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2021 韓国ドラマMYベスト10-キーワードは『一線』と『短編』-悪の花、賢い医師生活、五月の青春、怪物など

 韓国ドラマに癒してもらい、泣かされ、元気を貰った2021年。備忘録に今年日本で放送・配信された中から、特に印象に残った10作品を書き留めておきたい。選んだドラマのキーワードは、言うなれば”一線”と”短編”。

 法律では裁くことのできない悪には、それ以上の悪で立ち向かう。『ヴィンチェンツォ』『模範タクシー』『怪物』『ペントハウス』など、2021年は”一線を超えていくキャラクター”を描いた作品が目立った年だったと思う。ちょっと毛色が違うかもしれないが、一線を超えて突き進む点では爆笑必須の傑作『哲仁王后』も。

一方で、”一線に立ち戻る”といった作品も多かったように思う。小さな頃、親や学校で教えて貰った人としての良いこと・悪いこと。そして、相手を理解し共に生きること。『賢い医師生活』『ラケット少年団』『ナビレラ』『海街チャチャチャ』『(知っていることはあまりないけれど)家族です』など、今を生きる上で大切なことを思い出させてくれる名作にも出会えた。

ところで、韓国ドラマといえば全16話前後が多い印象だが、今年は6話〜13話前後の作品も目立った。長いからこそ登場人物の幼少期から伏線を張って描くことができる。そう思っていたが、シーズン2があるかのように作られるNetflixの作品や、短いけれど無駄なシーンが一切ない短編作品においても名作が多かった。『地獄が呼んでいる』『マイネーム:偽りと復讐』『D.P.-脱走兵追跡官-』『五月の青春』『このエリアのクレイジーX』など、どれも記憶に新しい。

さて、前置きはこのくらいにして、早速2021年韓国ドラマベスト10を振り返りたい。選んだのはこちら10作。

・悪の花 
・五月の青春
・賢い医師生活2
・ナビレラ
・ペントハウス1〜3
・怪物
・哲仁王后
・マイネーム
・模範タクシー
・ラケット少年団

悩みながら選んだ作品。この他にも『海街チャチャチャ』や『18アゲイン』『KAIROS』『(知っていることはあまりないけれど)家族です』など素晴らしい作品が多々あるのだが、挙げだすときりがないのでここまでに。以下では、簡単ではあるが、各作品に焦点を当てて紹介していきたい。

▶︎愛する人が連続殺人犯だったとしたら...?『悪の花』

壮絶な過去を隠して生きる夫と、彼を疑う刑事の妻の物語。先が読めないハラハラするサスペンスでありながら、とにかく泣ける。”愛とは何か”を自分に問いかけたくなるような作品で、脚本・演出・演技・OST全てにおいて素晴らしかった。百想芸術大賞では、5部門にノミネート。さらに、イ・ジュンギ氏の感情の演技の引き出しの多さと深さにも注目して欲しい。(2020年の作品だが、日本放送が2021年のため今年の記事に。)

【こんな方にオススメ】
主人公の心情の変化に心揺さぶられ、小さな希望の光が眩しくて堪らない『ここに来て抱きしめて』『空から降る一億の星』『ただ愛する仲』のような作品がお好きな方に。

▶︎あまりの世界観にただただロス。『五月の青春』

1980年5月の光州を舞台に惹かれあっていく男女とその家族を描いた物語。光州民主化運動を背景に、時代の渦に飲み込まれていく2人を映し出していく。前半のキュンキュンから後半にかけてガラリと変わる空気感に圧倒され、気付けば号泣。全12話を感じさせない見応えで、今年ロスを引きずり続けた一作。

▶︎おかえりなさい。今年も心の拠り所となった『賢い医師生活2』

40歳で同じ病院の医師として働くこととなった5人の日常を描く物語シーズン2。シーズン1から首を長くして待ち続け、ついに配信。シーズン2というよりも続話に近く、変わらない彼らの優しい世界に心が癒される。”きっと大丈夫”。そう声をかけてくれるかのような作品で、今年もOSTと共に浸らせてもらった。そして前作から増えた家族の時間に、直視できないほど照れてしまう自分も(笑)。それくらい時間を共にさせてもらった気分だ。

【こんな方にオススメ】
『賢い医師生活』シーズン1にハマった方は是非。さらに同脚本家の『応答せよ』シリーズや、人生の節目に見たくなる『ミセン』『椿の花咲く頃』がお好きな方に。

▶︎バレエと人生の物語『ナビレラ -それでも蝶は舞う-』

幸せになる事に罪悪感を感じ、心のままに生きられずにいる青年の心と、生計を立てるのに必死で置き去りにしてしまった70歳の男性の夢を、バレエを通して"再生させる物語"。全12話一貫して、何かを始めるのに遅すぎる事はないと教えてくれ、日々に疲れてしまった全ての人に贈りたくなる。本作のポイントは、ドクチュル(70歳の男性)が、チェロク(青年)のマネージャーであること。バレエの先輩と人生の先輩が、互いに支え合う姿を見届けてほしい。

