おのれディケイド!〜一人で闘う時代の終焉〜
はじめに
この記事は、DevLOVE Advent Calendar 2019 の6日目だ。テーマは「それぞれの10年、これからの10年」。
もともと25日目の記事を書いていたし、そちらも投稿するが枠が空いていたので6日目にも投稿することにした。過去改変だ。
25日目はかなりパーソナルな話を書いたので、6日目の記事は「エンジニアの働き方がどう変わったか」について書きたい。
2009 Building the wall!
いまから10年前。ソフトウェアエンジニアの働き方はどうだったか?もちろん現場によって千差万別だ。しかし、すくなくとも日本において「アジャイル開発」のように対話しながら共創するスタイルは少数派だった。
この年、私は外資系企業から日本のIT企業へ転職した。一人ひとりのブースが壁で区切られ、その気になれば朝から晩まで誰とも話さずに開発に没頭する環境だった前職。転職するとそこはオープンスペースな環境で、正直戸惑った。
古典「ピープルウェア」で記述されているような「ブース」でパーソナルスペースが確保された環境こそが、エンジニアにとって一番よい環境だと信じていたのだ。
この頃、同僚に「前職はブースで集中しながら開発していた」という話をすると、みなそのような環境がよいといっていた。なのでこの頃は、一人で集中できる環境がよいと考えるエンジニアが多かった。
2019 通りすがりのモブプログラマーだ
時は流れ2019年。オフィスの至るところに大型モニターが設置され、ペアプロやモブプロがひっきりなしに行われている。朝になるとオフィスのあちこちで人々が立ち上がり、朝会が開催される。君らはミーアキャットか。愛してるよ。
え?10年前は壁を欲しがっていた私は、今どうしてるかって?
それはもちろん、アジャイル開発を推進し、モブプロがしやすい環境をつくる手助けをしている。
いや、個人的な趣味嗜好でいえば、やっぱり一人で考える時間が欲しい。そういう時間は大事だ。それでも、レビューの効率性やコーティングスタイル/スキルの伝承、そしてビジョンを揃えるにはアジャイルやモブの力が必要だと感じている。
この10年でなにがあったんだ、洗脳でもされたのか?おのれディケイド!いや、考え方が変わったのだ。「自分一人の力でものをつくる」から、「みんなの力でものをつくる」へ。なぜって、答えはシンプルだ。みんなでつくったほうが、ひとりでつくったよりすごいものができるからだ。
これは何も、私一人の変化じゃない。私一人の変化ならオフィス中にモニターが設置されるなんてことにはならない。
そして、勉強会へ参加する、Qiitaやnoteで外部発信するというエンジニアもずいぶん増えた。各企業でじっくり醸成されたノウハウが、今日ではフラットに共有されつつある。OSSの思想がエンジニアリングスタイルにまで染み出している。
もう、一人で闘う時代ではない。もうひとりで歩けない。
競争領域さえ共創する時代
OSSで、Qiitaで、勉強会で。ビジネス的に競合していても、エンジニアリングの現場では「ともにつくる」仲間として語り合える時代がきた。
前職、半導体企業に勤める友人からは「IT企業って、他の会社のひとたちと勉強会やってていいよね」と言われたりする。ITの中にいると当たり前のことが、外からはすごく不思議な状況なのだろう。
象徴的なのがこちらのイベントだ。当時、界隈はなかなかにざわついた。
devloveというコミュニティは、ビジネスの文脈からは距離をおいている。純粋に開発や開発を取り巻く環境と愛をもって向かいあう。まさにdevをloveしている。だからこそビジネス的には競合する立ち位置の会社同士でイベントをやったり、同じ勉強会で肩を並べ語り合ったりできるのだ。
私がdevloveにジョインしたのは2018年、まだ2年目のペーペーだ。ペーペーだからこそ思うのは、devloveのようなコミュニティでの活動が、今日の活発でオープンなエンジニア文化を育んだのだということだ。
ぼっちたちが出会い、群れをなし、塹壕の中で話し合う。そう、ぼっちはこの10年で自分だけの世界から引きずりだされ、群れの中で生きていくようになったのだ。おのれディケイド!
だいたいわかった
このように、10年間でエンジニアの意識、そして行動はオープンで共創的なものに変容していった。
そのほうが開発しやすいから、とか共創しやすい環境が整ったから(モニター、昔はこんなにでかくなかったですよね)とかいろいろあるだろう。
しかし、実利や環境の変化だけではここまで大きなうねりにはならなかった。エンジニアの考え方自体が外へ外へと向いていったのだ。
エンジニアの行動を、考え方を大きく変えたコミュニティ。その変化を優しく支えたコミュニティ。これからの10年、ますますその重要性は増していくだろう。そしてその濃密かつ広大なネットワークのなかで、またエンジニアの働き方は、考え方は変わっていく。
devloveはつづく。コミュニティは大きくなる。目指せ1万人、いやもっといけるだろう。devloveのイベントで東京ドームを埋められるくらいまでいこう。