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『十三機兵防衛圏』感想(ネタバレなし)ーこれは10年に一度の怪作だー

突然だかSFは好きか?巨大ロボットVS怪獣は?タイムトラベルは?異星人とのコンタクトは?黒服にサングラスの男たちは?寝坊してパンをくわえて走る女子高生は?胸の大きい謎めいた保健室の先生は?・・・・ひとつでも当てはまったらまず『十三機兵防衛圏』の体験版をダウンロードしに行こう!

『十三機兵防衛圏』は「ヴァニラウェア」開発・「ATLAS」販売による「ドラマチックアドベンチャー」。ざっくりとストーリーを説明すると「13人の少年少女達が「機兵」と呼ばれる巨大ロボットに乗って、人類の存亡をかけて怪獣と戦う」というお話。13人それぞれのパートに分かれ機兵に乗るまでの経緯が描かれる「追想編」(アドベンチャー)、機兵を操作して攻めてくる怪獣と戦う「崩壊編」(リアルタイムシュミレーション)、そして「追想編」と「崩壊編」で出てくる様々なワードの解説がまとまった「究明編」の大きく3つのモードに分かれている。

異常なまでの作り込みと無限に広がっていくシナリオが描かれる「追想編」

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「追想編」は冒頭で説明した通り13人それぞれの機兵に乗るまでの物語が描かれるアドベンチャーパート。アドベンチャーゲームに良くある立ち絵式のアニメ調なグラフィックではなく、温かみのある少女マンガのようなテイストが特徴。

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やや狭めの教室のシーンを見てみると全体的な動きは少ないものの「窓から差し込む光」や「机に突っ伏してたり、何人かで遊んでいるクラスメイト」など「動いていて当たり前の物」がよく見ると微妙に動いていて物凄くリアルに描かれている。

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一方で開けた繁華街のシーンでは「行き交う人々」や「通りかかる車」など全体的な動きが多い。しかしながらそれぞれの動きはしっかりと管理されており違和感なく動いている。

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全体を通して基本的には2Dで描かれているものの、「右から左に移動すると手前や奥にある物が遅れて動いていく」(上記の画像であれば手前に見えるバケツや水道などがそれに該当する)ことや「手前から奥に移動することが可能、かつその度合いがシーンによってしっかりと変化している」(教室のシーンであれば、廊下側の机から窓側まで移動することができる)ことで2Dながらもしっかりと空間の立体感を感じることができた。

各キャラのモーションにも一切の妥協はなく、立ち振舞や歩き方、ちょっとした仕草もしっかりと描き分けられており気合の入りようを感じとれた。

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シナリオ面では主要な登場人物が「13人」とやや多いように感じるが、スケバン女子にリーゼント頭、宇宙人大好きオカルトマニアなブルマっ娘やら包帯ぐるぐる巻のミステリアスな先輩や学帽を被って昭和風な物言いをする少年、焼きそばパンが好物な大日本帝国軍人などなど誰も彼もが一癖も二癖もあり進めていけば自然と覚えてしまうのであまり心配しなくてもいい。

それぞれの物語は10分~20分で終わる短いパートが複数ある構成をしており、一つのエピソードが終わった時点で同じキャラを更に進めるのか違うキャラのエピソードを進めるかを選ぶことができ一気に進めるも良し全員を均等に進めるも良しという感じで、ある程度自由に進めることができる。(本当に重要な部分は「〇〇の□□をクリアで開放」といったようにロックされるので安心)

基本的には1985年がベースの話ではあるが、キャラによっては過去だったり未来だったりする上に物語の進行と平行して80年代から現代に至るまでに存在するありとあらゆるSFの要素がこれでもかというほど絡んでくる。中盤辺りまでは風呂敷が広がりっぱなしで正直ちゃんと完結するのかと不安になるくらいだった。とはいえむやみやたらに風呂敷を広げていくわけではなく、一つ一つの短いエピソードの中で「物語の進行」「掲示された謎の解決」「新たな謎の掲示」の3要素のバランスが非常に良く取れてており、毎度毎度想像の斜め上を行く「新たな謎の掲示」には驚かされっぱなしだった。

