あのとき四畳半神話大系を見れたということ。

最近そういうシーズンなので大学の合否がどうのというツイートがよく流れてくる。僕のTLだと美芸大が顕著だ。たまに東大とか京大でバズってるやつが流れてくる。そしてそれらの流れに対して、受かった子はこういうことをしていこうとか、落ちてしまった子はこういうことをしていこうとか、色々助言めいたことを言っている人が散見される。かくいう僕もひとつツイートしてしまった。ただまぁこういうのは結局その人の人生なわけなので、何を言ったって別に参考にならないし、言われた側も真正面から受け取る必要はない。ないうえで互いのエモい感情を共有しましょうみたいな感じなのだわ。しかしこんなノリを見ていると自分の当時のことを思い出したりみたいなことも発生する。僕の場合は学部が一般私大で、大学院で美大に進学した身なので、とりわけ思い出すのは院に入学した春のときのことになる。

大学院に受かったのは本当にたまたまというほかない。大学4年の11月のころ、ゼミの教授から「堀江は卒業したらどうするんや」と聞かれたので「うーん就職活動してないし、就職もあんまりしたくないので、大学院に進学ですかね」とモラトリアム全開のふざけた回答をしたところ、「美芸大の願書なんてもうほとんど締め切っとるぞ」と返された。僕は焦って「えっ残ってるとこってまだあるんですか」と教授に探させて(どこまでも舐めている)、ギリギリ残っていたのが金沢美大だった。「じゃあここ受けます。急いで願書作りましょう、ところで石川ってどのへんなんだ?」と終始クソバカな感じで入試当日を迎えた。入試のとき親の車で石川に行き、残雪ある道や寒さにびっくりした。提出する参考作品は卒業制作がセオリーというのも知らなかったので、適当に選んだものを持って行ってしまった。「なんで卒業制作じゃないの?」と聞かれたときに初めてそのことを察して、「作品撮影の日程とかぶっちゃって」と慌てて返した。あまりにもお粗末な記念受験という感じだったけど、なんかよくわからんまま合格した。これだけは本当に今でもわからない。

そんなこんなで、金沢に2年間一人暮らしをすることになった。実家を離れるのは初めてだった。雑な振る舞いしかしてこなかった自分に、誰も知り合いの居ない土地に対する、そのときの自分には到底想像できない不安感に当然襲われた。襲われすぎて、入学式やブリーフィングや各種手続きが全部意味がわからなかった。当時住んでたマンションに戻って初めて、これから2年間か……とひとりごちた。学部でへらへらと美術を学んでた当時の自分にとっては、美大という存在はただただ「すごすぎるもの」として映っていたので、「今の自分には分不相応すぎる」という感情にどんどん潰されていった。潰されて、もうだめだ〜となっていたちょうどそのとき、春アニメとして放送されていたのが四畳半神話大系だった。

四畳半神話大系の内容について語る文章ではないので、それについては「とても良いアニメーションですね」としか言わないのだけど、とにかく当時初めての一人暮らしでかつ分不相応なレベルの大学生活を始めて、不安にぺしゃんこしていた自分には、この作品がとにかく刺さった。刺さりまくったし、明石さんクッソかわいいなとかそういう感情もたくさん発生した。ありていに言えば頑張ろうという気持ちになれた。なので2年間頑張った。わりとまじでこの作品(あと当時の話題作でいえば魔法少女まどか☆マギカ)にはメチャクチャ救われた。そして最も良かったのは「この作品をあの時あの状況であの場所で見れた」ことだった。

30も半ばにさしかかりそうな今あのアニメを初めて視聴したとしても、おそらくは「いやぁ良いアニメだったなあ」で終わると思う。パラレルの中を右往左往する主人公の活躍を、「学生生活の分岐点」をまさに体験している最中に見れたのが本当に良かった。好きなアニメは?と聞かれたときに「四畳半神話大系ですね」と答えることはできても、質問者に「最高なので今すぐ見てください!」とは言えない。あれは当時の僕だったから「最高」だった。良いアニメには違いないので、もちろん見てはほしいけど。なので今その質問をされたら僕はプリパラと答える。プリパラはいつ見てもかなり最高の気分を味わえる。みんなプリパラを見よう。

余談だけど、アニメを見終わったあと原作小説を買って読んだら、原作の方では全ての世界線で主人公は明石さんと結ばれていたので「おいいいい!!!」となった。最終話のあのカタルシスはアニメオリジナルだったんかい。


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