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「シン・エヴァンゲリオン劇場版」感想(ネタバレあり)-TV版、そして旧劇、その先の本当のエヴァの終わり-

約2時間半の上映が終わり、終劇の文字が出て劇場内が明るくなった時自分が抱いた率直な感想は「エヴァ終わっちまった・・・」だった。

思い返して見れば自分がエヴァにハマったのは、2011年くらいに金曜ロードショーでやっていた新劇場版:破を見たことがキッカケだった。それ以前にもエヴァという作品は知っていたものの、実際に見たのはその時が初めてだった。使徒という独特な形状をした敵や、ロボットというよりは人間に近い形をしたエヴァが都市のビルや道路をボコボコにしながらも世界を守るために戦う姿は他のロボット作品とは一線を画する表現でとても印象に残ったのを覚えている。

その後95年~96年に放送されていたTV版や、現在では旧劇場版と呼ばれる『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生(Death and Rebirth)』と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』も見てすっかりエヴァにハマってしまった。余談ではあるが自分は97年生まれのわりに、90年代のセル画のあの独特な雰囲気のあるアニメが大好きで(作品名を出すとふしぎの海のナディアやSerial experiments lain等)、そういった表現手法が詰め込まれたエヴァにハマるのはある意味必然だったのかもしれない。

やや前置きが長くなってしまったが、ここからシン・エヴァンゲリオンの感想に入っていく。表題に書いた通りネタバレ全開で行くので見てない人やこれから見る予定の人は今すぐブラウザバックして映画館に駆け込むことをオススメする。

※まだ1回見ただけなので、独自ワードの認識が違っていたり細かいシーンが前後しているかもしれませんがご容赦ください。

凱旋門を拠点にフランス復活をかけて戦うアバン1、赤くなった街を彷徨う3人とOPクレジットのアバン2

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東宝や東映のロゴが出る場面から鼻歌が入りそのまま独自改造された8号機で戦っていく、「冒頭から大活躍だなマリ」という印象。冒頭のマリの戦闘といえば新劇場版:破の仮設5号機VS第5使徒のシーンを思い出しつつも、敵の形状的には第6使徒のヤシマ作戦の方が近いだろうか。0706作戦で最初にこのシーンが公開された時は「コア化した街を復活させる」という展開に「そう来たか!」と思ったものである。

続いて赤く染まった街を失語症になったシンジを引っ張りながら進むアスカとやや遅れて後ろをついていく黒ナミのOPクレジット。ここは2018年に日本アニメーター見本市で公開された「until You come to me.」の一部で指していたシーンなのかなと。

トウジやケンスケ、委員長と再会するAパート

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冒頭のOPクレジット直後にいきなりこれを持ってくるのかという感じ。
Q時点じゃ生死不明だったので、みんな生きてて嬉しかった反面ちゃんと大人になっていてやっぱりこの辺はシンジやアスカ達とは違うんだなと。
トウジが委員長と結婚していて子供まで居たのは、TV版や貞元エヴァ版の彼の運命を考えると委員長と結ばれて本当に良かったなぁと思う。
からの生き残った人々の昭和風な生活様式と、おばちゃんメンツと一緒に慣れない畑仕事をこなしたり一緒にお風呂に入ったり電車の下に居る猫の相手をしたりする黒ナミの日常パート。

次第に感情が豊かになって行き可愛くなる黒ナミや大災害を生き残りたくましく生きる第3村の人たちを見て思わず、「あれ?これエヴァンゲリオンだよな?ALWAYS 三丁目の夕日じゃないよな?」と思ってしまった。世界崩壊後のシン・エヴァで、こんなほのぼのした日常パートがみれるなんて誰が想像できただろうか。

少し距離を置いた所で生活しているアスカとケンスケ。中学生当時はミリタリーオタクだった彼が持ち前の知識で大災害を生き延び随分たくましくなり、アスカからは「ケンケン」なんてあだ名で呼ばれるような関係にいたのは年上の男性(見た目的に)という点で少し加持さんと近い部分を感じた。

