童話 ホルモンの森 09(最終話) 作:MONTAN ★家を捨てて森にいこう★
【挿入歌】いつもここにいるだけ
むかしむかし、ネコネコ森の西のはずれに
大きなホルモンの木がありました。
そばには、がらくたのようなピンクの二階建ての家がありまして、
双子の白ネコ“ホル”と“モン”がホルモン屋をしておりました。
この頃毎日のように、双子のピーナッツ娘たちがマイクを持ってホルモンの木の下で歌うものですから、ホルが木の下でいくら上手に歌っても、ちっともホルモンの実か落ちてこなくなってしまいました。
「商売上がったりだね。」とモン。
「どうしたものかね。」とホル。
「ピーナッツ娘たちもホルモンの実を手に入れてないようだし、もうこの木はきっといくら歌っても、実が落ちてこないのだと思うよ。」
ホルモンの木の下で、双子の白ネコは「は~。」とため息をつきながら、ふさぎ込んでいました。
空はピンクに晴れわたり、そよ風が優しくヒゲを揺られますが、白ネコたちは木の根元に寄りかかりうつむいておりました。
「なに二匹でさえない格好をしているのでしょう?ご自慢にもならないわね。」
機械のような奇妙な声。
ホルとモンが顔を上げると、すぐそばに“人形の人”が立っていました。
セルロイドのような顔は笑っているのかいないのか、男なのか女なのかもわからない謎めいた人でした。たぶん、家は豪邸でご自慢のコレクションを集めるのが趣味なのです。
「ねぇ、あなたたち、ホルモンの実を商売にしているのですってね。私にひとつゆずってくださらない?」
「それがもうこのホルモンの木から実が落ちてこなくなってしまってね。悪いけど無理なんだ。」モンは残念そうに言いました。
「あら、それはご自慢にならない話ね。」人形の人は当てが外れてがっかりしましたが、すぐに考え方を変えました。
「この木が役立たずなら、私の家に持って帰って良いでしょう?」
「えっ、こんな大きな木を持って帰れるの?」ホルはビックリしました。
「もちろんよ。庭に植えかえれば私のご自慢になるわ。」そう言って、指を軽く鳴らしました。
するとどこからともなく、五人の黄色い服の人たちがやってきて、ホルモンの木の周りを囲みました。
五人はみんながっしりした大男でみんな同じ顔で無表情でした。
「じゃあ、持って帰るわよ。」人形の人が再び指を鳴らそうとした瞬間…
「ちょっと、待った。」とモンは叫びました。
「それを持っていくなら、リンゴちゃんのことは忘れてあげてよ。」
「あら、それが条件なの?いいわよ、そんなこと。あれからいくら探しても見つからないし、もう忘れるところだったから、ちょうどいいわね。」
人形の人の合図で、五人の大男たちはいっせいに力をだして、大きなホルモンの木を引き抜こうとしています。
「いくらなんでも無理だよ。根こそぎ持っていくなんてさ。」ホルモン屋の店先のベンチに腰を下ろして、ホルはビビリながら、眺めていました。
「ほら、もたもたしないで早くおし!」人形の人がせかすと、大男たちはさらに力を入れました。
ホルモンの木がゆらゆら揺れると、きゅうに根がぼっこりと地面に現れました。
「おお、すごい!本当に持ち上げてしまったよ!」二匹はベンチに腰かけて面白そうに見ていました。
やがてどうしたことでしょう、木全体が粒々のかたまりように変化していきました。その粒々が五人の男たちも伝染していくと、さっきまで無表情だった顔たちが幸せそうな表情になっているのです。
やがて粒々は木と男たち全体をおおい、光り輝きながら細かく小さくなっていきました。
「あら、どうしたの?私のご自慢の男たちよ!」
「わあ、きれいだね。」とホル。
「なにか、科学的な反応をおこしたのだね。」とモン。
ホルとモンは、店先のベンチに腰掛けながら、粒々が光りながらだんだんと粉々に無くなっていく様子をじっと眺めていました。
ほんの数秒の時間でしたが、二匹のネコには永遠のイベントのように思えて興奮しておりました。
「消えてしまったわ!何もかも!どうして、どうして?」
人形の人はパニック状態です。
ホルモンの木のあった場所は、大きな穴が開いていて、根こそぎ消えてしまったようでした。
「どこか別の場所に行ってしまったのだと思うよ。」とモンは適当に言いました。
「太陽にでも帰ってしまったのかしら?」人形の人はがっかりして、
「ご自慢の物がいっぺんに二つも無くなってしまったわ…。」
そう言うと、肩を落として、ギコギコと帰って行きました。
「これからどうしようか?」ホル。
「うーん、探しにいこうか、ホルモンの木!」モン。
次の日、ホルとモンはリュックを背負って旅に出ることにしました。
「ネコネコの森の東のはずれまで行ってみよう。」とモンが方位磁石を持って言いました。
「ボクは方向音痴だから心配だな。」とホル。
「ボクも同じだけど、磁石があるから大丈夫さ。」
「途中で迷ってしまったら、どうしよう?」
