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闇ドラ九話:だからあなたも生き抜いて

※全十二話で、五年前に投稿した自作です。

投稿サイトに掲載した作品を処女作と読んでいいのかは分かりませんが、自分の話を描きたくて『私小説』にのめり込んだ作品でもあります。
なるべく掲載当時のままにしておりますが、読みにくいやその時代だから許された描写、表現には修正、加筆等をさせて頂いておりますが基本的に掲載当時のままにしております。

お楽しみ頂ければ幸いです。

あらすじ

  もしあなたが未練を残さずに死ぬことができたとしたら。
そんな生き方を順調満帆とするのなら随分甘い。筋書通りなんてありえない。
でも躓くことを恐れないで。
辛いこともあれば良いこともある。
今はそう思えなくても信じていけるにこしたことはないのかもしれない。


「はい飯。」

  兄が作ってくれただし巻き卵。
私が作った方が美味しいのだけど低血圧の私にとって兄の料理は素直に嬉しい。

「じゃ、行ってくるからな。」

  学ランを翻し学校へ向かう兄を私は見送った。

「あっ、私も学校があるんだ。」
あらゆる準備をして私も学校へ向かう。

  懐かしいな。

「お金を払うことに貴方が拘るなんて珍しいわね。」

  最近彼が無銭で何かに乗ることを躊躇うことが多くなった。
わたしにタダ乗りの良さを教えておいて。
本当に自分勝手な男なんだから。

  でも珍しいだけでイラつきはしなかった。

「生きていたころ当たり前のように金を払ってたあんたが、死んだあとそれをしなくなったってのも変な話だよ。」

「現金なものなのよ。」

「ま、まあ俺に責任があるのはわかってる。」

「自分勝手な旅なんでしょ?払おうとしようがしまいがどうだっていいじゃない。」

  本当に彼の甘さというより若さがなんか愛おしい。

  自殺後、殺人鬼と化したわたしを殺す目的だったのに勝手に旅に同行させた彼。
わたしがまた誰かを殺そうとすれば彼は容赦なく殺すだろう。

  今はどう思っているのだろう。
わたしは幽霊になった後も死のうとしていた。
でも、彼の死してなお生を求めようとする様が自分の弱さや身勝手さを露呈することになったと感じ、わたしもわたしとして死後をどうするか考えることにした。
といっても特に浮かばない。
脳が死んでいるからとかそういうブラックジョークでもない。

  旅で何か見つかるのは生きている者だけの特権なのかしら。
そうでないから彼はわたしを連れてこうしてあてのない旅を続け、今日も罪なき命を襲う存在を討伐する汚れ仕事を行うだろう。

