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オークスの戦評 ~チェルヴィニアの完璧な作戦の立案と遂行~

レース結果を見ると、チェルヴィニア(ルメール騎手)とステレンボッシュ(戸崎騎手)の一騎討ちでしたが、レース展開も2頭が激しく駆け引きを演じていました。文末に貼付したジョッキーカメラもご参照ください。

◆ チェルヴィニアとステレンボッシュの駆け引き
チェルヴィニアがゲートを出て少し走ると、内側にステレンボッシュが見えます。すると、ルメール騎手はす~っと彼女の外側にポジションを取り、ライバルが外に展開できないように蓋をします。そのため、ステレンボッシュは常にストレスをかけ続けられました。外に展開できないまま3コーナーを回ると、戸崎騎手とステレンボッシュは内側を進む決意をしたように見えます。チェルヴィニアとルメール騎手はその決意を確認すると、自分たちが外に展開できるように準備を開始します。直線に入ると、とても自然に外側に出て、そのままゴールまで突き抜けました。
一方、ステレンボッシュと戸崎騎手が4コーナーを回った時点では、前に10頭近くの馬がいて、壁でつまりそうな雰囲気でした。ところが、突然目の前に1頭分の進路がきれいに開きます。その進路が塞がれないようにゴーサインが出ると、彼女はとても円滑に直線内側を抜けます。しかし、早々にゴーサインが出たためなのか、後から満を持して追い出されたチェルヴィニアにゴール前でかわされました。
もし、チェルヴィニアの進路が開くのがもう少し遅ければ、ゴーサインも遅れて、ゴール前でかわされなかったかもしれません。勝負の綾を感じました。
なお、ステレンボッシュは右後ろ脚の落鉄があったとのことです。運もありませんでした。

◆ 3着馬と4着馬の敗因
3着のライトバック(坂井騎手)と、4着のクイーンズウォーク(川田騎手)も、素晴らしい騎乗をしていましたが、あえて敗因を類推してみました。もちろん、一昨日の時点では実力的に及ばなかったのかもしれませんが、チェルヴィニアと比べると少しずつだけ不利があったと思います。

・ライトバック
ゴール直前で4着馬と5着馬の間を突き抜けた根性と瞬発力は先2頭よりも迫力がありました。そんな彼女が勝てなかった理由を探ると、スタート直後にチェルヴィニアに競り負けて後方になったこと、そのために直線でもベストな進路を先にチェルヴィニアに抑えられたことだと思います。
それでも最後まで諦めずに追い続けた坂井騎手と、それに応えた彼女の今後の戦いが楽しみです。

・クイーンズウォーク
彼女の敗因は2番枠だった故に、最初に脚を使って先行したことにあると思います。彼女は500㎏を超す大型馬で歩幅も大きいため、内側の狭いところでチマチマ走るとペースが崩れてしまいます。川田騎手はスタートに全身全霊を傾けていたと思います。
そのスタートをうまくきると、そのまま先行しました。先行策をとったことで伸び伸び走れたプラス面と、1000m57.7秒という超高速でレースが引っ張られたことで脚が溜まらなかったマイナス面のバランスが、4着という結果だったと思います。しかし、枠番と彼女の特性を考えると、これ以上の作戦はなかったと思います。

◆ 最後に
チェルヴィニアのレース展開には無理、無駄が全くありません。しかし、2~4着馬には少しずつ不利があり、特に2~3着馬の不利は勝ったチェルヴィニアによって引き起こされています。
結局、チェルヴィニアとルメール騎手が局地戦でも勝ち、全体の勝敗も制したと言えるのではないでしょうか。作戦の立案と遂行の完璧さに改めて驚嘆します。
 


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