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算命学余話 #U114「境目に立つ宿命を見る」/バックナンバー

 前回の余話#U113に関して、観念的な話だったにもかかわらず少数の読者を得ることができ、嬉しく思います。本来なら玄人向けの「玄番」にすべき内容だったのですが、次の玄番まで待てなかったので前倒して取り上げました。実践的な話でなかったのでピンと来ない方も多かったと推察しますが、今回は具体的な実例を挙げて前回の補足と致します。
 その前に、干支暦と今日の暦(西洋暦)について、これくらいは認識しておかなければならないという点を補足します。
 現代人は何の疑いもなく西洋暦を使用し、万人が共通と認める時計を使っています。もちろん国の位置によっては時差がありますが、地球の地軸を中心にミカンの房のように地球を等分したラインに沿って、概ね一時間刻みの時差を我々は受け入れています。しかし算命学の元となっている干支暦の感覚では、こうした時差はおかしい、あまりに大雑把過ぎると考えています。
 もしこの一時間のちょうど中間で真夜中を跨いだなら、前の30分と後ろの30分とで日付が変わってしまいます。では30分刻みにすればいいのかといえばそうではなく、厳密には一分一秒でさえも中点を越えたか越えないかで甲日なのか乙日なのか、宿命は違ってきてしまいます。日本は東西に長い国土でありながら全国で一律の時間を使っていますから、その基準となる東経135度の兵庫県明石市が夜中の0時を打った時、沖縄はまだ0時に至っておらず前日23時台だし、北海道の知床ではとうに0時を過ぎて久しいという状態です。この瞬間に生まれたこの三地域の新生児が、時計に倣って同じ宿命を持って生まれると見做すのが西洋暦普及の弊害だと、算命学は考えているのです。

 たとえ一分一秒であってもこうした差を算命学は無視できない立場であり、そのため前回余話のように干支暦を日夜更新する努力が続けられているわけですが、現実に暮らす我々は、生まれた日時を母子手帳に記入し、それは西洋暦であり、国内標準時間です。そしてそれを信じて算命学に鑑定依頼する人が、「自分の生年月日はこれこれです」と依頼してくるわけです。
 流派によっては誕生時間も考慮しますが、基本的に宿命は日干支が最小単位ですから、生まれた日つまり日干支が宿命の中心となります。この中心が、西洋暦とそれに付随する標準時間のために狂っている人が少なからずいる、ということは、頭に入れておかなければなりません。昼間に生まれた人はともかく、真夜中0時前後の生まれであるなら、宿命のズレを疑ってみるべきかもしれません。それでも日本はまだましな方で、隣の中国などはあれだけの面積を誇る国土でありながら、乱暴なことに国内通用の時間はたったの一種類で、国内の時差を認めていません。こうした国情の国民の生年月日を算命学が算じることができるかは、大いに疑問です。

 さて今回のテーマは、こうしたズレに関わる「境目」について、具体例を挙げてその実態を見ていきたいと思います。今回使わせて頂く宿命はまだ存命ではありますが、先日薬物関係で逮捕された元プロ野球選手です。ちょうど「境目」に当たっていて、前回余話の内容では何のことか判らなかった読者には、なるほどこういうことか、と理解しやすくなるかと思います。

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