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名馬紹介 コントレイル

【名馬紹介 コントレイル】
あらゆる活動が停止され、遂には東京オリンピックが延期となった2020年。無観客で開催された競馬は唯一の娯楽としてお茶の間のファンに楽しみを与えてくれました。2020年の最大の話題はコントレイルとデアリングタクトの無敗の三冠馬の2頭です。
今日は史上8頭目の三冠馬で、シンボリルドルフとコントレイルの父親であるディープインパクトに次いで、史上3頭目の無敗で三冠を制したコントレイル(2017年生 牡馬)を紹介します。

◆ 2歳時
英語で「飛行機雲」という名前を冠したコントレイルは、陽に映える美しい青鹿毛の馬体、父ディープインパクトと似た体形で、デビュー前から相応の評価を得ていました。デビュー戦を勝った後、東スポ杯2歳Sを圧勝し、暮れのホープフルSに挑みました。
その2週間前にサリオスが朝日杯FSを美しく勝利しており、コントレイルの走りに注目が集まっていました。結果は、好位から抜け出す素晴らしい勝利を挙げ最優秀2歳牡馬に選ばれました。

◆ 3歳時
(1)皐月賞
コントレイルもサリオスも無敗のまま暮れのG1から直行で皐月賞に向かいました。コントレイルは久しぶりのレースの影響でスタート後の二の脚の加速ができず、初めて後方からの競馬となりました。一方、サリオスは好位につけており「これは、サリオスが優勢だな」と思いました。
しかし、3コーナーから徐々に上位に進出し、4コーナーを回る段階ではいつの間にか外側に持ち出し、直線では先に抜け出したサリオスとの一騎打ちに持ち込み、半馬身差で勝利しました。最後の200mの2頭の競い合いは、競馬の醍醐味が詰まった激しい展開でした。

(2)ダービー
迎えたダービーは、戦前からサリオスとの一騎打ちムードでした。コントレイルは今回好スタートを切り、1コーナーで内側3番手と絶好のポジションとりました。テレビ越しに「コントレイルの勝利が確定したな」と思ったのを覚えています。実際、早めに直線で抜け出すと、追撃するサリオスに差を詰めさせず、3馬身の差をつけた完勝で二冠を達成しました。

(3)菊花賞
前哨戦の神戸新聞杯を完勝してから、最後の一冠に挑みます。神戸新聞杯のレース後のインタビューで、無敗で菊花賞に進めることを喜び、そのプレッシャーの大きかったことを認めた福永騎手のほっとした表情が忘れられません。
菊花賞は5番手あたりの好位置を進むも、ルメール騎手騎乗のアリストテレスにスタート直後からず~っと外側からストレスをかけ続けられ「これは厳しいなぁ」と思いながら観ていました。実際、直線途中段階での脚色はアリストテレスの方が上に見え「コントレイル、苦しい」とテレビで実況されていました。
しかし、ストレスをかけ続けたアリストテレスの疲労も強く、最後まで差を詰め切れず、コントレイルは無敗で三冠を達成しました。父ディープインパクトと共に親子2代が無冠で三冠を達成したのは、世界でも類を見ない偉業です。

(4)ジャパンカップ
レース直後は年内休養の可能性も示唆される中、先に参戦を表明したデアリングタクトからのエールに応えるかのように、ジャパンカップへの出走を決めしました。ただし、レースでは直線先に抜け出したアーモンドアイをとらえきれず、2着と初めての敗戦を喫しました。

◆ 4歳時
(1) 秋天まで
春は大阪杯に絞って調整を進めるも、3着に敗れました。どうやら、適性距離ではない菊花賞を走り切り、そこから休む間もなくジャパンカップでも激走したことで、コントレイルは走ることを少し嫌がるようになったと思います。身体面でも、脚部の腫れの影響があったようです。
次走に予定していた宝塚記念を回避し、秋に天皇賞とジャパンカップの2戦を走って引退することが発表されました。
天皇賞にはその年の皐月賞馬エフフォーリアと、マイル女王のグランアレグリアが参戦しました。当日の朝、友人と天皇賞のレースの話をして「勝たせたいのはコントレイル、しかし勝つのはエフフォーリア」と予想し、結果もその通りの2着に敗れました。長期休養明けのためなのか、前走以来イライラ度が増したためか、スタートで出遅れたことが影響しました。

(2) 引退戦 ジャパンカップ
引退戦となったジャパンカップ。スタートをうまく切ると、道中中団で進みます。レースは向こう正面でキセキが最後方から先頭に立つ大捲りを見せた荒れた展開になりました。しかし、福永騎手は全く動じることなく落ち着き、手綱を持ったまま4コーナーを回ります。残り400先で置い出すと、先に抜け出した各馬を交わして残り200mで先頭に立ち押し切りました。このときほど力いっぱい応援したこともなかったと思います。全部のレースをエスコートし、全ての苦楽を共にした福永騎手がゴール直後に叫んでいたのも印象に残っています。テレビでは「空の彼方に最後の軌跡、コントレイル!」という実況も耳に残っています。ゴール後の彼の走りの後には飛行機雲が伸びていたような気がします。

◆ レースっぷり
彼は三冠馬の中では比較的地味な扱いを受けていると思います。それは、彼のレースっぷりが好位から抜け出す優等生的なレースっぷりだったことや、とても素直でおとなしい性格が影響していると考えます。ディープインパクトの末脚やオルフェーヴルの激しい性格といった際立った特徴や、「シャドーロールの怪物」と呼ばれたナリタブライアンのような愛称がないのも、その優等生的な走りにあったと思います。

◆ インタビュー
コントレイルと苦楽を共にした福永騎手がレース後のインタビューで人目を気にせずに涙を流し、コントレイルへの感謝の気持ちと、彼の強さを述べ続けたことが記憶に残っていますし、「その通り!」と勝手に同意していました。さらに、福永騎手が「コントレイルは3000mを走れる馬ではない、調整次第では1200mでも走れる」と語っていたことも、とても印象に残っています。
日本に元気を取り戻してもらうためにも、適性からほど遠い菊花賞を走り切り、その後のジャパンカップに参戦したことで計り知れない大きなストレスがかかったと思います。
最後に、ジャパンカップのレース後、観客席に向けて馬上から福永騎手が深々とお辞儀をした際に、コントレイルも一緒に頭を下げたシーンがあります。優等生のコントレイルは、すべての状況を理解して頭を下げたのではないでしょうか。

◆ 顕彰馬選出
24年6月、キングカメハメハと一緒に顕彰馬に選出されました。

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