【こんな方にオススメ】
支え合う2人の姿が心に沁みる『マイ・ディア・ミスター』やメッセージ性のある『まぶしくて』のような作品がお好きな方に。

▶︎そんなわけあるかい笑!の連続。ぶっ飛びサスペンス『ペントハウス1~3』

選ばれし者だけが住む高層マンション"ヘラパレス"を舞台に、狂った住人達が富と名声を奪い合う衝撃的なサスペンス。シーズン3まで狂気的な世界観は変わらず、激しさを増していくのが凄まじい。だけれども、その激しさには”家族”や”子ども”といった理由もあって...気づけばしっかり泣かせてくるのが流石なところ。韓国では高視聴率を獲得したシリーズもの。俳優陣の怪演ぷりと読めない展開に視聴が止められなくなると思う。

【こんな方にオススメ】
1話見るごとにヘトヘトになるほどの凄まじさ『SKYキャッスル』や『夫婦の世界』のような作品がお好きな方に。

▶︎怪物を捕らえるには、怪物になるしかない...『怪物』

衝撃的な事件の真相を追う刑事達を描いた物語で、2021年百想芸術大賞作品賞受賞作。起承転転転転転転転転結!と最後まで痺れる展開で無駄なシーンが無い骨太サスペンス。シン・ハギュン氏の不敵な笑みに背筋が凍りつき、ヨ・ジング氏の演技に夢中になるはず。2022年元旦からは、アマプラで配信予定とのこと。

【こんな方にオススメ】
疑心暗鬼になり、痺れるサスペンス『秘密の森』のような作品がお好きな方に。

▶︎ただの魂入れ替わりドラマというなかれ。爆笑絶えない『哲仁王后』

現代を生きるシェフの魂が、朝鮮時代の王妃の中に入ってしまう物語。5分に1回、いやもっと笑い続けているかもしれないドラマ。キャラクターの人となりをしっかり笑いを取りながら説明していくため、起伏のつけ方が独特。好みが分かれるかもしれないが、5話あたりから急に流れが変わり、ラストにかけての畳み掛けが半端ないので、最後までお楽しみいただきたい一作。全話観終えた時にはきっと拍手したくなっているはず(笑)。

【こんな方にオススメ】
いつの間にかキャラの濃いキャラが一つのチームとなって前へ進んでいく『ヴィンチェンツォ 』『キム課長とソ理事』『特別労働監督官 チョ・ジャンプン』のような作品がお好きな方に。

▶︎瞬きしている間に終わってしまうスピード感『マイネーム: 偽りと復讐』

17歳の誕生日に目の前で父を失い、復讐のために生きることを決意した女性を描くサスペンス。自分の名前を捨て、トレーニングを重ね、目から光が失われ怒りだけが残っていくハン・ソヒ氏の演技が痺れる。特にep6の彼女の演技に心を奪われた。そして、この関係にどう名前をつければ良いのだろうと思うほど、複雑で歪んだ人間の情が絡み合う一作。

【こんな方にオススメ】
同監督の『人間レッスン』や、スピード感たっぷりで目が離せない『キングダム』のような作品がお好きな方に。

▶︎イ・ジェフン氏の七変化っぷりが最高すぎる『模範タクシー』

正義だけでは勝つことが難しくなった時代に、悪には悪で立ち向かおうと一線を超えていく復讐代行タクシー会社を描いた作品。想像を絶する実話を基にした事件に息切れし、痛快な展開とキャストの熱演に終始目が離せない。題名に込められた"模範"の意味を問いかけ続けられる一作。

【こんな方にオススメ】
ダークヒーローを描いた『ヴィンチェンツォ 』や謎の便利屋を描いた『ヒーラー』がお好きな方に。

▶︎これは...人生の教科書。『ラケット少年団』

バドミントンを通して成長していく中学生を描いた物語。主人公は、お揃いのジャージを着て、食卓を全員で囲み、一つ屋根の下で暮らす"衣食住"を共にする中学生たち。そんな彼らが、外の世界に触れて大人の階段を登り始める姿を見守りたくなる。登場人物の数だけドラマがあるということを体現化したような作品で、優しさが連鎖していく世界と1話ごとにある山場に毎話号泣。大人だからといって完璧な訳ではなく、彼らと共に成長し変化していくのが堪らなく良い。

【こんな方にオススメ】
同脚本家の『刑務所のルールブック』や、世界観がリンクする『賢い医師生活』『応答せよシリーズ』のような作品がお好きな方に。

 来年はどんな作品に出会えるだろうか。Netflixの配信の変化によって、韓国との配信タイミング差が縮まった印象の大きい今年。しかし、まだまだ観れない作品が多いのも事実だ。来年にはTVINGの日本進出も予定されており、さらに観ることのできる作品の幅が広がるのではないだろうか。(配信サービスが増えるということは、お財布にもヒットする話なのだけれども...)。

あぁもう最高って言葉しか出てこない!なんだか良すぎて体温が1度上昇したような気分。とにかく考察したい!そんな、忘れられない一作に来年も出会えることを期待したい。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。良いお年をお迎えください。