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ピアノまわりの固定ドと移動ド
日本ではいま固定ドが優勢ですし、固定ドと移動ドの間には論争もあるようです。楽譜も鍵盤も「Cがド」でいちばん分かりやすくできていて、固定ドの便利さは確かにありますが、移動ドにも多くの人の耳の感覚に近い良さがあります。仲良く共存できないものでしょうか。
歴史は移動ドの方が古く、昔から使われてきたもの
移動ドは、固定ドよりもずっと昔から使われてきたと考えられ、特異なものではありません。
ドレミという読み方は11世紀頃に考案されましたが、その時代にはまだ、絶対的な音の高さを決める音叉や、電気的に何ヘルツというような測定方法はありませんでした。移動ド=相対的なドレミファソラシならば、弦の長さの比率のような素朴な手段で作れるので、より古い時代でも可能だったはずです。
現状は英米が移動ド、伊仏は固定ド
現状では、国によってドレミを階名にするところ(英米)、音名にするところ(伊仏)の両方があるそうです。それぞれに良さがあり、また、演奏者の音楽的なバックグラウンドによっても向き不向きがあり、どちらが正しいとは一概にいえないようです。
ドレミは、最もラクにテンポよく歌える音の読み方
音名には、CDE(英:シーデーイーまたは独:ツェーデーエー)やハニホ(日本)、階名には 123(ドが1、レが2 … )などの読み方もあります。
その中にあってドレミは、口や喉の動きが比較的小さくて滑らかで、かつ、子音+短母音ではっきりと歌えます。d、r、m…などの子音は口の前の方の発音しやすいものが選ばれており、母音もo、e、i、a が適度にミックスされています。
音のチョイスが絶妙で、他の読み方と比較してラクにテンポよく歌えるので、音名としても階名としても重宝されるのでしょう。
そして、のどや口の動きの比較的少ない日本語に慣れた日本人は、特にドレミが好きなのではないでしょうか。だから、固定ドの人も移動ドの人も、みんなドレミを使いたいのです。
固定ドの良さは楽譜や鍵盤と直結していること
固定ドの良さは、なんといっても楽譜や鍵盤と直結していることで、特に10本指でたくさんの音を同時進行的に弾くピアニストは、固定ドと結びつきやすいと思います。私も、楽譜を弾く時は固定ドが多いです。
それに対して、移動ドで演奏する場合は、Keyによって鍵盤を読み替えることが必要です。私のnoteでは、それを“度数即読”で補いますが、それにもひと手間かかります。
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ドの位置が変わっている!
移動ドの良さは調性感と直結していること
楽譜や鍵盤の分かりやすさは固定ドにかないませんが、移動ドには多くの人の耳の感覚に近いという良さがあります。
階名はKeyの中での音の役割を表しており、Keyが変わっても例えば「♪シド〜」と歌えばいかにも曲が終わった感じになります。「ドに戻ってくるとほっとする」というような感覚を調性感といい、演奏する上で欠かせないものです。歌うと自然に調性が感じられるのが移動ド(階名)の大きなメリットです。
それに対して、固定ドでは調性が少しぼやけます。それを補うには、例えばKey=Fなら「ファに戻ってくるとほっとする」ように感覚を切り替える必要があり、いろんなKey、いろんな曲に対応するにはかなりの修練を要します。コードやスケールもその延長で、移動ドなら1個で済むところを、固定ドでは12個覚える必要があります。
絶対音感のある人には移動ドはやりにくいかも
「移動ドは多くの人の耳の感覚に近い」と書きましたが、全部の人がそうとはいえないようです。
幼少の頃から特別な訓練を受けて絶対音感を身に付けた人では、「Cがド」の感覚が出来上がっていて、移動ドに違和感があるそうです。例えば、カラオケのKeyの変更で違和感のある人も難しいかもしれません。
私のnoteは、どちらかというと絶対音感のない人を前提に書いています。
どちらも大切に
固定ドなら音の感じ方も含めて12の調に対応する訓練が必要ですし、移動ドなら音の感じ方はシンプルでも鍵盤を弾きこなす訓練が必要になる、ということで、どちらを取るか悩ましいところだと思います。
二者択一ではなく、固定ドと移動ドを組合せたらどうでしょうか。例えば、全体的には固定ドで感じて楽器を演奏し、部分部分の分析は移動ドで行うなど。移動ドなら、主旋律はもちろん、ベースのラインやコードなどの内声部の動きも♯や♭が削ぎ落とされてシンプルに感じられます。全体と部分を何となく重ね合わせて演奏できないものでしょうか。
また、人によっても得意不得意があります。絶対音感を身に付けていたら、移動ドは不自然で受け入れがたいかもしれまん。逆に、移動ドで気持ちよく歌える人には、固定ドは一見調性を無視したようで落ち着かないかもしれません。
固定ドと移動ド、両方の良さを尊重したいと思います。
そして、劣勢気味の移動ドについては、その良さを伝えて応援したいです。移動ドはもっと使われてよいのではないでしょうか。
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