いて驚いた。

コンテンツが溢れすぎているので、それらを効率よく享受するためにスキップは必要である。という分析を読んだことがある。
コンテンツが多すぎるから、短いほうが、短文のほうが享受しやすいと。
確かになんとなく説得力がある。でもそれ以上に、難しすぎないかと思う。


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本来100あるものを、50に短縮して受け取るとしよう。
残り50を想像で補うのならまだわかる。それはそれで楽しいし、提供する側がそう仕掛ける場合もたくさんある。

しかし、ここで言う短縮とは、50を50のまま受け取って終わることを指している気がする。
切り取られたものを切り取られたまま見つめる行為。それは、決して効率がいいとも合理的だとも思えないのだ。


例えば自分の好きなインフルエンサーが放った心に響く一言の影に、専門家達の長年の研究や歴史があること。
例えば早送りやスキップで見逃した映画のワンシーンに、制作のこだわりや素晴らしい演技があること。
例えば流行りの曲の素晴らしいサビは、そこに行きつくまでのストーリーがAメロBメロにあること。

せめて、せめてそのへんまで想像だけでもしていれば、50は60にも70にもなるかもしれない。
せめてその想像だけは諦めないほうがいいんじゃないかとは思うが、でもやはり、それは難しいのではないか。
それは、「そこに無いものを有ると思え」と要求されている気がするのだ。

ちょっといやらしいことを言うと、僕はそれが苦手だから、時間を使ってでも100のまま受け取りたいとすら思うのだ。


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僕の映画評論は6000字ある。僕の100は6000字だ。
人が10で受け取るのも50で受け取るのも自由だが、僕はこれを、どうすれば600字や3000字にできるのか正直よくわからない。

みんな、まとめようとしすぎなんじゃないか。
 
 
6000字は、僕の気持ちのいい文字数だ。
その気持ちよさが、番組を聴いている方やこれを読んでいる方達に共有できることも、ほんのちょっとだけ期待している。
ちょっとだけね。

6000字まるまる受け取れ!と言われると、引く可能性が高いのもわかるけども、その文字数的フィーリングが合う人がいたらいいな、なんて思ったりしている。

ちなみにここまでの文字数は1900字くらいです。6000字いけや

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