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蛇団返報

※この話は一部を除いてフィクションの可能性があります。

私は蛙が苦手だ。
両生類が哺乳類を襲うと聞いた時に驚きと同時に古江が止まらなかった。
爬虫類なら尚更。
しかし傍から見ると蛙は可愛い。
ツチガエル、トノサマガエル、アマガエル。
蛙に色々あるけれど。
この世に一匹!のぴょん吉様も声優含めて未だに好きだ。

ただ亀や蜥蜴、蛙とあのフォルムから羨望の眼差しを向けたくなるエロスは何処と無く
蛇は特別だ。

「あんたを食い殺す」

と思えてならぬ平等な生命の重さを訴えているように思えてならないのだ。

私は蛇とよく出会う。
視力は無いと聞くが鋭い眼差し。
アンモニアの体臭。
そんな蛇をいとも容易く触れるハンサムな先輩がいた。
それはおいといて。
動物バラエティでも江頭のピーピーピーするぞでも覚えた名前は「ブラック・マンバ」

ある朝の日。
近場をサイクリングしていると謎の棒があった。
いや、違う!
あれは蛇だ!
マムシか?
それにしては間が抜けている。
マムシなら人間のいる傍から真っ先に離れる筈だ。
動植物は頭も行動力も優れている。

ならアオダイショウかシマヘビか?ヤマカガシだったら気性が荒いから触れないようにしないと…
自分という人間はかくも愚かな生物で弱った朝の頭では判断が追いつかずにその棒を轢いてしまった。
案の定棒は蛇だった。
轢いた後は急いで逃げていったのがその証拠。
ホースの上に走った感触だけがタイヤから腕へ、そして脳へと伝わった。
近年では蛇が減っているらしいので心配したが、死んだわけではないらしい。
でも大怪我なのは間違いない。

人間にとってはただの蛇かもしれない。
それに自分も含め人間は名も無き小さな虫を潰して生きている。
罪の無い人間はいない。
そう正当化してやる事はやった。

夜の時間帯

我が家には守り主として蛇を奉っている。
神や仏は信じたことなどないが、動植物というのは様々な形で自分を教え導く。

いつも夜は眠れない。
特に今夜は!
初めての金縛りに会っている。
正確には一匹、いや一体の蛇に呑まれようとしている。
獲物を狙う時の狩人もとい狩蛇は確実に死を狙う。
熱帯夜でこの縛られ方は最早呪いだ。
今まで食した命の重みってやつか。
アナコンダに締め付けられて死ぬ蛇学者や外国の子供もこの様に寿命を終えるのか。

もう生きたいと願う程の気力はないが明日は好きなケーキを食べたい。
まさか今日が寿命とはな!
この蛇は守り主なのか?
だとしたら可愛い後輩を轢いた私に怒りを向けているのか?
弱き命を踏みにじった者への罰則か?

数年前にこんな夢を見た事がある。
黒い衣装を纏った女性が握り拳から血を流して唱えていた。

「人は蛇に類似する。
毒牙は科学、鱗は嘘。
骨組みは悪しき交わりとの…」

そこから先はちぎれた古文書のように不明のままだ。

窒息の苦しみに夏の気温。
もう辞めて欲しい。
次は近寄らないから。

次の日の朝は咳き込んでばかりだった。
意識も朦朧としていてね。
休養を取る事にして寝込んでいた。

自分は蛇と縁がある。
身体が武器という生物がクール過ぎるから。

あの夢の続きを書くとすればこうだ。

骨組みは悪しき交わりの不運。

あの夢の女性に逢うしか真相は無理なのだが、どうやら蛇はそこまで鬼ではなかった。
生きて償えという事か。
つくづく自然には分からないことが多い。
散々だが蛇は好き。
だからこそ次はそっとしておこう。

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