  そうこうしている内に寂れた田舎街に着いた。まさかこの街に戻ってくるなんて。

「何か思うところがありそうだな。」

  本当に勘が鋭い。
「わたし達が住んでいた街よ。」

子供達

▼兄の話

「なあ、お前んちで勉強させてもらってもいいだろ?」

学ランを気崩した少年が俺の家に行きたいと何度も言ってくる。

「俺ら親いないし、たいしたおもてなしできないぞ?」

「そんなのいいじゃんかよ。親がいないほうがきら…いやなんでもない。」

「気を遣わなくていいって。」

  この話題の度に俺は同じことを彼に言う。

身長が高い彼がそいつをたたく。

「一言余計だと伝えようと思ったらちゃんと気付けたな。」

「いってぇ。ならたたくなよ。」

  中学生でこんなに気を遣ってもらうのも正直どうかと思う。
でもしょうがない。
「明日土日だし、泊っていくか?勉強はお前達の塾講師ほど教えられないけど。」

  二人は喜んだ顔でハイタッチする。

「塾講師なんて大学や仕事での愚痴を言ってくる上から目線でうざいやつばかりだから行きたかねえし、そのほうがいい。」

「でもうちの親うざいんだよな。
お前んちに泊まりたいけどどうやって言えばいい?」

「中学生だし、たいした遊びするわけじゃないからうまく言っておけ。」

  了解と二人は返事をし、一緒に帰る。
料理は妹と一緒に作ればいいか。あ、でも妹も泊りだったかな。ならいいか。あいつの方が料理上手いのに。

▼妹の話

  今日も学校が終わる。
小学生の学校生活はなかなか長く感じる。
友達と喋る時間は短いのに。

ランドセルを背負いながらみんなと一緒に帰る。
「今日は私の家に泊まるんだよね?準備とかいい?」

「うちは大丈夫。」

  それぞれが同じ返事だ。わたしだけは「うん。」と答える。

「家事とかお兄さんだけでいいの?」

「全然心配いらないよ。もうこの生活も長いし。」

  空気が悪くなる。
「たまには一緒にいないほうがいいと思う。私も誰かと遊びたいし。」

周りも何事もなかったかのように取り繕う。こういうのに慣れると周りとの違いになかなか苦労する。

  けど、私は私だ。
「なんか甘いもの食べよう。」
そういって帰っていく。

▼タイミングがある

  彼は仕事。
わたしは特になにもない。
たまに彼の仕事を見守ることもあるが辛い時は別行動をすることもある。

「あんた。懐かしいなら周ってもいいんじゃないのか?」

  珍しいことを言う。
「それって未練があるってことでしょ。わたしがそれで何かあったらどうするの?」

  彼は端的に「その時はいつも言っているだろ。」と呟いた。

そうね。

「感傷に浸るくらい自由さ。」

  そういって彼はさっさと依頼場所に向かう。

「心配するだけして後は別行動。勝手ね。」

  懐かしいといってもそれ以上は何もなかった。彼と行動してだいぶ経つからかかつて住んでいた場所に来たというのにそれほど実感が湧かない。

  死んでいるからなのか。
殺人衝動もなにも湧かなくなったからか。

  しばらくこの街をぶらぶらするわたし。
生者は当たり前だがここの死者もわたしには絡まない。
生前と違って死後は全く知らない人間ばかりだった。
忘れただけなのか。
それとも死ぬとあてもなく皆彷徨い続けるからなのか。

  わたしは彼の仕事が終わるまで適当にぶらぶらする。
こうして考えるとまるでゾンビだ。
いつの間にかわたしは家の前に立っていた。
どこだろう。
ここは。
彼の後を着いていったのかと思ったがそれは違うか。
すると一人の学ランを着た生きている少年が明らかにわたしに驚きながら目をむけている。

「何してんだよ。転ぶぞ。」

「お、おう。」

  たまにわたし達が見える生者がいる。原理はよくわからないが。
でももう一人の少年は…
「ついにこの時が来たのね。」

幽霊

▼兄の話

「ねえ。さっき俺観たんだけど。」

おいおい。オカルト話か。

「そういう話あんまり好きじゃないんだけど。」

「さらっと流そうとするなよ。本当にいたんだって。」

  もう一人の友人が彼をたたく。

「見えても見えなくても勉強の邪魔をしない。」

「いてて。
冷めてえな。
俺はそっちが気になって勉強ドコロじゃねえって。」

「うちあんまり新しい家じゃないからなんか気にしてんのか?」

  めっそうもないと彼はジェスチャー。

「塩まいておくよ。」

  俺は台所に向かう。
幽霊か。
そんなもの嘘だ。
いたとしても大したことなんかない。
だいたい出てくる幽霊なんて無名の狂ったやつばかり。
一番会いたい人間や著名人の幽霊を観たという情報がない。

  生きている奴らは勝手なことばかりいって恐怖を煽る。
震災の時だってなんだって。
だから俺にとってどうでもいい。
むしろ今回は勉強や泊りの邪魔だ。
どこの誰だか知らないが俺達の貴重なひと時を邪魔するな。と、もし見えて話せるなら俺は言いたい。

