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闇ドラ二話:自傷と自慰

※投稿サイトに掲載した作品を処女作と読んでいいのかは分かりませんが、自分の話を描きたくて『私小説』にのめり込んだ作品でもあります。

全十二話です。

なるべく掲載当時のままにしておりますが、読みにくい表現等は修正、加筆等をさせて頂いております。

お楽しみ頂ければ幸いです。

あらすじ

これは生き様。
目に視えることが命とは限らないから。

俺視点

「気持ちいいな。人を殺すのって。」

  ちーっす。
俺は今なんもしてない。
つーか生きてなーい。

  だからさ、特に言うことねーんだよ。
でもさ、''倫理観''なんてくだらねえって思わない?

  決めたところでみんな戦争しちまうじゃねーか。
テキトーに点数つけてテキトーに人付き合いしてテキトーに結婚して「あたし幸せ?」「俺もだよ。」「あたしも。」「僕も。」「わしも。」「私も。」

ウンザリなんだよ!!

  気持ち悪い御託と一体感得て何が人生だ!

  出来レースが上手くいかないくらいで愚痴るし、くだらねえことで自己満足感じてボケッと生きていざとなったら戦争起こしてクソジジイ、クソババアのいいなりになるだけだろ!

  日本だけじゃねえ。信仰宗教と変わらねえ神だとかいう妄想を信じて争い以外なんか得られたかよ。
どいつもこいつも

「「馬鹿ばっか。」」

あ?なにハモって…いや、俺は誰にも見られてないか。

「ねえ。ねえって。」

  俺に言ってんのかわからない。
こういうの、死んでも生きてる時と変わらない感覚で辛い。

「幽霊…って呼べばいい?」

  俺のことかよ。
やべーな。
視える奴だ。
この子を不思議ちゃんにさせるわけにいかねーから俺は走りながらそいつに指示する。

「俺と話したかったら黙ってついてこいよ。生きてる奴らに変な目で見られないようにな。絶対だぞ!」

  大声で叫ぶのにもなぜか気を遣っちまう。
幽霊なのに。
でもそいつは言う通り付いて来てくれた。

  俺達…正確にはそいつ一人だけど公園のベンチに座っていた。

クソっ。
今気がついたらこいつ女じゃねーか。
異性なうえに幽霊って気まずいな。

「幽霊にリードしてもらえるかと思ったのにさっきより全然喋れてないじゃん。」

  うるせえ。
生きてる奴にはわからねえ。

「全部聞こえてるよ。」

「おいまじかよ。」

やっぱ女の子は鋭いな。

「いいな。生きてる時より楽しそうな感じしてるし。」

  なんか重いな。
見た目的に俺と死んだ時と同い年か近くか。

「そりゃ幽霊にはなんもしがらみねえし金も法もねえから楽すぎてたまらねえよ。」

  女の子は俺の言葉を聞いて薄ら笑みを浮かべた。

  笑い慣れてる感じはするがどこか不器用だ。
要するに無理矢理。
アダルトチルドレンって奴かな。
俺と同じ…やべー、思い出す必要はなかったな。

「あたしも死にたいな。」

「間に受けんなって。
死んでもたいして変わらねーよ。
生きることに希望を持つ。
生きてたら当然の感覚。

  死んだらその感覚からどうしたら何も感じずにすむかの模索をしないといけねー。
まあ、独りでいても寂しくないけどな。」

  俺は喋り過ぎたと場の空気で知った。
悪いな。
死ぬと無責任になるんだ。

  けど女の子は噛み締めている。
俺なんかの言葉で。

そして女の子は笑った。

「死んで説得力はあるけど若すぎてウケる。
見た目はあたしと同じくらいだけどいつ死んだかわからないからなんか…はっはっはっは。」

  さりげなく見えたこの子のリスカ痕。
それも気にならないくらい女の子は笑ってる。

「霊が視えるって思ったより楽しい。」

「それまともじゃねーよ。」

「まともなんてつまらないじゃん。」

「そーだけどさ。」

  少しずつ打ち解けてくる俺達。
俺達は互いに自分達のことを話した。
俺は親に無理矢理勉強させられ、好きだった飛行機のフィギュアをゴミとして捨てられ、中学受験で失敗して公立の中学にいってグレ、それも意味が無くなってきたし、先が見えないからドアノブで首吊って死んだことを話す。

  女の子はワンパターンとかいって笑った。
俺にとっちゃ大事な一生だったけどそんなもんだよな。

「あたしは何となくで生きてなにもわからなくて。
子供のうちから将来設計建てないと詰む時代だからなんもないあたしは死んだほうがいいんだよ。」

  返答に困るな。
あっ、でも俺なら出せるじゃん。

「殺してやろうか?」

ストレート過ぎたか。

「ならお願い。」

話が早いなあ。

「悪い。
俺、不意打ちばかりだったからさ。
頼まれるの慣れてないんだ。」

「どうやって殺すの?」

  死んでる俺が言うのもなんだけど、この子の心は死んでるのか?

