「私は道で芸能人を拾った」の書き下し文

 鋏が口を閉じ、紙片がまた舞って落ちた。赤い紙テープ。(しゃきん)もう一度。紙吹雪は卓上を覆いつくし、女はここではない場所を見る。

      人を殺した。

 紙と鋏、机と椅子、それから女しかない部屋。

 ――同時に、通りのネオンサインが差し込む裏路地。

 目の前に倒れている男を殴ったパンプスから、ぱたりと血が落ちて足元に溜まる。(そして、もう一度。)

 例えば、子どものころに大切にしていた人形を壊したときの気持ちに似ていた。罪悪感より、お母さんに見つかったらどうしようと考えることのほうが恐ろしかった。首が抜けたまま転がった人形の身体を、いつまでも持っていられなかった。いすを引き、少女は彼方へ駆け出す。

 紙吹雪や、ネオンサインや、鮮血や、壊れて転がっている身体のないほうへ行くのだ。

 私は道で芸能人を殺した。


図1


 「私は道で芸能人を拾った」1話冒頭を書き下したファンア~ト。

 「書き下す」を都合のいい特殊な意味で使用している。映像や静止画(フォトグラフィー、イラスト)が好きすぎて自分なりに文章にしてみるという行為はずっと昔からやっていることで、自分の書く行為の核(かくこういのかく。ん?)のひとつですが、そういうときにこの「書き下す」という用法を多用する。







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