一方でシンジはといえば変わらず失語症のままで、みんなが食卓を囲んでワイワイしていても隅っこでうずくまっている。アスカの裸を見てもDSSチョーカーにしか反応しないというのは、旧劇場版の"例のシーン"との対比だろうか。そんなシンジに嫌気が指したアスカは無理くりレーションを食わせる、このシーンは非常にリアルな動きを描いており強く印象に残った。

その後シンジは家出してしまいネルフの施設後に閉じこもってしまう。そこへお見舞いという形で訪れる黒ナミ。感情が豊かになっていく黒ナミと閉じこもったシンジ、ここはQ時点での二人の関係性とは真逆になっているのが印象的。最終的にレーションを貪り食っている所を見ると、シンジの内面でも思うことがありある種吹っ切れたのかなと。

吹っ切れたシンジはケンスケとドライブに出かける。着いた先にあったのは禍々しい見た目をした相補性L結界浄化無効阻止装置とハイカイするインフィニティのなりそこない。ここで第3村は決して平和な世界ではなく、崩壊した世界のほんの一部に過ぎないのだと認識させられる。そして合わせたい人が居ると言われ出会ったのは「加持 リョウジ」と名乗る少年。帰り道の車内でケンスケの口から加持さんは亡くなったと告げられる。破以降トウジ達と同様に生死不明だったのがついに明言されてしまったかと最初は思った。ミサトさんと籍を入れて子供まで居た点については、TV版でも付き合っているような描写はあったわけだし同じような流れなのではないだろうか。

立ち直ったシンジにS-DATを手渡した黒ナミは生体活動の限界を迎え、パシャっとLCL化してしまう。今思い返してみれば完全にEoEと同じ演出であり後半の展開を指し示す物だったのかもれない。

ヴィレに戻るシンジと本来の目的が明かされるBパート

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シンジがヴンダーに戻り隔離される裏で語られるのはヴィレ本来の目的。それは人類補完計画で巻き込まれてしまう人類以外の様々な種族を独自に保管、大気圏外に放出し補完計画発動後の地球に再び戻すこと。ヴンダーは文字通り方舟だったわけだ。そしてヴィレの設立やこの種族保管の中心人物、更にはニアサードインパクトを止めたのが他ならぬ加持さんだったことが明かされる。おいおい加持さん大活躍じゃないかと。

ほんの数コマではあるがここで初めて新劇場版:破のニアサードインパクト発動後のシーンが描かれる。加持さんからミサトさんへ短く一言「葛城。達者でな」と。この一言にどれだけの重さがあったのかは計り知れない。お腹に子供が居たから自分は残ったと語るミサトさん。Qではまるで別人のようになってしまっていたが、ここらへん辺りから少しづつ元のミサトさんの雰囲気を感じるようになっていったように思う。

ネルフとの対決、決意するシンジと立ちはだかるミドリとサクラ、Cパート

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セカンドインパクトの爆心地に向かったネルフ、そして大気圏突入し後を追うヴンダー。道中ヴンダーの同型艦である冬月先生が操作するネルフ側のNHGシリーズと戦闘を行うことになる。

自分は昔からこういった船、特に空中戦艦が好きで例えばラピュタのタイガーモス号や、ナディアの(N-)ノーチラス号などである。状況に応じて艦長が指示を飛ばし船員が砲台を動かし巨大な音をたてて発砲する。そんな演出が大好きな自分はこのヴンダーVS同型艦のシーンはとても見応えがあり満足だった。

襲い来る大量のネルフ側のエヴァを迎撃しながら13号機を目指すアスカとマリ。道中に二人で手を延ばしてATフィールドを出すシーンがあったが、Qにあった最初のシンエヴァの予告で出たが結局本編には登場しなかった「8+2号機」を意識したシーンだったりするのかなと思った。