追想編自体はあくまでの過去の話であるためルート分岐等は無く言ってしまえば一本道である。だが崩壊編へ至るまでの道程の内容には13人の登場人物は勿論それ意外のサブキャラも含めてとても一言では言い合わせない人間ドラマがあり一体全体どうやったらこんな話を思いつくのかハッキリ言って狂気としか思えない。インタビュー等でも語っていたが本当にこんな内容のゲームが世に出たのは奇跡としか言いようが無いだろう。

あらゆる兵装を使いこなし襲いくる怪獣に立ち向かえ!「崩壊編」

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「崩壊編」は「追想編」とはうって変わってリアルタイムシュミレーションがベースのバトルパート。キャラごとに割り当てられた機兵に搭載された様々な兵装を使いこなし襲ってくる怪獣を倒していくのが目的となる。13人の内最大6人を選び攻撃側、残ったキャラが守備側となり攻撃側のキャラを操作して戦っていく。

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機兵には近接特化や遠距離型、ハイブリッド型やサポート等全部で4つのタイプがある。近接をメインに据えてガンガン怪獣を殴って倒したり、遠距離型を強化して板野サーカスばりにミサイルをバンバン飛ばして倒すこともできる。他にもロマン砲のようなレールガンや自動で敵を攻撃してくれる砲台など、数多のロボット物で見たことがある多彩な兵装が用意されている。一部ミッションや連続出撃制限等はあるが基本的に出撃メンバーは自由に選べるのでぜひお気に入りのタイプ・兵装を見つけて戦うといいだろ。

『地球防衛軍』のように3Dであるわけではなく、どちらかといえばレーダーマップのような見た目で一見すると地味に見えるが「怪獣を殴った時の打撃音」「ミサイルを大量に撃った時の射撃音」そして「怪獣を倒した時の破壊音」などどれも効果音がとても気持ちいいように絶妙に調整されておりしっかりと戦闘を楽しむことができた

迷ったらここを見よう!ゲーム内Wiki「究明編」

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「究明編」にはミステリーファイルとイベントアーカイブの2つの機能がある。

「ミステリーファイル」はいわゆるゲーム内wikiのようなもので「追想編」で開放された用語や「崩壊編」で入手できるミステリーポイントを使いロックされた項目をアンロックして読むことができる。登場人物については勿論のこと、機兵の兵装や怪獣、食べ物や時代背景を表すちょっとした小物などかなり多くの情報が載っている

追想編では専門用語や固有名詞も多く出てくるため最初のうちは混乱しがちだが、いつでもミステリーファイルを見ることができるので安心だ。また、追想編の進行度が上がっていくに応じてミステリーファイルも追記されていくので一つのエピソードが終わったら更新・追加された項目を読みに行くとより理解が深まるだろう。実際にプレイしている最中は何度お世話になったか分からない。

「イベントアーカイブ」は追想編の様々なシーンがまとまった物で、キャラ別で時系列順に並んでいるので追想編を進めながら時系列に混乱したらここを見に来るといいだろう。

まとめ

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2000年代を代表するSFアドベンチャーと言えば『Ever17』や『STEINS;GATE』が有名だろう。では2010年代はといえばそれはもちろん『十三機兵防衛圏』だ。作り込まれたグラフィックと13人それぞれの視点で描かれるあらゆるSF要素をつめこんだ濃厚な人間ドラマ、こんな作品は10年に一度と言っても差し支え無いだろう。本作を世に生み出してくれたヴァニラウェアとATLASには本当に称賛を贈りたい。

おまけ

「プレミアムボックス」についてきた十郎が乗る第二世代型十三番目機兵のペーパークラフト。これがまた大変で一日2,3時間くらい作業して完成まで3週間ほどかかった。Twitterで検索しても数人しか完成した写真を上げていないのだが、この大きさは中々の物で(ペーパークラフトのくせに腰と両腕が稼働するというシロモノ)プレミアムボックスを買ったまま組まずに寝かせている人がいれば少しずつでもいいので頑張って完成させてほしいと思う。

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