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【書評】WHO YOU ARE

「自分は何者なのか」という問い

「HARD THINGS」のベン・ホロヴィッツが新しい書籍を執筆した。
組織文化について綴った本書は「WHO YOU ARE」、「おまえは何者なんだ?」という問いかけをタイトルの時点で投げかけてくる。

これは、組織文化を形作るものが「自分のありかた」そのものであるからだ。
スローガンや考え方、思想ではない。発露される行動が「何者なのか」を雄弁に物語り、文化を形作っていく。

文化を作り上げ、守り通すための原則

本書から読み取れる、文化を作り上げ守り通すために必要なものは一貫性と誠実さ、信頼だ。本書ではその原則を説くにあたって、過去の事例から学ぶというアプローチをとる。

この「過去の事例」の選択が実に特徴的だ。通常、こういったビジネス書では「成功している企業」の事例を紹介する。現代であればいわゆるGAFMAの事例が取り上げられるケースが多い。
(書店にいくと「Google流」だのなんだのというタイトルの本がなんと多いことか)
しかし、本書が事例として取り上げているのは以下のとおりだ。

ハイチ独立運動を主導したトゥーサン・ルーベルチュール
武士道
殺人罪で投獄されたシャカ・サンゴール
中原の覇者チンギス・ハン

時代も場所も思想も異なる。現代ではその文化が是とならないものもある。
裏を返せば、それだけ多様なバックグラウンドの中で共通するふるまいは、組織文化を形作るうえで普遍的なものだといえるだろう。

そして、武士道の項目は「価値観ではなく徳(おこない)が重要だ」ということが説かれる。なるほど、ただ「それがいちばん大事」と口でいうのではなく、行動こそが説得力を生み、規範を生み出していくというのは腹に落ちる。

サブカルチャー

ある程度以上の規模の組織では、単一の文化を全体に適用することは難しくそこにサブカルチャーが生まれるということにも言及があった。本書内では営業とエンジニアのカルチャーギャップが例にとられていた。
(ここはそういった垣根を取り除きアジリティ高い組織を作っていこう、という考え方の自分としては複雑な気持ちにはなった)

総評

ブクログにもレビューを書いたが、組織文化の形成に興味があるならば手に取っておくべき1冊だろう。
いわゆるノウハウ本ではないので、「こういった施策をとれば文化が醸成されます!」というようなお手軽なアウトプットには繋がらない。
文化を形成していくには一貫性ある行動、誠実な態度、そこから醸成される信頼関係が重要であるという本質を理解し、どう行動するかが重要なのだ。


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