短編ホラー小説 見逃すわけにはいかない
あらすじ
子供達による目撃例が相次いでいるユーレイ目撃情報。
もちろんこのユーレイは人工的なもの。
格闘技術と喧嘩の強さがある青年:六輔はユーレイから子供達を守る。
何がユーレイだ。
今更そんなものを信じる輩がいることに驚くよ。
この世が地獄、あの世は存在しない。
俺たち人間はいつの時代も大馬鹿でそして完全に憎めないぐらいには無関心だ。
そうだ。
ユーレイなんているはずが、ない!!
「六輔の後ろにみ え た。」
「おいおい。
怖いこと言うなよ。
子供でも言っていいことと悪いことはあるんだよ。」
一緒にいる男の子はまだ小さな子供だが本当に霊感 なんてあるのか?
そういえば俺がガキの頃も何かに反応していたらしいが。
「ムシ!!!」
飛んでいたガガンボを笑いながら指さして逃げる俺をからかっただけだった。
「いやあガガンボは何もしないムシだから人とか天敵のいない場所に逃がさないと。」
普段虫は触れないが二十二といっても大人なので
優しくガガンボを安全な場所へ逃がした。
せめて今の子供達には生きづらさを押し付けないようにちゃんと振る舞わないと。
とはいっても、俺が歩んだ「ちゃんと」なんて誰にも言えないぐらい荒んでいるのだが。
***
子供達の間で噂になっている「ユーレイ」を最初は適当に聞いていた。
別に子供達だから適当に聞いていたわけじゃない。
フェイクニュースに夢中になる年頃だからか真面目に受け取るわけにはいかなかった。
それに人間の犯罪者かもしれないと子供達の周囲を常に確認していた。
実の親や育ての親とは違うが単純に心配で神経をすり減らしていた。
高校時代にちょっと人には言えない恋愛をしていたころもスリルだけを求めすぎて死にかけて願望を保留にした。
歳下の弟妹がいる友人が多くてその関連でトラブルを解決したらいつの間にかボディガードを頼まれて今に至る。
実用的な鍛え方で日常にとけこめば鍛えていても不審には思われない。
陰に生きる人生を否定させない為にも
子供達にどのような人生でも存在は揺るがないことをどうしても伝えたかった。
だから「ユーレイ」について念入りに調べた。
途中で怪しい連中を突き止めて警察に突き出したりもしたが明確な証拠はなかった。
幽霊はいないがユーレイはいるかもしれない。
本当は誰かに頼もうか考えたが払う金はあっては引き受ける奴なんていない。
海外の知り合いですらそんなことを引き受けるわけがなかった。
よくホラーを見ていると誰も怪異を攻撃しないから見ていてイライラしていたが例え怪しくても存在がグレーなら追求したくもなるものなのか。
「これも人間ゆえなのか。」
子供達を守るためにはやく見つけないと。
「あら。
ずいぶんと苦労して探してくれてるのねえ!!!」
周りに人間はいない。
幻聴か?
いや、それなら耳には聞こえてこない。
周囲の人間が離れているのをさっするに
「こんな時に現れてごめんなさいねえ!!」
そこかっ!!
俺の拳はとっくに丸まって標的を確実に貫く。
「前時代的な幽霊をモデルにしたホログラムって、ありそうでなかったじゃない?
それにマダムを殴るなんて品がないわねえ!!」
どうせ性別は変えられるだろう!
しかし話が通じなさそうな喋り方をするホログラムだ。
誰がなんのためにこんなことを!
「なら殴るのはなしだ。
あんたのホログラムを出してるやつの情報を言え。
ってそれで言ってくれるのなら苦労はしないが。」
ホログラムはウンウンと頷いてシラを切る。
主がわかり次第対処を考えているとドローンらしき物体を確認。
たまたま空を見て確認したらやはりあったか。
人間の方が怖いな。
そして発見した子供達には頭が上がらない。
しかも誰も怖がっていなかった。
ホログラムの攻撃はこちらには通じなかった。
さっき殴った時に感触はなく、ホログラムがこちらを掴もうと反射行動をしたときもこちらはさわられなかった。
ドローンまでの距離はビル伝いでおよそ1kmか。
攻撃を誘ってる。
変態野郎め!!
だが殴らずに突き出してやろう。
「あらあ?ドローンに気がついたのはいいけれどこの周辺をどうやって登るのかしらあ?」
高校時代に過激な動画配信者の真似をした悪友から檻にいれられ身体を吊るされた時に、かつて読んだ表に出ない歴史にあった縄抜けを応用して一人で脱出し、悪友達を気絶させて反省させたことがある。
その時に覚えた運動をパルクールの容量でビルを登ればすぐにドローンを捕まえられ主がいるかもしれないビルへとガラスを割って侵入した。
流石に後のことまで考えられなかったのだがそこにいたのはミイラ化した人間に何らかのケーブル
がささっていて不気味に光るモニターに先程のホログラムのマダムが笑っていた。
「荒業もいいところだねえ。
けれど、もう私達死んでるの。
場所もつきとめられたしずいぶんと身体能力が高い若者を敵にまわして頭が痛い。
ホログラムだって痛覚はあるんだから偏見は持たないで。」
それだけいってホログラムはモニター周りの電源をシャットダウンし、電線へ青白く伝って逃げていった。
それからこの場所を警察に話すことになり、ミイラ化した死体は回収され、モニターの寿命はとっくに切れていたらしく、ドローンも死体が持ち主ではなかったらしい。
ガラスを割って侵入したことは謝っておいたが「子供達がこのビル近辺を怪しんでいた。」
とあながち間違いではない嘘を混ぜながら切り抜いた。
「六輔、もうあのオバサンいないの?」
「電線を渡っていったと思うよ。」
「なんでそんな返事が出るの?まさか見たことある?」
「さあ。
最近パルクールを初めて転んでさ。
その時になんか見たのかもな。」
「変なの。」
子供をおんぶして日常的な会話をする。
もう怪しげなドローンやホログラムは見つからなかった。
だがまた連中はこちらを狙う可能性はある。
せめて今度こそ怪奇現象を終わらせないと。
俺の目が黒い内に。
終
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