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怪談・THE私27

※祟りや呪いでは相手に対する効果は薄い。
まじないはさながら狩猟のようだ。
段取りはただ一つ。

獲物を定めること


酷暑


  暑いなあ。
部屋で一人、明美はうなだれている。
アイスはすっかり平らげてしまった。

  エアコン代も馬鹿に出来ないから都心の中で涼しい物件を選んだのにこれ。

  涼しくなる方法を調べてもコストかかりすぎ。

  そこであるお店から購入した「涼しくなる方法」が記載された壺を買った。

  怪しい宗教の壺ではなくて、「涼みの正体」だなんてデカデカと書かれた商品はなんらかの封印を解く手順を施せば低予算で部屋が冷えるらしい。

  夏限定の悩みだから買うのに迷ったし時間がかかったが面白い商品なので騙されたと思って手順通り封印を解く。

  別に世界が終わるわけではなくこの部屋の夏だけ涼しくなるだけだ。

  まずは部屋を二回左回りで歩く。

  次は右回りで二回。

  最後は氷が入ったコップを部屋の真ん中に置いて文章をとなえるだけ。

異国の地より凍り、離れた者達よ。
今この場で結集し、暖をとったやり口も逆の方法でこの場を冷やせ!

  念の為この手順を動画に残しておいた。

  これで冷えるわけな…え?

  エアコン無しでこの涼しさ。
そして冷え過ぎもしない。

  少し背中に痛みがあったが特に気にはしない。

  それから明美の部屋は夏だけ涼しくなった。

  これで終わりかと思った。

  ある日。
特に何も予定がなかったので前に撮った動画を確認していた。
本当に暇人だと自分でも思っていた。

  すると映像に写る自分の後ろに霊なのか何かが後ろをついて歩いている。

  エスキモーのような服に身を包んで。

  そうか。
だから涼しいのか。
ただ恐怖は感じない。

  あの時思い出した背中の痛みはエスキモーのような人に蚊を叩かれただけだった。

  あまり怖い映像でもなかったのでホームビデオとして残すことにしよう。

  だが背中が気になる。

  鏡に痛みがあったかつての部分を見ると手形がはっきり残っていた。

  叩きすぎでしょ。
しかもまだ残っているとは。

  結局なんの封印を解いたのか分からないのが怖いのだが別にいい。

  この感じだと冬暖かくしてはくれなさそうだな。

  今年の冬をどう乗り越えるのかを考える明美だった。

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