![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/98313910/rectangle_large_type_2_afdb9f9cdf1489b2b50323c3879032c4.jpeg?width=800)
お腹が海をだきしめているみたい
![](https://assets.st-note.com/img/1676614099870-gJY4dbMuMF.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1676614099971-ERQ9mLBit9.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1676614099883-jcqF9Goz1V.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1676614099801-Bg4eOLYFYl.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1676614100130-EjkNmbExkc.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1676614100373-22qZJd3koC.jpg?width=800)
お腹が海をだきしめているみたい
ここ数週間どういうわけなのか急に便のキレが悪くなり、いつかやらかすかもな、と思って過ごしていた。便意を感じてトイレへ向かうも座ると何故か出なかったり、出たとしても何だか全然すっきりしない半端な感じが腹と肛門周辺に残留ししばらくするとやっぱりねといった感じで便意が再来する、というような日々が続いていたのだ。
この日も一度排便を済ませた後朝一番に郵便局へ向かったのだが、やはり半端便だったので、届け物の荷物を抱えながらの道中、同時に腹に不穏な感覚も抱えていた。
無事、荷物を届けた後の帰り道。腹の具合はやや落ち着きを見せている。
郵便局と家との間は徒歩にて約十分。郵便局から道路を挟んですぐ向かいにあるコンビニにて用を足してから帰るか?いや、経験上この感じなら何とかなる。
そう思い家路につく事を俺は決断する。
歩き始めて三分程たった頃だろうか。……便意が強まった。
ここからコンビニまで引き返すか、はたまた自分を信じて家までこのまま頑張るか。とても難しい選択だった。冷静に考えればコンビニ一択なのかもしれない。だがこの時、嫌な勘が信号となり脳内に警告を示してきたのだ。
ここから約四〜五分の道のりを引き返してコンビニに着いたとして、トイレに先着がいたとしたら……。
その場合、五分前後待つとしてトータル、家につくまでの時間と殆ど同じになり、挙句コンビニのトイレを目の前にして漏らす可能性があるのだ。糞を、だ。以前、実際にコンビニのトイレに駆け込む寸前に別の人間に入られてかなり危ない目にあった事もあり、俺はやはり自宅へと足を向けた。
——まずいことになりました。これまでの経験の中で一番ヤバい波が肛門を襲っています。と、敬語で冷静を装ってる場合ではまったくない……もう腹とかではなく肛門直々に波が押し寄せてくる。その度に立ち止まり内股姿で肛門をギュッッッと締めて耐えた。本当に漫画の様に滑稽な姿になっていたと思う。
しかし内股姿でぷるぷる震えながらひとり歩道で固まっている滑稽な男のことなど世界はお構いなしに回り続ける。道を行く車やトラックも我関せずと当たり前に通り過ぎて行く。歩道に俺以外に誰もいないのは、果たして幸か不幸か……ぐうぅううそんなことはどうでもいいのになんか考えちゃってどおおおうぅううごごごごお! ヤバいヤバいヤバいぃいいい! と、うつむいた首を起こすと、たらたらとタイヤを転がし向かってくる軽自動車の運転手が車内からこちらをチラチラ見てきているような気がした。
見るな見るなよ見てんじゃねぇ! 俺を小馬鹿にしたままたらたらとろとろ通り過ぎて行くんじゃねぇよベリーショートおばさんがよぉおおおでもでもでもオムツ会社の社員なら見ても良しとしようかあああぁぁややややや……! 糞の糞野郎がぁ……おまッ、クーーーーッ! んーー! ぐいいぃぃぃぃいい……!
……ふっ、ふふふふ。大丈夫だ。大丈夫だぜ、舐めんなよ糞の神。
——ここまでに三度の大波を乗り切った。未曾有も未曾有の糞攻防。途中あきらめて敢えて漏らそうかという考えもよぎったがどうにかこうにか耐えに耐え、とうとう俺はマンションのエントランスにまで辿り着いた。が、
パターン青。糞の神、再来。
んだよぉおおお! 肛門フィールド全開! 違う違う違う全開だと出ちゃいそうだからね。じゃあ全閉じ? ぬぅううん! わからないけれど全開で全閉じいいいいい! 閉じ閉じいいいいいい!
ううううううぬ! エントランスを右に曲がればすぐにマンション住人共用の多目的ルームがありそこにトイレがある……俺の勝ちだ! ぬおおおおおん!
と、顔をそちらに向けると清掃員が掃除をしている。
なぁんでだよ邪魔くせぇなぁ!
完全に一刻を争う状態。行くか? だが、一刻を争うからこそもし清掃員が速やかに対応してくれなかった時は清掃員の前で漏らす事になる。何を? 糞をだよ。
無し!
気持ちと進行方向を瞬時に切り替え、二階にある自宅へ向かう。
エレベーターは幸運にも開いている! 小走りで乗り込む。「閉」ボタンを連打。エレベーターのドアがじれったく閉まる。じれった過ぎるほどじれったく閉まるストレスで肛門にマグマの如く大きな波が来る…………終わりか…………脳裏によぎるべちべち糞地獄。嫌嫌嫌。再度内股姿で肛門をギュッッッと締める。二階まで上がるスピードも地獄の如くじれったい! ドアが開く。エレベーターから出る。しかし波は引かず。立ち止まり肛門の握力を最大にして締める。ぐッ、どうする……どうなる……いつもの歩幅ならあと十五歩もすればもう家だ。しかし歩を少しでも進めると肛門の握力が弱まる。四、五歩内股で小走りしてみる。だだーッッッ! ぐぅ! 危ない! かなり危ない! ちょっと出てる⁉︎ 出てないのか⁉︎ ガーーッックソッ! よしあと二歩ッ、ちょ、ちょ。ういーひッ、いーー! よしよしよし! 鍵を開けて鍵鍵鍵ぃいいいい……んぬぬぬぬぅんッ! ぐぅぁドアァアアアーーーーッッッッッッ‼︎ うおおおお何か出てる⁉︎ 出てない⁉︎ どうなって…グゥゥウウウウウエエエェェエエエドタドタドタクェェェエエイ! トイレにドカドカドーーーー!
うぁぁあああああ! ぼぉおおおお〜……。
やはりパンツにちょっと糞がついてたが、思った程ではなくて良かった。
部屋のかけじくが傾いていたのでなおして寝た。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?