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精霊の棲む土星の裏脳

 政令指定都市、と聞いて長らく「精霊」や「聖霊」の棲む町を連想していた宇宙人。何やら素敵なパステルカラーな町を政府は支援しているのだな、と今でも耳障りだけは心地良く聞いている。そういえば中森明菜の「AL MAUJ」という曲も最近までずっとアルマジロだと思っていた。謡曲は謡えても歌謡曲には疎い宇宙人。巷で人気のアニメ『呪術廻戦』では主人公が必殺技を繰り出す時に「こくせん」と連呼していたが、選挙前だったか殺人事件裁判モノでも読んでいたかで、わが脳みそは勝手に「国選」に置き換えて定着している。原作を知らぬので今でも本当の漢字を知らない。キラキラネーム? そんなの最初から読んでないよ。どうせ正しい読み方じゃないんでしょ。はなから読まないよ。読んで欲しかったら誰でも素直に読める名前を我が子につけろ、なのだ。
 かく言う宇宙人も、昭和に人気だったありふれた名前にも拘らず、読み方がいくつかある漢字のため苗字も名前も読み間違えられるのが常である。イヤなものですよ、自分の本名が一発で相手に伝わらないって。何度も言い直させられるって。だから最近では通称を使うことが多い。いわゆるビジネスネームというやつだ。読み間違えのない氏名を選んで名乗ってみたら、大層具合がいい。一発で認知されるって素敵だな。今後はこれで行こう。親には悪いが、本名の苗字はそもそもロシア人が発音しにくく、無理に発音するとあまり良くない単語(虫の名前だ)を連想させるのだ。下の名もロシア人が発音すると原語からひどく遠くなり、宇宙人はこういう耳に訴える不快に忍耐がない。だから通称は都合がいいのだ。ここでは通称「宇宙人」で通しているが、余所でかぶっている人もいないようだし、万一かぶったら苗字を「土星の裏側の」と付ければ安泰なのだ。読み間違えもないし。
 レザークラフトの自作かばんを持ち歩いていたら興味を示す人がちらほら現れ、注文するかもしれぬから連絡先を寄越せと言う。なのでこうしたシーンでサッと渡せる名刺を作ることにした。うーん、と悩んだ末、通称で作ることにする。テンプレート式なら100枚作っても800円くらいだし、実名等の個人情報は漏洩が怖い世の中だし、通称で十分だよね。「会社名」の欄に「革工房 土星の裏側」と入力する宇宙人。肩書き欄に「宇宙人」と入力して削除する宇宙人。別にふざけているわけではないのだが。画像は友人の注文で作ったバイカラーの肩掛けカバンと、現在製作中の革彫り。イワン・ビリービンの勇者像を彫って、この後着色する。作業中は集中しているので、腰痛その他の憂いを忘れられて良いね。

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