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『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』感想(ネタバレあり) ー怪盗、パレス、そして認知ー

『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』はペルソナシリーズのナンバリングである『ペルソナ5』からシステム改修や追加要素を加えたいわゆる完全版。恥ずかしながら『ペルソナ5』は途中で詰んでしまって居たので無印の方と合わせた感想になります。

※本感想は『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』並びに『ペルソナ5』のストーリーやキャラクターに対するネタバレが多分に含まれます。未プレイの人、プレイ中の人はブラウザバック推奨です。また、比較的ストーリー重視の感想になっています。

ナンバリング作品としての進化

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前作『ペルソナ4』等のペルソナシリーズと比較して大きく変わった点といえばやはり見た目の変化だろう。今までは4等身くらいでデフォルメされたモデルだったのが、今作では8等身くらいのよりリアルな見た目になっている。等身がリアルよりになったことで町にいるモブキャラや建物のモデル等にそれに合わせて調整されている他、PS4の性能を活かして画面全体の表示物が増えており作り込みの細かさを感じることができた。

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個人的な話になるが昔通学で毎日のように渋谷駅を利用していたので、渋谷駅の外観や内部構造の再現度の高さには驚かされた。特にこの地下通路からハチ公前広場に出る出口の横の出店があったことだ。実際に行ったことのある人にしか分からないがここまで再現するとは・・・。

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「敵の弱点をついてダウンさせ総攻撃」という過去作でもあったバトルの流れは今作でも大きくは変わらない。しかしながら総攻撃のモーションが派手になっていたり、最後に攻撃したキャラのカットインイラストが入ったりとアート面でよりスタイリッシュになっていた。

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スタイリッシュと言えば忘れちゃいけないのがUI(ユーザーインターフェース)だ。元々スタイリッシュでオサレ系なアートが特徴的なペルソナシリーズではあるが、本作は赤を貴重にしてより洗礼されたUIに仕上がっている。特にメニュー画面では随時でアニメーションとイラストを絶妙なタイミングで組み合わせており、非常にかっこよかった。

パレスとメメントス

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本作におけるいわゆるダンジョンがパレスに当たる。道中の敵を倒しながら最奥まで進み、予告状を出して最後はそのボスと戦うというのが共通の攻略手順となっていた。しかしながら城だったり美術館だったり銀行だったり、どのパレスも景観は大きく異なっている。そして美術館なら絵の中に入って進んだり、銀行なら金庫を解除していくといった具合にその場所に因んだギミックが用意されており、毎回違う遊びを楽しめるのは中々に面白かった。

また本作のテーマの一つである「怪盗」。無論「物を盗む」という行為は犯罪ではあるが、それを「悪人の心を盗む」という正義に置き換えパレスに潜入していく過程は「本当はやってはイケナイことをしている」というドキドキする気分を感じさせてくれ良かった部分である。

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一方でメメントスはといえば、マップは毎回ランダムで変化はするもののそれ以外はシャドウを倒すか宝箱を開けるかしかできることが無いので、パレスに比べるとやや単調に感じた。

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『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』からは追加要素として、メメントスで花を集めて様々なアイテムと交換したりスタンプを貯めて経験値や換金アイテムの入手量を増やすことができるようになった。これにより無印よりはメメントスに行く意味も多少は増えていた。

キャラクターの印象変化

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本作を最後まで遊んで見てキャラクター部分で思ったのは、「初登場してからペルソナを覚醒するまでの第一印象と、コープを結び深めていってそのキャラの実際の性格は大きく異なっていた」ということ。

例えば竜司なら「第一印象は金髪ヤンキーで強面だが、実際は誰かのために怒れる友達思いな熱い奴」、双葉なら「第一印象は根暗でコミュ障な引きこもりだが、実際はコミカルで動きが可愛い妹キャラ」、真なら「第一印象はお高くとまった生徒会長だが、実際は俗世的な常識にうとかったりするウブなキャラ」等だ。ここの見せ方は非常によくできていたと思う。