「迷ってしまったら、引き返せばいいさ。」
双子の白ネコは訳の分からない会話をしながら、森の中に消えていきました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
クロネコのヒロが久しぶりにホルモン屋にやって来ました。
だけど様子が変です。
大きなホルモンの木は無くなっているし、がらくたのようなピンクの二階建ての家も変わっておりました。
店の入り口には“クロうどん”と大きく書かれたのれんがあり、中には見知らぬ老人がうどんを作っておりました。
ヒロはおそるおそる店の中に入って行きました。
「いらっしゃい。今日初めてのお客さんじゃ。サービスしますぞ。」としゃがれた声で主人が話しかけてきました。
「あのぉ…、ここにいたホルとモンはどうしたの?」
「はて?それはどんな薬味なのかな?長年山奥で修業をしていたが、そんな薬味は聞いたことがないのぉ~。」
「双子の白ネコなんです。友達なんです。」
「わしが幸せの泉からやって来た時は、ここは空家だったのじゃ。これ幸いと昨日オープンさせたのじゃ。」
「そうなんですか…。」ヒロはすごく寂しい気持ちになりました。
「そんな悲しそうな顔をさせんと、これを一杯食べてみるのじゃ。」
カウンター越しに出された素うどん。うどんは黒い色をしていました。
「大丈夫じゃ、ネコ用にぬるま湯にしておる。」
ヒロは爪で黒いうどんを引っかけて食べてみました。
口いっぱいに広がる幸せな味とノド越しに思わずうなりました。
「うーん、格別な味だにゃぁ~!」ヒロは興奮ぎみでした。
「当り前じゃ、幸せの泉で練りこんだ麺と出汁じゃからのう。」
「お爺さん、私をここで雇ってください。ここで修業がしたいです。」
「おやおや、困ったのう。人手は足りておるんじゃが…」
「ネコ手ならいいでしょう?」
「ふぉっふぉっふぉ、面白いことをいうやつじゃ。よし、じゃあ、町に行ってクロうどんを宣伝しに行っておくれ。お客さんがいっぱいきたら雇ってやろう。」
「うん、わかったよ!」
ヒロはスキップしながら町の方に帰って行きました。
町の人たちでクロうどん屋がにぎわいを見せるにつれて、ホルとモンのことはだんだんと忘れ去られていきました。
二匹はどこに行ってしまったのでしょうね。
きっとまたどこかでホルモン屋を始めているかもしれませんね。
それとも、まったく違うことを始めているかもしれませんよ。
ということで、このお話はとりあえずここでおしまいです。
みなさん、さようなら、お元気でお幸せに。
9話 了
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Dosgatos is the Japanese duo . Start the activity from December 2013.Mainly We continued to announce to on the Internet. We released few number of album. Please chack it out!
Dosgatosは2013年12月からインターネットを中心に楽曲の発表を行ってきました。現在数枚のアルバムをリリースしています。私達の音楽をお楽しみいただければと思います。
-<Official web site>- http://holmium201312.wix.com/dosgatos
-<OK!Music>- http://okmusic.jp/#!/units/283?n=Dos%20Gatos
-<soundcloud>- https://soundcloud.com/dosgatos-1
-<Niconico>- http://www.nicovideo.jp/mylist/44746899
-<Youtube>- https://www.youtube.com/channel/UCcLJKnStA9HG-eXm5prA1sQ/videos?flow=grid&live_view=500&sort=dd&view=0
-<bandpage>- / https://dosgatos.bandpage.com/
-<MUZIE>- http://www.muzie.ne.jp/artist/r052049/
-<Behance>- https://www.behance.net/collection/28071225/DosgatosThe-world-is-yours
-<NOTE>- https://note.mu/dosgatos
-<itune>- https://itunes.apple.com/jp/artist/dosgatos/id881849196?l
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