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【デブサミ2020】セッションレポート:13-F-1 ITがモビリティを創る:MaaSに向けた技術とエンジニア像

モビリティ業界からの越境

登壇者:伊藤昌毅先生[東京大学]

デブサミに伊藤先生登壇、というのは交通系ITの世界にいるものとしてはちょっとした事件だ。
伊藤先生はこれまでも交通の発展においてIT技術およびその技術者が重要だという発信をされてきた。昨年にはDeNA主催の「MOBILITY:dev 2019」に登壇されており、IT界隈へと越境しつつある。

そんな伊藤先生が、モビリティ色のない純然たるエンジニアイベント、デブサミに登壇される。これは参加する以外の選択肢はなかった。

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ほとんどの参加者非モビリティ系エンジニア

セッションが始まってすぐ、GTFSを知っているかについてSli.doでアンケートがとられた。

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この結果には正直、驚いた。満席に近いこのセッションで、8割近くの参加者はGTFSを知らない。つまり、参加しているエンジニアのほとんどはモビリティ界隈の外から参加してきているのだ。なんと素晴らしい状況だ!

ここからは、セッションの内容を走り書きで共有させていただく。

伊藤先生のお話 走り書き ITとモビリティの関係性

ITとモビリティはそんなに近い存在じゃなかった
ここ最近の変化はITが牽引している
MaaS、CASEなど横文字が多い
TESLAはCASEの先端を行っている
TESLAのダッシュボードはもはや車ではない。ITエンジニアほいほい
TOYOTAが南武線沿線で出した広告は話題になった。TOYOTAもソフトウェアに力を入れている

伊藤先生のお話 走り書き MaaS

定義

いろいろある
XaaSという表現はITエンジニアにとって馴染み深いもの
フロントエンドで追求すること:直感的で快適なUI/UX
WhimはGoogleやNAVITIME、Yahooと何が違う?
チケット購買まで含めたシームレスな体験
牧村さん曰く「すべての交通サービスが自分のポケットの中にある」というこれまでにない感覚

MaaSにおけるバックエンドとは?

快適さを突き詰めるこれまでのアプローチは富豪的解決。(タクシーなど)
対照的なのがシェアリングなどスマートな解決。バスや鉄道がそうだが、Uber Express Poolはさらに高度な例。

MaaSオペレーター登場の見込み

世界はMaaSの覇権競争?
日本でもMyroute、Izuko、WILLER、EMotがある。フィンランドからWhimも上陸予定

伊藤先生のお話 走り書き オープンデータ

どこから始める?

データから始めよう
オープンデータという土台作り
この場に集まった人はほとんどがGTFSを知らない。そこが素晴らしい
これまでDB Open Data Hackathonなどに参加
GTFSは世界で広く使われている。最近はrealtimeのものもある
学会発表等で広め、巻き込んできた。いまでは183事業者が参加。

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なぜこんなムーブメントになったのか?

事業者目線:乗換検索に出るようになることで、つかってもらえるようになる
利用者目線:そこにモビリティがあるとわかる。快適に移動できるようになる
岡山県ではrealtime−GTFSを活用している

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データがオープン化していくことで、地方でもデジタルサイネージを設置できるようになる
バスロケも作りやすく・使いやすくなる
エンジニアのみなさん、データはあるので触ってみてください!
水と油だった業界がオープンデータを接点として接続しつつある

今さわれるオープンデータ

GTFSはSQLそのもの(実体としてはテキストファイルだがリレーショナル)
PostgreSQLに投入することもできる
都バスに関しては正確な位置情報、乗り場情報が手に入る
OpenTripPlannerを使って経路探索もできる
GTFSリアルタイムデータはProtocol Buffersで取得できる

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伊藤先生のお話 走り書き これからのモビリティ

MaaSはある種のバブル。そろそろ幻滅期に入る。
そのあと、いかに安定期までもっていけるか
これまではモビリティの形態ごとに最適化されていた
これからはDevOpsに回っていくべき。アプリとサービスがアジャイルにカイゼンしていき、変化の圧力をかけていく
これをMaaSと呼ぶのかはわからないが、ユーザーからの絶え間ないフィードバックでカイゼンしつづける世界になっていくのではないか

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伊藤先生のお話 エンジニアへのメッセージ

ITエンジニアによるモビリティを創ろう!古い業界、でもチャンスはこれから!

セッションを聴いて

デブサミの場でMaaSが、GTFSが、果ては「その筋屋」が登場する越境感に圧倒された。
そして講演中、Google MapsだけではなくNAVITIME、ジョルダンといった国産サービスについても何度も言及される姿に日本のエンジニア自身が日本のモビリティをよくしていく使命があるんだよ、というメッセージを感じ取った。

伊藤先生もおっしゃっていたが、モビリティ業界の外にいるエンジニアがたくさんこの講演を聴いた意義は非常に大きい。

内容自体も、なぜ今モビリティなのかという背景からエンジニアが実際に手を動かすためのデータ入手方法、簡易的なコードの提示までなされており、その気になったエンジニアがすぐ行動を起こせる素晴らしいものだった。

交通という、人間にとって不可欠なインフラを、ITの技術とマインドで変えていく。あらためて意義深い領域だと感じたし、これからこの領域にやってくるエンジニアが増えることを願ってやまない。



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