あほくさ小噺:インド編
新入社員とかいう肩書き背負って早1ヶ月。
正直まだまだ仕事がなく、日中暇する事が多い。私としては、暇な時は寝ていたいのだが、そうとなっては面子が保てぬ。何となくPC開いていればそれっぽく見えるから、画面をぼんやり見つめながら、あほくさい話を考えてしまったのだ。
ここでじゃあ、小粋な冗談を一つ。
インドの駅舎で見かけた易者に、危うく騙されそうになった時の話だ。
「兄さんちょいと寄ってくれ。見てくれな」
面倒ごとは避けたかったが、なにぶん初めての海外ひとり旅。その場の雰囲気もあってか、つられて易者に応えてしまったのだ。
「コレはぁなあ、ワシの爺様から代々引き継がれている由緒正しき水晶玉」
「ほお、由緒正しきねえ。確かに、一点の曇りもない、きれいな水晶だ」
「この水晶玉にはな、Aという型とBという型があるのじゃよ」
「ほう」
「遠い東の国ではA玉、B玉と呼ばれておる。これはちなみにB型じゃ」
「ビー玉……。パチモンじゃねえか」
「ふえっ、ふぇっ、ふぇ。由緒正しきパチモンじゃ」
「笑ってる場合か……。それにしても随分デカいビー玉だな!? あ確かにちょっと歪んでるコレ。ほら、ちゃんと自立するもん」
「しかしだよ、兄さんや。もしこのパチモンで見通した占いが当たったら、どうじゃ? さしずめ、ワシの力は本物、と言えるじゃろう?」
「うーん。それは確かに。 じゃあじゃあ、俺の旅の運勢、視てくれよ」
「あい分かった」
そう言って易者の爺さんは奇声を上げながら、水晶玉(パチモン)を手の内でぐるぐると回した。回してみると確かに、幼い頃に遊んだ、少し淀みのある、あのビー玉だ。どこで作られたのだろう。
「むむ、視えたぞ!」
「おっ!」
「記者じゃ」
「え?」
「記者に、兄さんの運命がかかっている」
「汽車に?」
「そうじゃ。しかしそう簡単に、運命の記者とは出会えん。何せこの国は、混乱が続いているからな。偽物の記者に出会ってしまう事もある」
「偽物の汽車……。確かに、昨日も行先が表示と違う所に連れて行かれたからなあ。気を付けないと。なあ、爺さん、運命の汽車に出会うには、どこに行けばいい?」
「それは兄さんの胸の内に聞いてみるがよい。ふぉっ、ほっ、ほ」
「胸の内……」
ふと、自分の胸ポケットを探ってみると、昨日間違えて買ってしまった、本来乗るべき汽車の切符が入っていた。背中の方から聞こえてくる、インドなまりの英語が、その汽車の到着を知らせている。
爺さんになけなしのチップを渡して、汽車に飛び乗った。
そして、後に人生の相棒となるキュッシャが、新聞記者を装って汽車に乗り込んでくるのは、また別の話。
おしまい。
追記:
ビー玉の語源はビードロ玉なので、A玉B玉は、実は俗説。ラムネに入っているのが、A玉だよ。
パラレルワールドの日本だったら、B玉がもしかしたら、ラムネに入っているのかも知れない。
エーダマン爆外伝!
なんちゃって。
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