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忘れつちまつた悲しみに~オタクの知識は消えてゆく~

記憶は日々古いものに新しいものが塗り替えられ、更新されてゆく。そして塗り替えられていったものは、思い出せなくなってゆく。そんな当たり前のことで悲しい思いをしたのは、つい最近のことだった。

オタクの友人とDiscordで会話している時のことだ。いつものように右手にマウス、左手にストロングゼロを持ち、Rainbow Six Siege をプレイしながら、友人と他愛ないことを話していると、ライトノベル原作アニメ「化物語」シリーズの話題が出た。以下、化物語のWikipediaより抜粋。

『化物語』(バケモノガタリ)は、西尾維新によるファンタジー小説。〈物語〉シリーズ第1弾(通巻1、2巻目)として講談社BOX(講談社)から刊行された。イラストはVOFANが担当している。2009年にテレビアニメ化、2012年には『化物語 ポータブル』としてゲーム化、2018年に漫画化された。

化物語のアニメが放映されていた2008年といえば、とある魔術の禁書目録やマクロスF、黒執事、夏目友人帳、かのこん、とらぶるなど、非常にアニメのバラエティに富んだ豊作年であり、筆者も家族が寝静まった頃に、夜な夜なリビングのテレビをつけ、テレビにイヤホンを差して視聴していたものである。我が実家は非常に狭いので、夜中に頻尿で起きてきた親に見つかるリスクは非常に高かったが、そのリスクを背負いながらかのこんを見るスリルは尋常ではなかった。

そんなアニメ豊作の年であったので、当然化物語もよく見ていたし、西尾維新氏の独特なセリフ回し、制作会社シャフトのエッジのきいた表現がとても印象的で、友人と会話していて噛んだときには、「失礼、噛みまみた」と茶化し、「君は何でも知っているね」と言われた日には、「なんでもは知らないわよ。知ってることだけ。」とドヤっていた。だからこそ、強く自分の記憶に刻み込まれていたと「思っていた」。この時までは。

化物語の登場人物の話になり、羽川翼、戦場ヶ原さん、撫子、真宵ちゃん、あと一人。あれ、あと一人メインキャラクターって誰だっけ?腕が猿になるやつ。〇〇モンキー。え?出てこない。陸上部で戦場ヶ原さんめっちゃ好きだったやつ。

なんてことだ。昔好きだったアニメの主役キャラの名前が思い出せなかったのである。ワンピースでいえばサンジ、ナルトでいえば日向ネジくらいのポジションであるのに。重ねて薄情すると、化物語の怪異の下りも全然思い出せない。当時は「化物語は文学だ」なんて豪語していたのに。情けない。悔しい。そして悲しい。

化物語だけではない。流行っていた当時から見返していないようなアニメの記憶は、どんどん消えて行っている。けいおん、まどマギ、俺妹。かわいいキャラは覚えているが、内容が微かにしか思い出せない。だから、「このアニメってどんな話なの?」と聞かれても、「キャラがかわいい」みたいなアホみたいな回答しかできないのである。オタク失格である。

でも、待ってほしい。2005年頃からアニメを見はじめ、もう15年も経とうとしている。1クール10本見たとして、年間40本ほどは見ていることになる。無理では?すべて記憶しているのは。リンカーン大統領のゲティスバーグ演説すら暗記できない人間が。一昨日の晩飯のおかずすら危ういこの僕が。仕事等で日常的にアニメの話をしていればともかく、交友関係の狭い我々オタクにはなかなか難しいのではないか。

とはいえ、実家に漫画が置いてあるドラゴンボールについては、子どものころに何回も読み直しているので(新しい漫画を買うお金がない)、今でも結構覚えている。そのものに対しての「好き」度、力のいれようもかなり影響しているだろう。アニメは全般的に好きだが、”化物語そのもの”については、語れるほど好きではなかったのかもしれない。ゆうて偽物語くらいまでしかみてなかったし…

”オタク”と一重に言っても、”全てのアニメのプロフェッショナル”ではないのだ。本当に好きなものについて語ることができればいい。自分の脳の劣化に言い訳をするしかできないが、開き直るしかない。それが事実なのだから…

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