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シロクマ文芸部参加作

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note内企画「シロクマ文芸部」参加記事のまとめです。
運営しているクリエイター

#短編小説

「ミニチュアメカキリンは紫陽花を好む(挿絵つき)」#シロクマ文芸部

 紫陽花を好んで食べようとするのだ、うちで飼っているミニチュアキリンは。紫陽花の咲き乱れ…

泥辺五郎
1日前
14

「ハウリングレインリフレイン」#シロクマ文芸部

 雨を聴く細胞が全身にあった頃を思い出す。人になる前は蛙であった。蛙になる前はオタマジャ…

泥辺五郎
7日前
21

「人の降る街では転落死を防ぐために政府から羽根が支給された」#シロクマ文芸部

 赤い傘を差していたので、血の雨が降っているのに気付くのが遅れた。手首を切った女性が空を…

泥辺五郎
2週間前
23

「声がら」#シロクマ文芸部

 金魚鉢に残された金魚の抜け殻を見つけ、夏が近いことに気がついた。確か去年もそうだった。…

泥辺五郎
3週間前
19

「靴になった骨」#シロクマ文芸部

 白い靴のような骨が残った。祖父は日々歩き続けているうちに足が靴のようになった人だった。…

泥辺五郎
1か月前
20

「桜の花びらを呑み込む蛇の話」#シロクマ文芸部

 春の夢、と名前をつけられた蛇がいる。桜の花びらを主食としているから肌が桜色に染まったせ…

泥辺五郎
1か月前
17

「風待ちロマン」#シロクマ文芸部

 風車が止まったので鍋で煮込んでいたシチューが冷えてしまったの、と妻が言った。この町の動力を風車に頼り過ぎていたせいだ。すぐに復旧するだろう、と私は言って、冷えたシチューを流し込んだ。これはこれで、と言いながら、水風呂に入り、使えないテレビの黒い画面を眺めた。  そのまま風車が動かなくなるなんて誰もが思わなかった。風が吹かなくなった。煙は真上にしか上がらなくなった。雲は一つどころに留まったまま、次第に縮んで消えていった。  人を焼く煙を見上げながら首が痛くなってきた。  

「執筆怪談」#シロクマ文芸部

 始まりはバイトをさぼる口実だった。当時入院中だった父方の祖母の見舞いに行くから、と。あ…

泥辺五郎
2か月前
28

「馬糞症にまぎれて」#シロクマ文芸部

 春と風の取り合わせが花粉症という前時代の病気を思い出させる。しかし現代に花は咲かない。…

泥辺五郎
3か月前
21

「うるう秒に生まれて」#シロクマ文芸部

※実際の「うるう秒」は閏月には設定されません。  閏年、閏月、閏秒に生まれた僕は、四年に…

泥辺五郎
3か月前
51

「宇宙律俳人とは旅に出ないことにした」#シロクマ文芸部

 梅の花を探しに出た。妻と二人で。長い長い入院生活が終わって自宅に帰ってきた私は、弱った…

泥辺五郎
4か月前
20

殺し殺され問答とVS殺し屋修行編(殺され屋8)#シロクマ文芸部

「本を書く、というほどではないんだが、近頃考えていることがあってな」と堅木さんが言い出し…

泥辺五郎
5か月前
20

「陸の始まり」【書き初め20字小説】

海水を飲み干したクジラが打ち上げられた。

泥辺五郎
5か月前
27

「最後の日傘」#シロクマ文芸部

 最後の日傘の話をしよう。  最後の日常の話をしよう。  最後の日々をこうして記しておこう。 「これは何?」とガダは言った。私はガダの手に取った物につけられていたタグと目録とを照らし合わせ「日傘というものらしい」と答えた。続いて用途の説明も読み上げる。 「直射日光を避けるために差すもの。主に夏の暑くて陽射しの強い日に使用された」とあった。 「直射日光」とは太陽の光のことらしい。私たちの祖先が旅立った「太陽系」の中で光り輝いていた恒星のことだ。もちろんガダや私は見たことはない