怪盗団のメンバーで特に印象に残ったのは「双葉」。

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双葉は最初の接触がチャットから始まり謎の人物という感じだったのが、実は居候先のマスターの養子だったという。序盤から惣治郎が電話している相手がさもフィアンセかと思わせておいて実は双葉という展開や、実際に双葉に会いに佐倉亭に侵入する一連の展開も中々面白かった。

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双葉を語る上で外せないのがやはり「シャドウ双葉」との邂逅だろう。母親を殺したのは自分だと思っていた双葉に対し、シャドウ双葉の言葉でそうでは無かったことを思い出す。そして認知存在の母親が本物ではないことをちゃんと割り切りシャドウ双葉の力を借りて「ナビ」として覚醒する。後にも先にも自分の姿をしたシャドウの力を借りて覚醒したのは双葉だけで、この覚醒のシーンは非常に熱く感じた。

明智吾郎という人物

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本作の感想を書く上でやはり明智のことは避けて通れないだろう。最初の頃は前作の直斗よろしく「2代目探偵王子」なんて呼ばれているという話もあり、普通にいいヤツだと思っていた。

パンケーキのシーンも気にはなっていたものの、ニイジマ・パレスに潜入するまでの過程でパーティーに加入したのもありこれで回収かと思ったら実際は一連の精神暴走事件の犯人だったという。

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純粋にいいヤツだと思っていた自分にとっては結構衝撃で「明智ィィィ!」となってしまった。そしてやはりあの顔、前作とはビジュアルが大きく変わったこともあり忘れていたが脳内で「世の中クソだな」と叫ぶアイツの顔が浮かびこのゲームはやっぱりペルソナだなと改めて思い知られた。

偽イゴールと真イゴール

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『ペルソナ5』のストーリー展開の中で一番衝撃的だったのがこのシーン。ややメタい話にはなるが前作『ペルソナ4(ゴールデン)』を遊んでいた自分にとっては、イゴールを演じていた田の中勇さんの訃報があったので次回作でイゴールはどうなるのだろうと心配していた。

最初に登場するイゴールは過去作の高い声とはうってかわって低めの渋い声になっており、個人的には大きくイメージを変えてきたもののこれはこれで悪くは無いという印象。が、こちらは結果として偽物で本物はちゃんと今までのイゴールだったという。ペルソナ3や4を遊んいるかいないかでこのシーンの印象は大きく変わると思いますが、少なくとも前作を遊んでいた自分にはまさか声優交代すらも演出として使うとは・・・と衝撃的でした。(当初はよく似た声質の方が代役をしているのかと思ったのですが、よくよく調べて見ると過去に収録していたボイスの再編集のようでした。最後のスタッフロールにも田の中勇さんのお名前が載っていました。)

また、前作は純粋に事件の犯人がラスボスだったのに対し今作は冒頭からラスボス感を出していた獅童でもなく、獅童に命令されて実行犯であった明智でもなく、偽イゴールが真の黒幕だったというのは前作とは大きく違い2点3点する展開は中々面白かった。

クリフォトの世界と集合的無意識

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ストーリー展開でもう一つ印象的だったのはメメントス最深部から(無印の)ラスボスを倒すまでの一連のシーン。

メメントスが最初に出現した時にモルガナが、集合的無意識のと言っていたのは覚えていたが大衆の意識を改心するために「パレス」ではなく「メメントス」を利用するということになり、「ここでメメントスに繋がるのか!」と驚かされた。

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そしてヤルダバオト戦。ヤルダバオトの圧倒的な力の前に屈指そうになる怪盗団ではあったが、メメントスと一体化した世界で三島の掛け声をきっかけに大衆が怪盗団を応援し始める。そして限界突破した大衆の力でアルセーヌの鎖を断ち切りサタナエルを覚醒、ヤルダバオトにトドメを指す。一度は大衆の集合的無意識によって消滅しかけたものの、真なる意識によって復活という展開は非常に熱く、そのきっかけが誰よりも怪盗団を側で見てきたであろう三島くんなのも良かった。

