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みた&よんだ&きいた

2023年の1~3月に見たもの、読んだもの、聴いたもののまとめです。オススメしたいものに絞ってます。

デヴィッド・フィンチャー マインドゲーム

フィンチャーの映画について、いろいろとまとめた本。好きだから読んでられるが、とにかく翻訳が読みにくい。修行みたいな一冊。おすすめできない。

好きよ、トウモロコシ

ほぼ日の塾でいっしょだった中前さんのエッセイ集。同じ時代に、同じような上京・仕事・生活を送ってきている(はずの)世代なのに、こんなにも感じ方や生み出す言葉が違うのかとびっくりする。喜びや悲しみの感度が彩り豊かで、追体験するだけで心のやわらかい部分が揺さぶられる。おすすめです。

マンガ

BADON

犯罪歴のある4人の男たちと、そこに居候する1人の女の子が、キナ臭いトラブルに巻き込まれながらも、なんとか日常を送ろうとする物語。激情より抑制を、歓喜より微笑を大切にする大人のための物語。感情や物語のピークを無理につくらず、その間のグラデーションを大切に描かれているのがわかり、今の自分にはとても心地いい。

トリリオンゲーム

ハッタリがすごいヤツと天才ハッカーのバディもの。ひと昔前にも思えるネットバブル〜ソシャゲーの流れや、メディア、芸能界の変遷などを背景に、2人が成り上がっていく物語。おもしろいのは、絵柄が劇画っぽいことであろうか。「サンクチュアリ」を彷彿とさせる熱量に満ち溢れたキャラクターを現代劇で見れるのがいい。

日本三國

日本が一度滅びたのちに、3つの国に分かれ戦国時代となった。という設定での立志伝を描く。まるで「キングダム」の日本版を見ているかのようで楽しい。しかも知略寄り。あと絵が好みです。

女の園の星

女子校の先生の話。ゆるい。どこか大人びた生徒たちと、マイペースでそれに向き合う真面目で独特なアプローチの先生の話。深刻なことがまったくないのが楽しい。実際の高校時代を思い出す。常に平熱で冷めていて、だけどしょうもないことに少し熱中するような、なんともいえないぬるい日々のトーンが自分にとってリアルでいい。結局、退屈がおもしろさを生んでいるのかもしれない。

コーポ・ア・コーポ

あるアパートの住人たちの話。関西弁特有の、人のスペースに踏み込む感じがいい。踏み込めば踏み込むほど、結局心には入れない。理解しあえることはない。だけど生活は続き、関係性は常に更新し続けないといけない。何かしら傷を抱える人たちの話は、現実でも、誰だって傷を抱えているということを思い起こさせてくれる。

TVシリーズ

インフォーマ

とにかく森田剛の「やる気ない狂気」演技だけで見る価値がある。脚本に目新しいものはないけど、キャラクター造形と映像美だけでずっと見ていられる。まさに演出の勝利というか、現場でいいものが生まれていった感。キャスティングがとにかくドンピシャですごい。それにしてもタイトルを最後の方に出すの流行りすぎじゃないですか?

オッドタクシー

今さら?感があるかもしれないけど、今さらハマった。というのも、デンマークからの友人(アニメオタク)が熱心に薦めてくれたのだ。シュール系かな〜なんて思ってたら超社会派のクライム・サスペンスで、めちゃくちゃ面白かった。最後にネタバレ的な展開もあって、脚本がお見事。ダイアンの声優起用と切ないストーリーのハマりがよくてびっくりした。

アトランタ

アメリカ南部、ヒップホップの街。黒人社会あるあるを背景に、ラッパーとして成り上がるいとこのマネージャーをする大学卒の男が主人公。とにかくアイロニーがすごい。社会課題をここまで真正面にテーマにしながら、物語としての強度やエンタメ性をまったく失っていないのもすごい。今の時代の「トレインスポッティング」なのかもしれない。これも今さら、夢中になっている。

