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「残業でカバー」の誤謬

うまくいかないときの処方箋

ソフトウェアエンジニアリングとは、基本的には今この世にないものを作り出す営みだ。作ってみたら思ったものと違う、作ったけど使われないということが平気で発生する。そして、「作り始めたら思ったより大変だった」ということも往々にして発生する。

「ふりかえり」はそういった理想と現実のギャップを見つめ、よりよいプロセスへと至る道筋をつける。しかし、現場で、その日その時、思ったように開発が進んでいないとしたら個人はどのような行動を取るか。

そう、残業である。

働き方改革が叫ばれて久しい昨今、残業というものは「減らすべきもの」という共通認識ができつつある。(なお、残業というと日本のお家芸と思われがちだが、海外のビデオゲーム業界でも恒常的な残業は蔓延しており(クランチと呼称されている)、解決すべき問題として考えられている。)

しかし、本当にその残業は問題を解決しているのだろうか。

ぷるぷる、僕わるい残業じゃないよ

少し時間をかけて解決する課題がある。フロー状態に突入していて、気がついたら残業をしているときはある。程度の差こそあれ、「ゴールがみえている」「楽しくてしかたがない」といった状況において、多少長めに働くのはケースによってはアリかな、と思っている。(もちろん常態化していてはよくない)

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ゴールが見えているのにそこで中断する、というのはキリが悪いので、そういうタイミングでちょっと無理を利かせるのはそう悪い話ではないだろう。

「もうしわけない残業」はやめよう

問題はそうでない残業。「もうしわけない残業」だ。コミットメントしたのに達成できそうにもなくてもうしわけない、そういった気持ちからの残業。解決策が見えていないのに、場合によっては自分ひとりでは解決できないことがわかっているのに、残業してしまう。これは疲弊を招くだけでバリュー創出には寄与しない行動だ。

「残業でカバー」の誤謬

その責任感から、もうしわけなさから、残業をしてしまう。そういった方に「うまくいってないなら、切り替えるために帰っちゃいなよ!」といってもなかなかそうは行動できない。もうしわけないとおもっているからだ。

しかし、ここに「残業でカバー」の誤謬がある。うまくいっていないときに残業でなんとかしようとしているのは、「時間をかければなんとかなる」問題だと判断していることにほかならない。

残業は「時間をかければなんとかなる」問題は解決してくれるかもしれない。しかし、自分以外のステークホルダーによる意思決定が作業を進めるボトルネックだとしたら?他のメンバーのアウトプットがボトルネックだとしたら?チーム全体で考えた時に、自分以外に解決できる人がいたとしたら?

その問題はそもそも時間で解決できないかもしれないし、解決できるけれどもずっと少ないコストで解決することができるかもしれない。

うまくいかないときは焦るものだ。視野狭窄にも陥るだろう。しかしそういうときこそ深呼吸して、「うまくいかない要因は何か」を考えよう。なんなら、そこを考えるところからチームを巻き込もう。

あなたのコミットメントは、「あなたが一人で成し遂げる」ことを宣言したものではない。チームで辿り着く場所を定めるものだ。一人で申し訳無さを抱え込まず、チームを巻き込み、チームでコミットメントしていくのだ。
「残業でカバー」の誤謬から脱し、真に課題を解決することができるアプローチをとろう。

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