幻の3学期

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『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』からの追加キャラとして「丸喜 拓人」と「芳澤 かすみ」の2人、追加要素として「3学期」が登場する。結論から先に言ってしまえばこの3学期は"こうなって欲しい"と望んだ願いが具現化した世界で本来はありえない現実であり、最終的には無かったことになるためトゥルーエンドは無印の『ペルソナ5』と同じになる。だが「望んだ現実」を本物にするための過程とそれを打ち破る主人公達の対比は中々に印象的であった。

ストーリーを進めていく過程で丸喜先生は双葉の母親と同じ認知訶学の研究者だったことが明かされる。一度は諦めた認知訶学を題材にした論文を完成させるというのが丸喜コープのストーリーであり、どこか気の抜けた感じから受ける印象の良さもあって純粋に応援していた。

ヤルダバオトを倒し、年を越してから仲間達に合うと色々と食い違うような話をしている。そしてお台場に謎のパレスが出現し、そこには丸喜本人が居た。無印でパレスの主として主人公達の前に立ちはだかった「カモシダ」や「マダラメ」は明確な"悪"であり、また戦うのも現実世界の本人とではなく異世界に居るシャドウとだった。一方でマルキパレスの主として君臨するのは生身の丸喜先生本人であり、丸喜先生の行動によって幸福を得ている人がいるのも事実であるため明確な悪ではない存在として描かれる。「恋人を犠牲にしてまで手に入れた力、認知訶学で全てを救う」という丸喜先生の強い意志も理解できなくはないが、やはり人という生き物は壁にぶつかってこそ成長する物だと思っているのでこの点は自分は相容れなかった。けれどもその真っ直ぐな意志でペルソナを覚醒し最後の最後まで主人公に立ちはだかった姿は彼の生き様その物でありかっこ良かったと思う

「芳澤かすみ」は新体操部で運動神経もあることからハキハキとした明るい性格のキャラとして描かれる。だが特待生の割に大会の成績がそこまで良くないといった少し引っ掛かるような場面が所々ありプレイしながらやや違和感を感じていた。その後マルキパレスで明智と共に丸喜先生と対峙し、「芳澤かすみ」は本当は事故で亡くなったと話していた「芳澤すみれ」本人であり丸喜の暗示によって自分を「芳澤かすみ」だと思いこんでいたのだと明かされる。正直突きつけられた真実が思った以上に重かったのですみれの気持ちも理解できたが、重いからこそ真実を受け入れすみれとして生きていくことを決めサンドリヨンを覚醒するシーンは彼女の強い意志を感じることができた。

追加要素となった3学期であるが、「死んだはずの明智が復活」や「ヤルダバオトの消えたメメントスを利用して現実を書き換える」など無印のエンディングをきちんと踏まえた、区切りを付けるのでは無くそのまま続きのストーリーになっており特にマルキパレス周りは本作の大きなテーマの一つでもある「認知」に深く関わる話になっていて良かった。

まとめ

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クリア時間は約125時間(3学期を含めなければ約100時間)と最近のRPG作品ではかなり長めの作品に分類されると思う。元々プレイ時間の長いペルソナシリーズではあるがナンバリングらしくビジュアルの大きな進化であったり、「ピカレスク・ジュブナイル」としての若者から見た世界の有様そして腐った大人達と立ちはだかる大衆、それらと仲間達との戦いや成長を描いた物語は単に長いだけではなく時にワクワクし時にハラハラし非常に面白かった。改めてこのような素晴らしい作品を生み出してくれたアトラスの開発スタッフの皆様、そしてそのアトラス窮地を救ってくれたセガに多大なる感謝を。

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