マンダロリアン

スターウォーズシリーズのスピンオフであるマンダロリアンは、常に仮面をかぶってなければいけない種族「マンダロリアン」の物語。実は本編をちゃんと見たことがないのだが、この無口な主人公がベビーヨーダを引き連れて旅をする「子連れ狼」インスパイアSF西部劇にやられている。最近のムービーはCGのリアリティが無理なくなじんでいて、ストーリーに没頭できる。「FF7R」をプレイした時にも感じた「ちょうどいい解像感」が感動に作用している。目が離せない。

ファミリー・ガイ

ブラックジョークてんこ盛りのR18アニメなのだが、その不謹慎で下品で政治的で差別的でありそのことを俯瞰している批評的な表現すべてに夢中になっている。ショートなギャグが多く、現代の切り抜きカルチャーともフィットしていて、世界旅行中ずっとショートムービーで見ていた。「マンダロリアン」目当てでディズニープラスと契約したら、これも見れることになってうれしい。

ガンニバル

人喰い村に家族で引っ越してきた刑事が主役なんだけど、「ブレイキングバッド」にも通底していた家庭における「夫性」がテーマになっていておもしろい。最も、BBでは5シーズンもかけてようやく「麻薬づくりが楽しかった」ことを夫が認め、家族のためというのは言い訳に過ぎなかった、という結論に辿り着くのだが、本作においては、1シーズン早々に「あんた、なんか楽しそうじゃない?」と、夫の暴力性に気づいている妻という構図である。柳楽優弥の狂気が見られるのは至高。

YouTube

Kənd Həyatı

アゼルバイジャンやトルコといったスタイルの田舎暮らしをひたすら流すだけのvlogなのだが、どこかマーケティングされている綿密なクオリティを感じて、そのキナ臭さがまるで「A24」がつくる映画の前編のようで、なんとなく目が離せなくなる。もちろん何も事件は起きず、ひたすら心地いい料理の工程などが描かれるだけなんだけど。

Podcast

ハナシはこれから

ライオンの「ごきげんよう」のように、ゲストをリレー形式でつないでいく対談モノ。基本的には音楽家が多くて、話の拡散具合が面白い。とにかく決まったフォーマットを逸脱しようという自由なバイブスと、時に発生するセッションも聴きどころ。話すより演奏した方が早いよね〜と言いながら発生した時間の奇跡性にやられる。唯一無二。

Off Topic

アメリカのITニュースを中心に語られる分析や雑談。日本の土着性を一切感じさせない今ドキの若者?によるトークの無国籍性が心地よい。基本的に感情が揺らがず聴いていられるビジネス系のトークなのだが、ITの先端情報や買収の話やらがカジュアルに聴けて楽しい。続けてほしい。

Image Cast

テクノロジーやデザイン系の業界ではたらく2人による雑談。何かをリバースエンジニアリングしながら原理をつきつめたり、最新のテックに触れながらも、子育てやコーヒー豆や米の炊き具合など、生活と地続きでゆるく話しているのがいい。ここまで書いて気づいたけど、「専門性のある二人が、にもかかわらずゆるい話をしている」ポッドキャストが好きなんだなきっと。

Music

Floating Points

いわゆるアンビエントなんだけど、現代的かつ挑発的。BGMとして溶け込むというより、お、なんかええやんけ、と人の注目をハックするような音の新規性がある。言葉にするのがむずかしい。なんだかカッコいい。聴いてみてほしい。

Rina Sawayama

LGBTQでありアメリカ在住のアジアンであることから、彼女はそれらのコミュニティを代表したりコミットすることで有名。なんだけど、そういう社会的な文脈とは別のところで、音のつくりかたがめちゃ好き。90年代を彷彿とさせるギターサウンドのギリギリダサくならないところで、音作りや歌メロで現代性をキープしていて、そのバランス感が心地いい。「This Hell」を聴き続けているし、ノンアルバーでも常にプレイリストに入れている。

Lana Del Ray

ずっと追い続けているラナ・デル・レイ。アメリカ人白人女性としてのノスタルジーという明確なコンセプト、かすれるような親密な歌声、理解しながらもそれが起こってしまう童話のような悲しさ、歌詞の意味がわからなくても、先に感情が流れ込んでくるような楽曲は、まるで現代の人類の混乱を代表して表現している鎮魂歌のようだ。


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