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網目状

 我々は捕食される者。

網を張り、獲物を待つ我々の敵は人間と鳥達だ。

私はボスに頼み込んだ。
謎の機材で我々の存在を人間に確認されてから、私のような蜘蛛は数を減らしている。

「糸で絡めぬ天敵あらば、我が匂いを辿り頼むべし。」

そう私の遺伝子に刻まれている情報を頼りにボスと出会い、人間の捉え方を知るのだった。

ボスへの恐怖は話を聞いているうちに薄らいでいった。
種族が数を減らすのは必然であると。
それを人間に対して止められる術は巨大な体躯と猛毒を持つボスでもどうにも出来ない。

そんな弱きなボスをみて失望ではなく、やはりそうかという予定調和が私にとって残念な現実だった。

下手に暴れれば殺されてしまう。
少し前まではいつか見てろよとギラギラしていたものだが…

私は人間一人倒せない無力な蜘蛛でしかないのか?

「おいおい。金なんも持ってねえじゃん。消えろ!」

細身で長身の少年が別の少年に唾を吐き、殴っていた。

同族に対してもあんな行いをするのか。
ボスに頼んでも無意味と悟って地獄で暮らす私と地獄を楽しむあの人間と同類にされるのは癪だ。

小さな命を舐めては困ると思った私は糸を吐き、その長身を捕まえる。

「な、なんだ!こ、こ…」

お前達は蜘蛛の糸の本来の脅威を知らない。
私は捕らえた人間を入念に巻き、牙を突き立て肉を溶かす。
若い人間の味は、語るに及ばず。

そして側で震えてる人間に私は言い放った。

「蜘蛛に近づくな!」

人間は去り、私は危機を乗り越えた。

私は私のやり方で一日を過ごす。
一人でも野蛮な生命体から身を守る為に。

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