「テレビやネット、物語みたいに取り憑いて殺すわけじゃねーからさ。
一つ言えるのはちょーいてーぞ。」

「なら急所をうまく打てる?」

おいおいおいおいおいこいつこえーよ。
久々だ。
生きてる人間に恐怖したの。

「適確な殺し方か…。悪い。他の幽霊にあたってくれ。」

すると彼女は俺にだきついた。

「君以外じゃ嫌。
君以外の幽霊は中々見つからないし殺してくれない!
君の殺し方がいいから選んだ!」

  死ぬと温もりを感じないと言うけど嘘こけ。
熱いくらい効く。
でもそれだけだ。
俺は頼まれて殺すのは性に合わないのかもな。
悲しませて悪い。
望んだ殺し方が俺にはできない。

  俺は静かにその子の手を払った。

「期待に応えられなくて悪い。」

女の子は黙って絶望の顔の中、俺に背を向けた。

いまだ

あ、あれ…いしきが…

サイドチェンジ

  わたしは彼の仕事を初めて見た。
生きている人間と死んだ人間が話していることも“わたし”は初めて見たが彼は何も思わないのか?
ただわたしに
「なにか動きがあったら知らせろ。」とだけ言って彼らのやりとりを真剣に眺めていた。

「貴重な異文化交流だけどあなたは何度も見たんじゃないの?」

  不謹慎かもしれないが死んでいるのだからこれくらいのやり取りは大目に見てもらおう。
すると彼が少しだけ笑った様な顔で呟く。

「あんたにとってもいい勉強になる。」

「そりゃそうだけど…」

といった矢先に男の子が背を向けた女の子に攻撃を仕掛けようとした。

  わたしも人を殺す構えを取る。
しかし彼は男の子の首をナイフで綺麗に割く。
一瞬で男の子から粉のような血液?か何かが飛び散り、消えていった。

  女の子も振り向いて驚いていた。
彼はナイフをハンカチで拭いて捨てる。
そして女の子に鬼気迫る顔つきで接近し言い放った。

「死者と二度と話すな。」

  女の子は膝から崩れて涙した。

「やっと死ねるのに…好きな人に殺してもらえるのに…」

  どうして人は幸せになれないのだろう。
あたしもそうだった。
彼は女の子の胸ぐらを掴んだ。

「そこまでしなくても!」とわたしは止めようとした。

「いいか!何を感じても捉えてもいい!生きろ!」

  そう言って彼は泣き崩れる彼女を投げ飛ばし、わたしに「帰るぞ。」といって足早に通り過ぎた。

「ねえ。勉強ってそういうこと?」

  誰もいない電車の車両に座るわたしたち。当然無賃乗車キセルだ。

「わたしも誰かを殺そうとしたら、あなたにああやって殺されるんだ。」

  彼は拳で頬をつき、だらしなぬポーズを取っていた。

「自己中に周るって言ったろ。俺の“エゴ”の一つだ。」

  そう言われると何も言えない。

「あの女の子。あなたの言葉を聞くと思う?」

「自殺願望がある人間がわざわざ霊に殺してくれなんてこのご時勢ありえるか?」

「あり得たからああなったんじゃないの?」

「自殺願望があるのに“こっち”の連中に殺しを頼む神経があるならどこへでもやってける。」

「あなたが殺した男の子。
わたしと同類なのになんで助けなかったの?」

「いったろ。俺はあんたらみたいなのを殺すって。」

「生きてる人間を守る。それが貴方の目的?」

  そういったあとにわたしに詰め寄り、急に彼の雰囲気が変わる。

「生を守り、死を殺す。
無法者には無法者だ。」

「何があったの?それならわたしを生かす理由ないじゃない。」

「次、怪しい動きをしたらあんたを殺す。」

「本当に自己中。」

  静寂に包まれる夜の車両。
死ぬと狂いすぎていて感覚がわからなくなる。

  それなのに生きている時と同じ感覚が抜けない。
でも改めてこれ以上会話が弾まないのはやはり死んでいるからなのだろう。

  ただ、死んで自分の“生き方”を確立する者もいれば、生きていても自分の生き方を“見失う”者もいる。死んでも死にきれないのね。

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