13号機VS2号機はアスカの右目に封印された使徒の力を使い覚醒した初号機と似たような状態にまでなるも、それが本当の目的だったため13号機に取り込まれてしまう。今回のアスカが使徒に取り込まれる際に出てくる"もうひとりアスカ(オリジナルのアスカ)"が誰なのかというのは明言されてはいないが、個人的にはTV版や旧劇場版に登場した「惣流」の方のアスカだったのではないかと思っている。

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13号機を再起動させたゲンドウはヴンダーの甲板に降り立ち、ヴンダーの中に取り込まれていた初号機を奪取する。ここでリツコさんが銃を撃ち、ゲンドウのバイザーを破壊する。現在のリツコがTV版や旧劇の記憶を受け継いでいるわけではないが、ゲンドウとの愛人関係にあったリツコさんが撃つというのは中々納得できる。そしてバイザーが外れたゲンドウはネブカドネザルの鍵を使い既に人ならざる者になっていたことが判明する。銃撃で飛び散った自分の脳みそ的な物を拾うシーンは単純にグロく「人では無い者」という強い印象を受けた。

ゲンドウが初号機を持ち去った後、シンジは再び初号機に乗り父ゲンドウと対峙する覚悟をするがその前にミドリが立ちはだかる。自分の両親を殺したニアサードインパクトを起こした張本人をまたエヴァに乗せるなんてありえないと。そこに現れたのは同じように弟達をニアサーで殺されたトウジの妹サクラ、だが自分たちを救ってくれたのもまたシンジであると錯乱し発砲してしまう。ここでミサトさんが銃撃を庇うというのも後半の展開を考えるとエモい。そんなサクラを見て、「いいよ、サクラ。明日を生きることだけを考えよう」と言うミドリ。新劇場版Qからの新キャラである二人がここまでの出番があるとは思っておらず、ミドリのセリフも相まって印象に残るシーンだった。同じように身内を殺された経験があるサクラの言葉だからこそ、ミドリの心に強く響いたのかなと。

精神世界でゲンドウと対峙するシンジ、Dパート

プラス・フォー・イン・ワン状態になった8号機に乗って初号機の元へと送り出されるシンジ。エヴァーオップファータイプの力を取り込む過程でマリの正体も若干ではあるが明かされる、イスカリオテのマリアと。ゲンドウやユイの同級生というのは貞元エヴァ版では先んじて明かされていたのである意味予想通りではあったが、明言されたことは大きい。

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もつれ合いながらゴルゴダオブジェクトの中へ入っていく13号機と初号機、そしてゲンドウとシンジ。人の身では認識できない世界のため、自分達の記憶を元に再構成された世界となると語るゲンドウ。本予告にある13号機と初号機が戦っているシーンは冒頭のフランスを復活させる展開から予想して、第3新東京市を復元させて戦うのかと思っていたのでこの展開はいささか予想外だった。精巧に作られては居るがちょっとした衝撃で倒れるビルや、実はシートに描かれただけの背景といういかにもな特撮っぽさは庵野監督の特撮好きを知っていれば思わず笑ってしまう。その後の空き缶とかで散らかった部屋や学校の教室で戦うというのもまた然りだ。様々な感想を見ていると「CGがしょぼい」「こんな物なのか」という意見も多々見られるが"あえてちゃっちく見せている演出"だろうと個人的には思っている。

そして始まってしまうアディショナル・インパクト。張り付けのリリスが巨大化し足や翼が生え、仮面が外れて綾波の顔が見えるこの一連の展開は『Air/まごころを、君に』と全く同じであり「やはりエヴァの終わりはここへ向かってしまうのか」とバッドエンドを一瞬覚悟した。旧劇は"良くも悪くもここまでだった"、だが今回はあの時とは違いロンギヌスでも無くカシウスでも無い3本目の槍があり更に前の世界には居なかったマリが居る。

