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Tabi. #1979 009-8

Tabi. 009-7から続く

もう、少しで登り切る、
そんなことを思いながら足を動かしていると
自分を追い抜かした男性が
引き返してきた。

自分を見つけて
唐突に声をかけて来る。

「ダメダメ。
 道がない。
 登れないよ
 獣道だ」

本当かよ!
と心の中でツッコミ。
ここまで登ったんだぜ、
登りきるに決まってるだろ、
という気持ちを
グッと飲み込んで

「・・・ありがとうございます」
と一言いう。

獣道ってどういうことだ。
ただ、水が少なかっただけなんじゃないのか?
それで戻ってきたのではないか?お主と
そう言いたくなる。

そもそも
獣道って何だよ?
登山のマップがしっかりある
山だぜ、と。

そう思っている間に、
男性は、スタスタと諦めよく
下山していった。

ひとまず、
かの男性が言う
獣道とやらまでは行ってみよう。
人の言うことじゃなくて、
自分の目で確かめよう。

人の親切心を傍目に、
登り続けた。

だが、登り切って分かった。
道が、ない。
獣道とは、よく言ったもので
何かがかろうじて通り過ぎたような
そんな細い道が途切れつつも繋がっている。

ただ、そんな細い道は
いく通りもあり、
確かに間違えたら
迷うな、という本能的理解は
あった。

ここで矢印。
戻るか、
それともこのまま山頂を目指すか。

有難いことに、
グーグル先生の電波が入る。

薮の中を進む。
ズレると、
教えてくれるので有難い。
幾度か薮の中を彷徨う。

彷徨いながら、
道のようなものが見えてきた。

周りを見渡すと、
誰もいない。
叫んでもきっと
誰も見つけてくれなさそうだ。
薮ばかり。

だが、電波は入る。

進んでみるか。
行けるところまで
行ってみるべし。

ベテランの登山者がいたら
怒られるだろう、
という登山が始まった。


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