たった2人しかいない教室で

課題を忘れた。
たった二人しかいない教室で。

試合終了のコングが頭の中で鳴り響く。

「やばい、今日、課題忘れたわ。どうしよ。死んだ。」
授業前に、唯一のクラスメイトに言うことで、私は少しでも不安を紛らわそうとした。

「どんまい。まあ、耐えるっしょ。」

あの子は私に優しい嘘をついた。




教授が教室に入ってきた。

そして、私は先生に宿題を忘れたことを恐る恐る告白した。
無論、教授は激怒した。
そしてこのおじは、鬼畜なことを言い出すのだ。



「課題の本を読んでいれば、プレゼンの存在を忘れていても、立って話すことはできるはずです。ほら、前に来てプレゼンしなさい。15分です。」

OJI, ARE YOU SERIOUS???

極めつけは、このクラスは全部英語で行われる講義だということ。

英語で15分プレゼン?
読んでいない本について?

MURI OF THE YEAR.

絶望のあまり、言葉がでなかった。

リーディングも当たり前のようにやっていなかった私は、圧倒的なピンチに追い込まれたのである。

でも仕方ない。これは自分で拭くべきケツ。
おじの言うように、前に立って、適当なことを話して、また怒られて、時がすぎるのを待とう。
そう思って、立ち上がろうとした時だった。










唯一のクラスメイトの

あの子が

ゆっくりと口を開いた。










「私も、課題忘れました」

え?

顔が真っ赤な先生も、真っ青な私も静止する。

重い沈黙。それから先生の大きなため息。


「、、、二人とも宿題を忘れてしまったのですか?」



、、、まずい空気だ。



バン!!

先生が教科書を机に叩きつけた瞬間、息が止まった。


「クラス、あなた達しかいないのだから、しっかりしてください!揃いに揃って、、、、授業を受ける気はあるんですか!?」


おじの怒声が2人しかいない教室に鳴り響く。


黙りこくる私たち。

重い沈黙。

2人しかいないクラスはこれだからいやなのだ。
ちょっと泣きそうだったその時だった。



「、、、仕方ありませんね。来週に延期しますから絶対やってきてください。」


。。。。。



助かった〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!





いやでもちょっと待てよ、、、、

授業後に私は、あの子に聞いた。

「ねえ、本当に宿題忘れたの?最初、宿題忘れた私を慰めてたじゃん。」

「うん。授業前は気づかなかったけど、違う範囲のところ間違えてやってたんよね〜。ははは!!」

そう言って、あの子は私に悪戯っぽい笑顔を向けてた。





バカな私はその言葉を鵜呑みにした。



今ならわかる。
あの子は、二度、優しい嘘をついたのだ。



あんな目に遭っておきながら、私は馬鹿なので、今も尚、相変わらず、宿題を忘れてしまう。

でもその度に、あの悪戯な笑顔を思い出す。
その笑顔が頭に浮かんだ時、ちくっとするような、ほっとするような不思議な感覚になる。



私は課題を忘れるより、さらに重大な罪を犯していたらしい。
たった二人しかいない教室で。



その学期が終わってから、私たちは留学の時期になり、バラバラになった。
そして帰国した今も再会出来ていない。


元気にしてるかな、
元気にしているといいな。




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