▼妹の話

  友達のお母さんのおやつ作りは大変参考になる。
相変わらず美味しい。
それから私達は勉強についてや彼氏関係など多岐に渡る話題を楽しんだ。

やっぱりみんなといると楽しい。
兄といるのが嫌だと思ったことはないが同姓というのは気が楽だ。
話もだいぶ進んだころ、誰かが音がすると言った。

「え?やだやだそういう話するの?ちょっとタイミング考えてよ。」

「みんな静かにして。」

真剣な彼女の言葉に一同は黙る。
確かに聞こえなくはない。ラップ音?とかいうのだ。
私は彼女にいつもあるのか聞くとそれはないとのこと。
こういうのって本当はた迷惑なことだと思った。空気ぐらい読め。

「まあ別の話をしよう…」私がそう唱えると一人消えている。

「あれ?レイちゃんがいない。どこ?」

「さっきまでいたよね?」

すると部屋の電気が消える。
慌てる一同。
だが落ち着く私にも一同は驚いている様子だ。
「こういうの慣れてるの?」

  恐る恐る聞く友人。

「慣れてるわけじゃないよ。信じていないだけ。」

  それよりも犯罪者がいるのかもしれない。
警察と親に連絡するように私は指示をした。

「なんか今日来てくれてありがとう!」

めちゃめちゃお礼を言われた。

バカ親

  わたしは家の中に吸い込まれるように入る。
懐かしい。
多分わたしが住んでいた家なのだろう。
わたしは中を舐めまわす様にあたりをうろつく。

なんでこんなことをするのかわからない。
一度死んだ者が生きていた頃に戻れることなどないのに。

  なんだか悲しい。
するとさきほどわたしを見たという少年がもう一人の少年を連れてこっちに来る。
別に観られたからといって支障はない。
当然の反応を向こうがしているだけにすぎない。
わたしには関係ない…

「なあ、具体的にどんな幽霊なんだよ。」

  わたしを見た少年にもう一人が尋ねる。
なんだか怖がっているいうより嫌そうだ。

  その少年は一生懸命彼にわたしの特徴を伝えている。
彼のジェスチャーが正確に伝わったのかもう一人の少年はしばらく考えて観えないはずのわたしを見つめる。

「悪霊め。出ていけ。」

  敵意のある声だ。でもこの感じ…

亮二りょうじ!」

  わたしは思わず名前を呼んだ。そうだ。この子は“亮二”

  わたしがこの世に置いてきた大切な存在だ。
わたしが見える少年がわたしの言ったことを通訳する。

「お前の名前を呼んでるよ。」

  すると少年は何かを確信したのか思いっきり塩を投げた。

「出ていけ。クソババア!」

  友がいても躊躇しない生の恨みを聞くことになった。

▼妹の話

  私達は消えた友人を探す。
さっきまで中にいた人間が外にいきなり出るなんてことはまずない。
だが念のためこの家の人達が外を探している。

私達は二手に分かれてこの部屋やリビング、キッチン、トイレ、風呂場などを徹底的に探すことにした。

「オカルトって現実で起こると迷惑でしかないわね。」

「なんでそんなに冷静でいられるの?」

「あ、ごめん。」

  兄の影響かな。
私は“見えちゃう”んだけど。
それだけで特に知識があるわけではない。
だから兄にも黙っている。
とりあえず部屋のどこかにいるはずだ。それとこれはわたしだけでどうにかなることではない予感もした。

おいで…おいで…

何か聞こえる。

おいで…おいで…

やめろ。友を返して!

おいで…おいで…

私にだけ聞こえることを向こうは理解したようだ。

生きているよ…まだね…

脅すつもり?

きて…そうしたら教えてあげる…

いかないと言ったら?

しばらく黙る何かの声。
すると。

“生意気な女の子はぶっ殺しちゃうよ!”

急に黒い幽霊が現れる。

まずい!

