見出し画像

またロバ

 4月は復活祭の祝日を中心に学校が1週間ほど休みになり、それにつられて世間でもお休みをとる人が多かったようにみえる。日本食レストランも混雑し、一日3時間勤務で驚く額のチップを受け取る日もあった。その代わりあまりに忙しいとミスをする恐怖から手がぶるぶる震えることがあった。お店の売り上げやお客さんに対して迷惑をかけないミスであっても、規定通りにこなせないとミスとみなされ、けっこうしっかり怒られる。まだ私が一番歴が浅いので多くの眼が私に注がれている。ひ~。私はプライドのせいで怒られなくてもミスをすることが苦手なので、同時に4組ほどのお客さんが自分の担当テーブルに着席すると緊張する。そんな時期もひーひーと乗り越えて5月に入り、日本と違っていきなりの(初)夏がやってきた。まぁ大丈夫でしょう、と午後4時から夫と近くの町営無料テニスコート(予約も不要)でテニスをしたところ、顔が真っ赤に焼け唇も2週間は醤油がしみる始末だった。もう太陽は夏仕様になっていた。

この街では藤の花がいたるところでみられる
藤+ヤシの木x夏仕様の太陽


 馬たちを訪れる時間も見計らう必要がでてくる。そういえばアニマルセラピーでは馬をつかう場合も多い。先日、近くの大学の敷地内で飼われているフレンドリーな馬たちに触ったときに衝撃をうけた。手のひらをぴったり馬の短い体毛に押し当てる。その子はじっとしてくれている。馬の温かい体温がじんわりと、そして一気に手のひらを温めてすぐにー陳腐な表現だがー私の心もほっかほかに。オキシトシンが脳内でスパーク!するのを感じた。とはいえ、たまに馬牧場でボランティアしているのにこの感覚を得ていなかった理由を考えた。馬牧場の馬たちは大半が虐待や飼育放棄にあった子たちなので、人間に触られる、近寄られることを好まない場合も多い。だから手のひらを近づけようものなら「にんじんくれないの?じゃあ来ないで」とばかりに頭を振られることも多い。一方、この牧場にいるロバたちは基本的にあまり逃げない。もちろん顔見知りになるくらいに通うことが前提だが、今では私のブラッシングの順番を取り合いしてくれる。だが、ロバたちは毛が長く手のひらを押し当ててももじゃもじゃしか感じない。あまり体温を感じられない。ということできっと体毛の短い馬がセラピーには適任なんだな、と思った。小さい体のポニーがさらに適任にもみえる、が一般的にポニーは怒りんぼが多い。「にんじんが足りてないぞ!」と地面を、鉄柵を、前脚でガンガンと蹴る。ここで根負けしてあげないのが、悪癖を増長させないために必要だ・・・と思っている。ちなみに馬&ロバのブラッシングには5種類くらいのブラシを使い分ける。たてがみ用の目の粗いもの、短い被毛用のおろし金のような見た目のもの、シリコン製の非常に目が粗いもの。個体によって被毛のからまり度や、どこで遊んできたのか植物の種や砂をたくさんつけている度合が異なるので痛くない様にまずは目の粗いブラシから始める。今日は3頭全員ブラッシングしたので私はロバの毛だらけになった。これもセラピー。私はにんじんをあげて、彼らからは癒し(と鼻水)をもらう。レストランの仕事でもお客さんの様子に応じて態度も笑顔もつかいわけ、満足してもらうことでチップを確実に(もしくははずんで)もらう。ギブアンドテイク。