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書評: コンフリクト・マネジメントの教科書

テーマは職場のコンフリクト

今回紹介する「コンフリクト・マネジメントの教科書」は職場のコンフリクトをテーマに扱った一冊。

コンフリクトのある職場、というといかにも問題がありそうだが、さにあらず。雇用形態、世代、出身、スキル、ジェンダー、ハンディキャップ・・・今日の職場には多様性が渦巻いている。様々な背景を持った人たちが、それぞれの事情を抱えて職場に集う。職場に対する期待も一様ではない。とすると、現代の職場ではコンフリクトは不可避的に発生するものなのだ。(裏を返すとコンフリクトが全然ないような職場というのは、多様性にかけているのかもしれない)

そのようにコンフリクトをかたわらにあるものとして認識し、そのうえでどう行動するかを示したのが本書だ。

職場におけるコンフリクトの発生源が暴かれる

2021年、かつて小説やドラマで描かれていた絵に書いたような「偉そうな人」というのはあまり見かけない。では職場というものは常にフラットで風通しがよく公平なものか、というとそうではない。「うちは風通しがよいですよ」といっている職場でもそうだ。本書では、組織に内在する暗黙の理論や「パワー」が歪を生むことを指摘している。「(パワーを持っている人は)自分の見たい見方で現状を歪んで認識する確率が高い」というのはなんとも耳が痛い話だが、だからこそ職場でコンフリクトを解決したいと思い本書を手にとった「偉い人」に届くことに価値がある。

自己診断できる

本書では、随所に自己診断(所属組織含む)をするためのチェックリストが挿入されている。以下の図は、本書p.79で紹介されているコンフリクト・マネジメント自己診断のわたし自身の結果だ。

コンフリクト・マネジメント自己診断表(CIA-SF)

自己診断によると、協調性を重んじるマインドセットであるようだ。(しかしこれは自己診断でしかないので「ものわかりがよい人だと思われたい」というバイアスがかかっている可能性が高い)

上記はマインドセットだが、コンフリクトに対する自分の行動傾向のチェックリストなども用意されている。チェックリストがあることで、概念理解だけでなく自分自身を省みる機会を得ることができる。

コンフリクトに無自覚である人ほど手にとってほしい

職場のコンフリクトをテーマとし、コンフリクトが発生するメカニズムを解明し、コンフリクトと対峙する方法を提示する。そして自己診断できるチェックリストが用意されている。そんな本書は、身近にコンフリクトがありなんとかしたいと思っている人にはうってつけだ。

しかし、個人的にはそうではない人にもぜひ手にとってもらいたい。コンフリクトと無縁だと思っている人、無自覚な人。本書を読むことで、実は身近に存在していたコンフリクトに気づけるかもしれない。自分がコンフリクトの台風の目になっているのかも・・・と内省するきっかけになるかもしれない。

コンフリクトに蓋をせず向き合う。コンフリクトと向き合うには痛みが伴う、特に上下関係がある中でのコンフリクトはそうだ。それでも向き合い乗り越える。そのために過去の勇気ある人々が実践してきた行動と知恵が、本書には詰まっている。

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