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シロクマ文芸部参加作

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note内企画「シロクマ文芸部」参加記事のまとめです。
運営しているクリエイター

#掌編小説

「風呂迷宮・風呂空間」#シロクマ文芸部

 月曜日から風呂に入れていない。もう日曜日になってしまうというのに。梅雨時の湿度の高い暑…

泥辺五郎
8時間前
11

「ハウリングレインリフレイン」#シロクマ文芸部

 雨を聴く細胞が全身にあった頃を思い出す。人になる前は蛙であった。蛙になる前はオタマジャ…

泥辺五郎
12日前
21

「人の降る街では転落死を防ぐために政府から羽根が支給された」#シロクマ文芸部

 赤い傘を差していたので、血の雨が降っているのに気付くのが遅れた。手首を切った女性が空を…

泥辺五郎
3週間前
23

「靴になった骨」#シロクマ文芸部

 白い靴のような骨が残った。祖父は日々歩き続けているうちに足が靴のようになった人だった。…

泥辺五郎
1か月前
20

「桜の花びらを呑み込む蛇の話」#シロクマ文芸部

 春の夢、と名前をつけられた蛇がいる。桜の花びらを主食としているから肌が桜色に染まったせ…

泥辺五郎
1か月前
17

「風待ちロマン」#シロクマ文芸部

 風車が止まったので鍋で煮込んでいたシチューが冷えてしまったの、と妻が言った。この町の動…

泥辺五郎
2か月前
24

「入学魔法」#新生活20字小説

黄色の学帽が園児を小学生に変えてしまう。 シロクマ文芸部の企画「新生活20字小説」に参加しました。 ついさっきまで園児だったのに、黄色い学帽を被った途端に、小学生に見えてしまう。見えてしまった。もう園児には戻れなくなってしまった。息子が小学校に入学しました。

「馬糞症にまぎれて」#シロクマ文芸部

 春と風の取り合わせが花粉症という前時代の病気を思い出させる。しかし現代に花は咲かない。…

泥辺五郎
3か月前
21

「うるう秒に生まれて」#シロクマ文芸部

※実際の「うるう秒」は閏月には設定されません。  閏年、閏月、閏秒に生まれた僕は、四年に…

泥辺五郎
3か月前
51

「宇宙律俳人とは旅に出ないことにした」#シロクマ文芸部

 梅の花を探しに出た。妻と二人で。長い長い入院生活が終わって自宅に帰ってきた私は、弱った…

泥辺五郎
4か月前
20

「陸の始まり」【書き初め20字小説】

海水を飲み干したクジラが打ち上げられた。

泥辺五郎
5か月前
27

「最後の日傘」#シロクマ文芸部

 最後の日傘の話をしよう。  最後の日常の話をしよう。  最後の日々をこうして記しておこう…

泥辺五郎
5か月前
12

「殺され屋ホラー編『四十肩の二十代』」#シロクマ文芸部

「ありがとう」  銃で腹を撃たれた直後に、思わず出たのは殺し屋への感謝の言葉だった。これ…

泥辺五郎
6か月前
22

「どこにも停まらないバスに乗って(「殺され屋」第五話)」#シロクマ文芸部

 12月の景色が通り過ぎていく。寒さに震える人々。木々から落ちる枯れ葉。暖かい場所へと姿を隠して見えなくなった野良猫たち。乗り込んだバスがどこのバス停にも停まらない。私たちの乗るバスに乗り込もうとしてバス停で待っていた人の、驚く顔が見える。 「秋山君、このバスはひょっとしてまともなバスではないのでは?」  バス最後部の長い座席に秋山君と並んで座っている。他に誰も乗客はいない。変装が得意な役者兼探偵の秋山君は、ゴスロリファッションに身を包んだ美少女として私の横にちょこんと座って