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『利尻町 小坂善一さん/ 島にやってくる人々とのつながりから、新しい可能性が生まれる』

北海道稚内市の西に位置する利尻島は、「利尻富士」と称される名峰利尻山や昆布・うになどの海産物で知られ、まちには全国から多くの観光客が訪れます。

札幌でサラリーマンとして働いた後、地元である利尻町にUターンして漁師となった小坂さんにお話を伺いました。

ーまずは自己紹介をお願いします。
小坂さん:生まれも育ちも利尻で、実家は漁師をやっていました。進学を機に札幌へ住むことになって、就職したのも札幌の会社です。経済学部で色々と学んだことを活かそうと証券会社へ入りました。

26歳の時に家庭の事情で漁師を継がなければならない、という状況になりまして。仕事も順調でやりがいもあったのでかなり迷ったのですが、漁師になるために故郷に帰ってきました。

ー久しぶりに利尻に帰ってきて、どんな風に感じましたか。
小坂さん:当たり前ですけど、やっぱり本当に自然の恵みが豊かな場所なんだなと思いました。
都会から戻ってきたので、あらためて島の魅力を再発見できたというところはありますね。

ー漁師という仕事については、どうお考えですか。
小坂さん:当初は知識も全くなかったので、まずは現場の仕事を通してノウハウを学んでいきました。そこで気づいたのは、自分がサラリーマン時代に培った経験が活かせるかもしれないということ。

昔からある産業だからこそ、新たにビジネスとしてチャレンジできる領域がたくさん残されているんです。

ーそれで、仲間の漁師と一緒に団体をつくったということですか。
小坂さん:そうなんです。地元の漁師や役場の方々、漁協職員がメンバーになって、利尻島の漁業を盛り上げる団体「NORTH FLAGGERS(ノース フラッガーズ)」をつくりました。元々は東日本大震災を機に石巻の漁師たちが立ち上げた「FISHERMAN JAPAN(フィッシャーマン ジャパン)」という団体の影響を受けていまして。

漁業を「カッコよくて、稼げて、革新的」な新3K産業に変える、という彼らの理念に強く共感しました。現在は連携を取りながら、海産物商品のブランディングや漁業の担い手育成などの活動を行っています。

ー新たな取り組みで、まちが盛り上がっているんですね。その他の活動についても教えてください。
小坂さん:実は最近、漁師になろうと利尻島にやってくる若者が増えているんです。理由の一つが、しっかりとした受け入れ制度が整っているということ。独自の支援制度として、「漁師道」という就業体験プログラムを用意しています。

実際に2週間、漁の仕事や島の暮らしを体験してもらうんですね。その後は最長で3年間、研修生として現場で技術を学ぶこともできます。結果として、若い漁師が島に定着して漁師の平均年齢が3歳ほど若くなったみたいです。

ー漁業を通して、若い世代との交流が深まっているんですね。
小坂さん:そうですね。2019年からは毎年6月から8月の利尻昆布の生産繁忙期に、京都大学の学生さんがインターンシップ事業に参加するため来島しているんです。学生さんたちには自分が運営する「京大荘」に住み込んでもらい、早朝の昆布干しなどの作業を手伝ってもらっています。

仕事の時間以外には島民との交流を深めてもらっていて、そこでできた縁から社会人になっても島へ遊びにきてくれる子が多いですね。学生さんたちには、島での経験を通して大学では学べない現場の仕事の面白さを味わってほしいと思っています。

ー学生さんにとっては、素晴らしい経験になりますね。
小坂さん:やはり一次産業の仕事についての理解は、実際に現地へ行ってみないとわからない部分がありますから。
将来どんな仕事に就くとしてしても、その経験は必ず活きてくるはずです。

これからも、若い発想力と行動力で島を盛り上げていってほしいです。利尻島で初となる気球の打ち上げを成功させたのは、インターンシップで来た京都大学の気球部の学生さんなんですよ。
他にも落語研究会の学生さんが子ども向けの落語会をやったり。本当に個性がさまざまで、彼らの視点を通して自分も学ぶことが多いです。

ー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
小坂さん:普段の仕事や「NORTH FLAGGERS」の活動を通して、利尻の魅力をもっともっと島の内外へ伝えていきたいですね。

漁師が観光客と交流することで水産物の付加価値向上を目指す「ブルーツーリズム」の考えも取り入れて、島のブランド力をさらに高めていけたらなと。そのためにはやはり情報発信がカギになると思うので、SNSをうまく活用して現地のリアルな声をお届けしたいです。

また2022年7月にはプライベート型の高級ヴィラ「Villa Kamui」を開業し、かねてより構想していた、1日1組限定の1棟貸切型宿泊施設を建設しました。「島の旅をゆっくりと贅沢に楽しみたい」という方に島の雰囲気と食材を楽しんでもらえたらと思っています。気になった方は是非、利尻島へ遊びに来てください。

ー利尻、水産業に興味のある方、一緒に盛り上げてくれる方お待ちしてます!!
全国の漁師、漁協、水産業関係者の中で新たなことに挑戦しようとしている方はぜひ気軽に連絡をしてもらえると嬉しいです。今私が取り組んでいる事業の内容やノウハウなども惜しみなく共有させていただきますので、一緒に水産業を盛り上げましょう!

また昆布や雲丹の輸出など海外事業にも挑戦したいと思っています。日本の水産業を海外に展開させていきたいとお考えの事業者様からのお問い合わせもお待ちしております。


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