  そう思って目を瞑ると辺りには何もなかった。
ただ部屋の中にスーツ姿の青年が立っていた。白い血が滴り落ちるナイフを持って。

こいつもやばい幽霊!!
するとその青年はこちらを振り返らずに去っていく。

  そうするとブレーカーをあげてもつかなかった電気が付き、暗闇からさっきいなくなった友人が現れた。

「ふえ?みんなどうしたの?」

  もう心配したんだからね。と一同が無事を確認してから嬉しそうに彼女に向かう。

  敵なのか味方なのかわからない幽霊。
でも言いそびれたな。お礼を言うの。あんな霊もいるんだ。

▼わたしと長男の話

  クソババアとわたしは罵られた。
わたしが見える少年はびっくりしている。

「おいおい。亮二急にどうした?」

亮二は少年にわたしの言うことを教えて欲しいと頼み、怒鳴ったことを彼に謝った。

「いまさらあんたが何の用だ。」

要はない。
なかったけど今できてしまった。

「わたしもどうしてここに来たのかわからない。」

少年がそう亮二に伝える。

「俺達があれからどんな風に生きてきたかわかってんのか。」

  どうやら友人達の反応を見るに亮二と付き合いが長いようだ。

  長男の亮二、長女の輝美てるみはわたしの死亡当時は小学3年生と幼稚園の年長だった。
旦那が先に死に、わたしが勝手に死んだ後に彼らは親せきを盥回しにされたそうだ。
それでもこの家に住みたいと二人は言ったそうだ。

  両親も親戚もあてにならない中、二人の面倒を見てくれる養子縁組が現れて彼らを育ててくれたそうだ。
施設に入れられるのをずっと抵抗し続け、元居た場所から離れたくなかった。

  そこをなんとかしたいと思える人達がこの地域にいたらしい。
家事や勉強をやることを前提にそのために家賃などを払ってくださったそうだ。

  後はあまり話してくれなかった。
通訳する少年も何も答えないでいる“わたし”と“亮二”の怒りに板挟みになっていて大変そうだ。

「それでも俺達は楽しく暮らしてるよ。
あんたらが生きていた頃とは違ってね。
頼むからもう二度と現れないでくれ。」

  冷たく亮二は言う。
その通りだ。
わたしに何かをいう権利も資格も何もない。

「亮二。詳しいことはなんともいえないけど、言いたいことそれだけでいいのか?」

わたし達は迷った。

「俺達のことなんて何も考えないで死んだ奴なんか親じゃない。」

  その通り。
わたしもここに二人に会いにきたわけじゃない。懐かしい何かに誘われてただ来ただけ。
本当に邪魔な存在。

ただ少年は亮二を気遣う。

「俺が邪魔なら去ろうと思ったけど、亮二は幽霊見えないし聞こえないしなぁ。」

「いいよ。家族水入らずなんかじゃなくて、他人とのやり取りだし。」

「きっついなぁ。」

  わたしは何かが込み上げてきた。
生きていた時なら確実に言葉にできたことなのに。
死ぬと何も思えないのか?
彼に言いたい。
ちゃんと言いたい。
言わなければならないことを。

「亮二。輝美は今はここにいないけど、いたら話したのに。
二人とも立派に育ったのね。
両親の愛情より深い何かで。
その方にお礼を言わなきゃね。
わたしに何か言う必要はない。
ただ、生きていてくれてありがとう。
そしてごめんなさい。」

  やっと出せた。
でも感情がこもったかどうかはわからない。
少年の通訳越しだから余計伝わりにくいかもしれない。
それを少年越しから聞いた亮二は涙を堪えているのがわかった。
少年もこれ以上は何も言わなかった。良い友達もできたのね。

「俺達はこんな苦しみを繰り返さない。もう二度と来ないでくれ。」

  そうね。
わたしも心の準備をして向き合いたかったけど世の中理不尽ね。
「ずっと通訳してくれてありがとうね。ダメな元母親ここで帰る。もう二度と会うことはない。さようなら。そう伝えてもらえる?」
少年は複雑そうな顔をしながらうなづき、亮二に伝える。

▼わたしと長女の話

  ハプニングにあったが無事お泊り会は楽しめた。
なんだかんだ友人達はケロッとしている。
武勇伝ができたとかいっている。
あと私の評価が上がったようだ。

そういうのやめて普通に接してくれるとありがたいのだが。
私は歩いて家に向かう。兄は楽しめているのだろうか。
しばらくするとさっき私を助けてくれた青年の霊がいた。
お礼を言おうとするとどこか懐かしい幽霊が青年の腕に泣き崩れていた。

