『これまでが今に』

「あいちゃ〜ん、あいちゃ〜ん」

食堂外の廊下から大きな声が響く。
そんな名前の人はいない筈だが、配膳をしてくれる看護師か介護士にお気に入りの女性がいるらしい。
おじいちゃんと言っても、好景気の時には仕事以外でも随分色々なところに出入りしていたのだろう。
幾つになっても、気持ちは元気な頃のままの様だ。

最初に入院した病院も今入院している病院でも生きてきた時代のせいか、女性うけや甘えなどが露骨な人がいる。
またやってると笑って見守れる程度のものならいいが、同じ内容でも男性スタッフだとツンケンしたり、女性スタッフには強い態度であたったりと対応が面倒そうな方を散見する。
見せる形は多少違うものの、性別の違いなくある程度の年齢以上の患者の中にそういうことをする方が、出てきてしまうようだ。
入院前と身体などの状態が変わり、これまでのように自分自身の身体さえ自由にならなくなったりして苛立つ気持ちも分からなくはないが、これまでどのような生き方をしてきたのかが垣間見える気がする。
それなりに入院が長くなると、環境から学ぶことも出てくるものだなと思う。

続く・・・

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