他のクルーを降ろし艦長として一人残り完成した3本目の槍を届ける任を負うミサトさん。ここのシーンはふしぎの海のナディアを見たことがあればネモ船長の最後のシーンを想起させるだろう。まとめていた髪をほどき、いつものセミロングに戻り「やっぱり旧式の反動推進型エンジンね!」と意気揚々に叫ぶミサトさん。Qでシンジに「あなたはもう、何もしないで」と冷たく言い放った姿はどこにもなく序や破の頃のミサトさんに戻っていた。母親としての贖罪とかそういうのは正直どうでもよく、やっぱりミサトさんはミサトさんだったことがとにかく嬉しかった。(巨大綾波の手に阻まれながらも進んでいくシーンは「行っけええええええ!ここで終わらせるなぁああ!」と心の中で応援していた。)

3本目の槍を受け取ったシンジはゲンドウにS-DATを手渡すと、壮大なゲンドウの過去を振り返るパートが始まる。碇ゲンドウに庵野秀明を重ねているというのは度々言われてきたことであり、監督自身の自分語り的な意味もあったのかなと思う。

そしてTV版や旧劇、更には序や破にQといった新劇場版のカットを使ったセルフオマージュを行いながら他のチルドレン達を送り出すパート。ここでカオル君が本当にループしていたことが明かされたりするわけではあるが、一番印象に残ったのはやはりアスカの所だ。旧劇では波打ち際で目覚めたシンジが横たわっているアスカの首を締め、そしてアスカが一言「気持ち悪い。」と言い終劇となるなんともトンデモな終わり方だった。シンエヴァでは真逆の構図で、目覚めたアスカに対し傍らに寄り添い「好きだったと言ってくれでありがとう。」と感謝を伝える物になっておりここだけて全てのアスキストは報われただろうと思う。

そしてラスト、マリが迎えに来るまで原画タッチになったり実写パートが入るのもTV版の最後の方や旧劇場版のセルフオマージュなのかなと思うが、決して手抜きせず最後を「現実世界に出ていく」という広がりのある終わり方にしたのは庵野監督なり当時を振り返ってのリベンジやリビルドのようなものなのかなと思う。

最後の最後にシンジを引っ張っていくのがレイでもなくアスカでもなく、マリというのは彼女が新劇場版におけるイレギュラーかつキーマンであり一応シンエヴァは新劇場版としての終わりでもあるので彼女が選ばれたのだろうと個人的には解釈している。

まとめ

かくしてTV版から続く26年にも及んだ長い長いエヴァンゲリオンの物語は3度目にして後腐れのない完璧な完結を迎えたのである。いやー本当の本当に終わってしまった。ぶっちゃけエヴァなら旧劇の「気持ち悪いエンド」のような意味不明な終わり方をしてもそれはそれでエヴァっぽいし全然ありえたと思う。

序・破までは多少の変化はあるものの概ね昔と同じ道筋を辿っていたのが、Qで一気に明後日の方向に舵を切りそれまでの伏線を全部ほったらかしにして独自の道を歩み始めた新劇場版のストーリー。Qでドン底に突き落としてからのやれ加持さんは裏でめっちゃ暗躍してましただのネブカドネザルの鍵はゲンドウがもう使って人外になってましただの、カオル君はループしてました、アスカが式波になったのはレイと同じでクローンだったからです等々・・・山のように広がった伏線らしい伏線を怒涛の勢いで回収しつつモーキャプやバーチャルカメラといった最新技術を惜しみなく使った迫力の映像に、随所に敷き詰められたパロディとセルフオマージュは純粋にもう凄いとしか言いようが無い。

シン・エヴァンゲリオンを見てどういう感想を持つかは人それぞれだと思うが、個人的にはちゃんとケリをつけてくれたことは嬉しい反面これでエヴァの物語が終わってしまうのはやっぱり寂しく思う。また、「新劇場版」単体で完結せず、あえてTV版を踏襲し更には巨大綾波等の旧劇場版と同じ演出にして繋がりを持たせたのは庵野監督の中ではあの終わり方には納得がいってなく今回の「エヴァの呪縛から解き放たれ、エヴァも使徒もいない平和な世界になる」というのが本当に描き方かったエヴァの終わり方だったのかなと思っている。さらば、全てのエヴァンゲリオン。

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