名馬紹介 オルフェーヴル
【名馬紹介 オルフェーヴル】
凱旋門賞の季節になると、必ず思い出される名馬。史上7頭目の三冠馬であり、凱旋門賞制覇に最も近づいた日本馬のオルフェーヴル(2008年生 牡)のことを紹介します。
◆ 彼の性格
彼は天津爛漫で幼い性格と言われていました。また、類まれな闘争心を備えており、その振る舞いから「暴君」の異名も持っていました。
また、その美しい栗毛の馬体から「金色の暴君」とも呼ばれます。
ファンからすると、毎回何をしでかすか分からないこともあり、とても魅力的な存在でした。
◆ 三冠制覇まで
正直なところ、皐月賞の前までの私の認識は、有力馬の1頭程度でした。自分の眼力を恥ります。
しかし、皐月賞の衝撃的な走りっぷり、強さを観て「彼はモノが違う。三冠も夢ではない」と感じたことを、今でも思い出します。
実際、その後、ダービー、神戸新聞杯、菊花賞、有馬記念と、年内の出走レース全てを快勝しました。
◆ 衝撃(笑劇)エピソード
彼の有名なエピソードに、レース快勝後に池添騎手を振り落とすというものがあります。新馬戦に続き、三冠を達成した菊花賞の後でも池添騎手を振り落としています。
ゴール後も元気で、綺麗な競馬場の芝の上を、自由気ままに走りたかったのかもしれません。
そんなオルフェーヴルの性格のため、池添騎手は何が起きるか分からないので、勝利の後も気を緩めることなく、日本ダービー以外ではガッポーズを自重して、常に臨戦体制を敷いていたとのことです。
◆ 4歳春の苦戦
後に「阪神大笑点」とも呼ばれる、2012年の阪神大賞典は、彼の能力の高さや天真爛漫さを示す、代表的なレースの一つです。
この年の大目標を凱旋門賞に定めた彼に対し、関係者はこれまでの後方待機策ではなく、好位につける競馬を教えようとしました。
元々闘争心や前進気質が他よりも強い彼は、先行策を取ると、もう我慢が利きません。ドンドンと順位を上げ向正面では、遂に先頭に立ってしまいました。
そうなると、彼の中では、一旦これでレースが終わったのでしょう。いきなり大減速して最後尾付近まで下がります。ところが周囲の馬を見ると、未だ真剣に走っている様子に驚いたのか、再びレースに参戦します。
そこから強引に追い込み、なんと2着に入ります。一緒に走っていた騎手全員が、再び先頭に上がっていくオルフェーヴルを見て驚いているようです。
しかし、レース後に再教育、再検査が求められます。それが面白くなかったのか、プライドを傷つけられたのか、次走の春天では走る気を失って、生涯唯一の大敗を喫します。
◆ 凱旋門賞
機嫌を直したのか、春天後の宝塚記念で復活勝利を挙げると、秋はフランスで凱旋門賞の前哨戦フォワ賞も快勝します。
そして、迎えた凱旋門賞。いつも通りの後方待機策から直線大外の進路を選択し、残り300m付近で抜け出した彼の姿を見て、世界中の誰もが彼の勝利を確信しました。ところが、またもや彼は先頭に立ったことで、レースを辞めてしまい急減速。最後にかわされて2着になりました。
彼の背中には主戦の池添騎手ではなく、世界的な名手スミヨン騎手が騎乗していました。オルフェーヴルのことを熟知していた池添騎手が乗っていたら、最後まで気を抜かず勝てたのではないかという論争が、今でもあります。
◆ 引退まで
帰国初戦のジェンティルドンナと激闘を演じたジャパンカップ、2年連続で2着に敗れた凱旋門賞、引退戦となった有馬記念での快勝と、その後も素晴らしいストーリーを演出してくれています。
その中でも後続に8馬身の差を付けて圧勝したラストランは、とても強く記憶に残っています。あまりの強さを目のあたりにした実況が、「目に焼き付けろ、これがオルフェーヴルだ~」と叫んでいます。
イクイノックス、全盛期のナリタブライアン等に匹敵する、他を寄せ付けない圧倒的な強さを持ち、完璧な美しい勝利を演出できる稀有な名馬でした。
特に、直線で加速して、他馬を置いてきぼりにするときの運動神経の塊のような、低く、躍動感のあるランニングフォームは惚れ惚れする美しさです。
◆ ライバル
ほぼすべてのレースが圧勝でしたので、真の意味でのライバルはいないのかもしれません。その中で敢えて最高のライバルをあげるとするならば、同期のウインバリアシオンです。
彼は5回オルフェーヴルと一緒に走り、ラストランの有馬記念や日本ダービーを含む4回2着でした。また、G1での2着4回と、生まれた年が悪かったとしか、言いようがありません。