少し隠れて様子を伺い、会話を聞いた。

「わたし、本当に何もかも失格ね。死んで当然どころか生きる資格もなかった。大切な存在すらも蔑ろにしてた。だから今頃涙が出てきた。どうしてこんな想いが出るのかわからない。
亮二も輝美ももう立派に育っているからわたしなんて…」

輝美?なぜ私の名前が?そう驚いているうちに青年がその霊を平手打ちした。

「どうしてたたくのよ。」

「悪いな。俺はこういうやり方しか知らない。」

「ごめんなさい。」

「それ、もう一人の子供に言ってやれよ。」

青年は私の顔を見る。
怖い。気付かれている。

「あ、さっきは助けてくれてありがとうございます。」

「そういうのはいい。」

  なんか冷たい。
そしてかつての母と思しき霊が私に謝る。

すると青年が「もっと近づけ。」といって促す。

「輝美、大きくなったわね。
さっき亮二にあってきた。
霊が見える友人を通しての会話だったけどお礼とお別れを行ってきたわ。ごめんね。本当にごめんね。」

  私はどうしたらよいかわからなかった。
こんなことどう処理すればよいのか。
小学生の私に。

でも伝えた。

「ありがとう。私はあなたのことを兄から聞いただけだったけど、よく思ってはなかったみたいで。」

  母らしい霊はもう頭も上げず泣いていた。

「私より思うところはあったと思います。
私は知らないだけ。
だからうまく答えられないけれど生んでくれてありがとうございます。」

「こんなこと。幼い子供に言わせる台詞じゃないわね。」

そういって母と青年の霊は去っていった。

帰郷

  わたし達は黙って電車に乗っている。
後で聞くと彼はわたしの子供達のこともあの場所のことも調べはついていたらしい。
わたしを呼ばなかったのはなんとなく察したのだろう。
輝美を助けてくれたについてわたしは彼に初めてお礼を言った。

それからずっとわたしは生前のように涙を流していた。

「生きていても家族のことってわからないんだな。」

吐き捨てるように彼は言った。

そうね。

「ちゃんとあんたに言っておけばよかったか?」

「いい。なんだかんだ話せたから。」

彼はいつものようにだらけたポーズを取る。
ほんと。
仕事が終わったらあとはなんでもいいのね。

もっとちゃんと向き合えると誰しもが思う。
でもそんな準備はできないし、できたとしてもうまくいくかはわからない。
多くの罪を重ねてしまう人間達の関係というのはそうなのかもしれない。

Believer

「輝美、ちゃんと飯食ったか。」

「兄さんこそ。」

  俺達はバタバタしていた。
今の時代、幼い時から忙しい。

  天体観測だ。
小学1年生の時、今は亡き元両親に連れられていって観た星の綺麗さが忘れられず、俺達はいつも誰かと一緒に言っていた。まだ中学生と小学生の俺達兄妹は友人のお兄さんお姉さん達に頼んで星を観に行く。
親がいないと自然と誰かを頼るのか友人や知り合いが多くなる。おかげでなんとか乗り越えられた。
辛い時は星を見ることにしている。
そして今回は天候にも恵まれ、ちゃんと星が観れる。みんな俺達のわがままを聞いてくれてありがとう。
今でも、そしてこれからも両親のことに何か感じることはないだろう。
良い親とかそんなことどうでもいい。
ただ、こうして星を観れることは元両親がいたからだろう。
そういうことだけはお礼をちゃんと言える人間でありたい。でも、死んだ母の霊には友人を前にしても酷いことを言ったかもしれない。
本当はもうちょっとやり取りをしたかったのかもしれない。でもいいんだ。もういい。

「ね、今の観た?流れ星。」
「ああ。いつ観ても綺麗だ。」

愛していたさ 届かぬ思い 解り合えない世界で 生きていく術を手に 傷つき描く愛 消えない嘆き

どこかで 許せる時ってこないかな。

続く

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