或るJKの放課後:川に対するいくつかの相対論

こんな世の中ですし、正義の味方でも大悪党でも、どっちにもなれるぐらいの、どっち付かずでいいと思うのです。
だって世の中、声がデカい人が勝つんですから。

或るJKの放課後〜川に対する相対論〜


「ねーねー、インスタ見た?    アヤコ今日も超可愛いよねっ」
「アヤコまたスタバの新作飲みに行ってる。お金あるねー」
「そりゃあさ、大学生のカレシが居るんだから、ウハウハよ、ウハウハ」
「……何でこう、マリーは時々おっさん臭くなるんだろう」
「ラギはリアクション薄すぎだよー。いいなあ、あたしも毎日スタバ飲みた〜い」
「我々はお金のない可哀想な庶民だからマックシェイクですよ」
「前向きに考えれば、スタバよりヘルシーだよねっ」
「ヘルシーかどうかは知らないけど……。お財布には優しいよね」
「お財布ヘルシー♪」


「ねえ、マリー」
「なあに、ラギ」
「かわいい、なら、海はだめ、なのかな」
「えーそんなこと無くない? あ、でも、広い目で見ると、海でナンパされちゃうから、だめ、かも」
「可愛い子には旅をさせよ、とは言うけどね。難破されちゃうんじゃ、いたたまれない」
「それならさあ、ラギ」
「どうしたの、マリー」
「かわいそう、なら、海にはいるの?」
「いやいやいや。そこまで極論持ってこなくても。でも、あれね、今年は海入ってもいいかもね」
「夏が恋しいよ〜。早く夏休みにならないかな〜」
「水着何とかしないとなあ。そうだ、川崎寄ってこうよ。ラゾーナで水着見よう」
「さんせ〜い! ヤンキー多いから、気を付けないとね。ヤンキーゴーホーム!」
「こらこら。フロンターレファンに怒られるよ」


「そういえば川崎って、水族館できるらしいよ。オープンしたら行こうよ〜」
「へえ水族館。そんなのデートで行きなよ。私と行ったらタカシ君泣くよ?」
「タカシはコツメカワウソの可愛さが理解できないんだもん。サメとマンボウばっかりだからつまんないの。それなら、ラギと一緒にカワウソ見たいなっ」
「そりゃどうも」
「ねえラギ」
「なに、マリー」
「かわさき、なら、海はあと、なのかな」
「そりゃそうでしょ。山に源流があって、川に繋がって、最終的には合流して、海に流れていくんだから。シャケの生態の授業でやらなかった?」
「シャケ? あ、イクラが孵化するやつね! 小学生の時習ったわ〜。あたしその授業受けるまでイクラってフルーツだと思ってたの」
「いくら何でもそりゃ無茶苦茶だ」
「ぶどうの親戚だと思ってた」
「デラウェア軍艦巻」
「デラ……なに?」
「忘れて」
「変なの」
「そ、それよりマリー」
「なにー? ラギ」
「かわうそ、なら、海は本当、かな」
「いやー、海もピンキリだよ。綺麗なビーチです、ってパンフレットに書いてあってもゴミだらけ、とかあるし。海の家一軒も無かったりとか」
「川も清めの滝とか言いながら心霊スポットでした、なんてよくある話だよね」
「本当の事なんて世界には何も無いんだよ……」
「何で急に達観した? 哲学者?」


「あーっ、哲学で思い出したーっ、倫理の宿題やってない!」
「え、あれまだ出してなかったの? 先週の宿題じゃなかった?」
「そうなのー。川上先生怒ってるよねえ、うぅ」
「そりゃ怒るでしょうよ。今日絶対やりなよ」
「実は宿題のプリントにジュースこぼしちゃって」
「困った子だなあ全く。乾かした?」
「何とか原型はとどめてる〜。でも出来たもんじゃないよ〜バナナくさい〜」
「そうだマリー」
「どうしたのラギ、もしかして一緒に先生のところ行ってくれるの!?」
「かわかみ、なら、海は悪魔かな」
「ポセイドン?」
「それは海の神じゃない?」
「海の悪魔ってなに? バミューダトライアングル?」
「に、住んでる巨大なイカとかになるんじゃないのかな。クラーケン」
「じゃあさじゃあさ、ラギ」
「はいはい、マリー」
「かわかした、なら、海は借りたのかな?」
「何を?」
「ポセイドン?」
「あ、あれ、川からの借り物だったの。じゃあポセイドンは、川の神様になるって事?」
「川に住んでる神様ってなに?」
「……河童?」
「それな」
「わかるか〜!」


「ポセイドンは河童だったんだね! ひとつ賢くなったぞ〜。タカシに自慢しよーっと」
「河童かあ、本当に居るのかな」
「いるよ、きっといる! じゃあじゃあ、今度水族館で見てみようよ!」
「河童がいる水族館行ったこと無いけど」
「世界で初めて出来るのかもよ、河童がいる水族館」
「ふうん。なら、確かめに行こっか」
「うん!」
「ほら、電車来たから早くシェイク飲んじゃいなよ」
「河童がいたらインスタあげよ〜っと」
「居なくてもあげるクセに」


『次は 川崎、川崎。』

おしまい。

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